綱元さんの作り話

 ギリギリのタイミングで現れた佐助によって、政宗が城門を強行突破する事態は回避出来、程なく佐助に追いついてきた幸村に先導されて政宗と小十郎は上田城内に入った。

「けど早かったね、竜の旦那。ひるは過ぎるかと思ってたよ」

 つーか、早すぎだろと内心突っ込みつつ佐助は言う。確か昨晩『夜明けまで待て』と小十郎が政宗を留めていたし、その小十郎も共に来ているのだから夜通し駆けてきたわけではないだろう。夜明けからはまだ3刻も経っていないのに、既に政宗たちはこの場にいる。最短距離を走る細作の自分が全速力で駆け抜けても2刻半以上かかる距離だ。迂回せねばならぬ馬ならばもっと時間は掛かるだろうに……どれだけ馬を飛ばしてきたというのだろう。しかも二人とも全く疲労しているようには見えない。奥州の名馬である二人の乗騎ですら疲労しているというのにだ。

(まぁ、竜の旦那は判るけどさ。彰子ちゃんに逢いたくて堪らなかったんだろうし)

 政宗と彰子が再会する。恐らく、彰子は政宗と共に奥州へ去ってしまうだろう。あのとき政宗ははっきりと『彰子を迎えに行く』と言ったのだから。

(旦那が入り込める隙はないかもしれないなぁ)

 内心溜息をつきつつ、佐助は佐助は奥州主従を先導する幸村を横目で窺う。別段、いつもと変わった様子はない。

 奥州から佐助が戻ったのは深夜だった。夜明けにはまだ一刻近くある深夜だったのだが、佐助が部屋を窺うと幸村は既に起きていた。如何やら横にはなっても眠れず、起きて佐助を待っていたらしい。

 佐助は幸村の正面に座り、奥州での状況を説明した。

「彰子ちゃんは確かに竜の旦那の関係者だったよ。事情は竜の旦那が説明するって言ってたから、俺も詳しくは聞いてない。明日、右目の旦那と二人で上田に来るって。……多分、彰子ちゃんは竜の旦那と奥州に行くことになると思う」

「……そうか。ご苦労だったな、佐助。夜明けまでにはまだ時間もある。少し休んでおくといい。伊達殿が参られれば忙しくなろう」

 幸村は落ち着いた声でそう言った。それは佐助にとって意外なことだった。彰子が奥州へ去ってしまうとなれば、幸村は驚き騒いでしまうのではないかと思っていたのだ。深夜にあの大音響で叫ばれたら如何しようなどと心配していた佐助は肩透かしを食らった気分だった。

 いや、それ以上に幸村の落ち着きが腑に落ちなかった。佐助の見るところ、幸村は彰子に対して淡い恋情を抱いているように思えた。本人は自覚していないようではあるが、幸村の彰子への態度や常の幸村からは考えられない心遣いから、佐助はそう推測していた。だから、彰子が上田城からいなくなると知れば、大騒ぎになると思ったのだが……。

「いいの、旦那。彰子ちゃんが上田からいなくなっても」

「まだそうと決まったわけではあるまい。全ては伊達殿が参られ、彰子殿と再会を果たしてからのこと」

 佐助の問いにも、やはり冷静な声で幸村はそう答えただけだった。政宗が来ることを喜ぶわけでもないし、忌避するわけでもない。ただ淡々と事態を受け容れているのだ。如何やら佐助が奥州に行っている間に幸村も彼なりに色々考えていたようで、その結論があるがままの事態を素直に受け止めるというものだったらしい。

(──旦那、大人になった……?)

 少しばかり複雑な気分のまま、佐助は幸村の許を辞し、そうして朝を迎えたのである。

「伊達殿は一刻も早く彰子殿と対面なさりたいでござろう。女中に案内させ申す。片倉殿は別室にてお待ちいただくということでよろしゅうござるか」

「Thanks.案内頼むぜ」

「ああ、俺も異存はない。その時間に真田と猿飛に話しておきたいことがある」

 幸村の提案に政宗は半ば心ここにあらずといった風情で頷き、小十郎は同意を示す。

 政宗としてはすぐにでも彰子の許へ駆けて行きたかったのだ。佐助の首根っこを掴んで案内させてでも。だが、態々城主であり彰子を保護してくれていた恩人でもある幸村を無視することは出来ず、大人しくついてきていたのだ。

「では、加絵。伊達殿を彰子殿のところへ」

 幸村は傍に控えていた加絵に命じ、政宗を案内させる。

「片倉殿はそれがしの部屋へ。話はそこで伺いまする」






 幸村の部屋へと入り座に就くや、小十郎は幸村と佐助に向かって深々と頭を下げた。

「彰子様を保護していただいたこと、御礼申し上げる。改めて主伊達政宗より礼はあると思うが、まずは私からも心からの感謝を申し上げる」

 いきなりの言葉に幸村も佐助も面食らった。これまでは多少友好的な場面はあったにしても、一応敵であり、小十郎──伊達政宗の片腕から頭を下げられることなどないことだったから無理もない。

「お顔をお上げくだされ、片倉殿。我らは当然のことをしたに過ぎませぬゆえ」

 戸惑いつつも幸村は言い、小十郎は顔を上げる。

「彰子殿は佐助の命の恩人。況してやか弱い女の身で山中に暮らしていたともなれば、城へ招くのは当然のことでござる」

「忝い」

 幸村の言葉にそう返しながら、小十郎は目まぐるしく思案を巡らす。ここからが正念場だ。幸村を巧く誘導しなければならない。そうしなければ、政宗の望みどおり彰子を城中に住まわせることが難しくなる。いや、住まわせること自体は政宗の一声でなんとでもなろうが、その後の彰子の待遇が変わってくる。彰子の待遇が悪くなれば政宗の勘気に触れかねないし、何より彰子が気の毒だ。彰子は政宗にとって大切な女性であり、恩人でもある。奥州で穏やかに心安く過ごしてもらう為には、身分の保証が必要なのだ。それはこれからの会話にかかっている。

「それで、片倉殿。それがしに話というのは……やはり彰子殿のことでござるな」

「然様。彰子様の境遇についてでござる」

 そう応じてから小十郎は口調を普段のものへと改める。今までは飽くまでも伊達政宗の家臣として上田城城主であり恩人の真田幸村に対するという、礼節をもった口調にしていたのだ。だが、ここからは普段どおりのものだ。そのほうが幸村にとっての馴染みがあるものだし、また心情を吐露しやすいのだ。否、『心情を吐露している』と思わせやすいのだ。

「この話は内密にしておいてほしいんだがな……彰子様は、政宗様の身分違いの想い人なんだ」

(想い人なんてのがいたら、俺たちも苦労しなかったんだがな)

 内心で自分の発言に突っ込みながら、小十郎は幸村相手の芝居を始める。

(ったく……綱元も如何してこんな甘ったるい話を俺にさせやがるんだ。柄じゃねぇ……)

 ついでに青葉城にいる同僚に対しての文句を垂れる。が、それは内心のことで、表面上には一切出さない。常の強面の小十郎のままだ。

「伊達殿の……想い人……でござるか」

 幸村は思いがけない話を聞いたかのようにきょとんとしている。戦場で会う政宗と恋愛が結びつかないのだろう。

「ああ。但し、政宗様は身分を隠して彰子様の許に通っておられた」

 何処か苦々しい表情を作り、小十郎は頷く。そして、騙り始めた。もとい、語り始めた。身分違いの悲恋の恋人たちの物語(Written by 鬼庭綱元)を。

 彰子は青葉城下に住む下級武士の娘で、微行おしのびで町に出かけていた政宗が彰子を見初めた。やがて政宗は彰子の許へ通うようになったが、彰子に自分が領主であることは隠していた。初めは特に何か理由があって隠していたわけではない。恋の前にはそんなものは無関係だったにすぎない。二人にとっては目の前にいる相手だけが大切であり、それしか関係なかったのだ。

 だが、政宗は次第に真剣に彰子を想うようになり、妻にと望み始めた。けれど、それを知った小十郎たちは反対した。正室どころか側室にすることすら反対したのだ。

「理由は彰子様の父親だ」

 一層苦々しい表情を作り、小十郎は言葉を継ぐ。強面の小十郎がそんな顔をすると、怖いことこのうえもない。

「何処の国にも多少なりともあることだろうが、跡目争いってヤツだ。当時、既に政宗様は家督を継いでご自身のお力で奥州筆頭となっておられたが、隙あらば政宗様を廃そうとする輩がいやがった」

 過去形で語っているが、実際は今でもそういった存在はいる。政宗の生母・義姫が政宗よりも弟小次郎を慈しんでいるように見えることから、旧最上系の家臣は政宗──自分たちの領土を奪った男──よりも、義姫の言うことをよく聞く大人しい小次郎を傀儡の領主に据え、実験を握りたがっている。尤も、義姫はそんな話を持ってくる家臣たちには言を濁して明確な支持を表さず、喜多を通じて小十郎や綱元に『誰某が叛意ある様子』と伝えてくれている。

「彰子様の父親はそういった輩の配下にいた下級武士でな。主のとばっちりで罰せられて腹を切っている」

 つまり、政宗に対しての謀反人に等しい家の娘なのだ。ゆえに、政宗の傍に上げることは出来ない。だから小十郎たちは政宗の為にはならないと判断し、彰子の許を訪れ政宗の身分を明かした上で身を引くように要求したのだ。

「彰子様は何も言わず、俺たちの要求を受け入れ、奥州から姿を消した。それが5ヶ月前……卯月の終わり頃のことだ。彰子様が姿を消してからというもの、政宗様の焦燥と落胆ぶりは見てはいられねぇほどでな。流石に公の場では何事もなかったように振舞ってはおられたが」

 念の為に付け加えておく。どうせ佐助あたりが奥州の偵察をしていただろうから、その頃の政宗の様子は知っているだろうし、当然それは信玄や幸村にも報告されているはずである。こう言っておけば事情を知っている佐助は話を合わせてくれるだろう。

 彰子が消えてからというもの、政宗は時間を作っては彰子を探す為に城下や近隣の村々を駆け回った。そんな政宗の焦燥と憔悴を見た小十郎たち側近は考えを改めたのだ。これほどまでに政宗が求めているのならば、彰子は政宗にとって必要な人間なのだと。そして、小十郎たちも捜し始めたのだが、彰子の行方は杳として知れなかった。そこに先日佐助がやってきて、彰子が上田にいることを告げた。だからこうして、取るものも取り敢えず迎えに来たのだと。

「そのような事情があったのでござるか……。彰子殿も伊達殿もお辛い思いを為されたのだな」

 話を聞いた幸村真剣な表情で考え込む。一方の佐助は何処かしょっぱい顔をしている。丸っきりの嘘であることを知っているし、それを信じ込んでいる幸村が情けないというか、憐れというか、気の毒というか……といったところなのだろう。

「では……彰子殿がお元気をなくされたのは、伊達殿を想ってのことであったのか」

 幸村は呟く。何故かそのとき胸がチクリと痛んだ。ずっと昨夜からそうだった。佐助から、彰子が政宗の縁者らしいと聞いてからずっと、胸がモヤモヤとして、彰子のことを考えるとチクリと痛むのだ。けれど、初心で晩生な幸村にはそれが如何してなのか、全く判らなかった。

「そのようなご事情であれば、彰子殿が望まれるならば奥州へお返しすることは吝かではない。されど、どのようなご身分で伊達殿のお傍に置かれるお心算か。身分に障りがあるとなれば、連れ帰っても状況は変わらんでござろう。仮令伊達殿が望んだとて、容易には参りますまい」

 彰子が上田城からいなくなってしまうと思うと、幸村は寂しさを感じた。たった2ヶ月共に過ごしただけなのに、既に彰子はこの上田城の一員になっている。自分にとって佐助と同じように傍にいて当たり前の存在になっているのだ。

 けれど、彰子は政宗の想い人なのだという。二人は相思相愛であり、態々政宗が直々に上田まで駆けつけてくるほど想われている女性なのだ。そして……ずっと思い悩んでいる彰子は恐らく政宗を恋しがっていたのだろう。

 そう考えれば、幸村は彰子を奥州へ帰す以外の道を考え付かなかった。とはいえ、今連れ帰ったとしても彰子の身分が変わるわけではない。小十郎たちが反対したのも尤もだ。もし仮に信玄が謀反人の娘を傍に上げようとしたら、自分だって反対するだろう。大切なお館様だからこそ、少しでも不安要素のある者を傍には置けない。況して一番無防備な寝所に侍らせるなど出来ようはずがない。

 だとすれば、嘗ての小十郎たちと同じ反対を、今度はもっと多くの重臣たちがするに違いない。

「幸い、政宗様が忍んで通っておられたことと彰子様の身分が高くなかったこともあって、彰子様の顔や名を知ってる者はいねぇんだ。だから、甲斐で出会った女性で政宗様が見初めて連れ帰ったということにしようと思う。それなら少なくとも身分に障りがあるとは気付かれねぇだろ」

 ここが正念場だと、小十郎は気を引き締める。

「されど……それでは奥に入ったとて、彰子殿は肩身の狭い思いをなされよう。どのような出自の女性かを明らかにせねば、侮られることになるのではござらぬか?」

 小十郎が21世紀のネットユーザーであれば、『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』と思ったかもしれない。幸村の言葉は、小十郎と綱元の策略にとって非常に重要なものだった。

「正室ではなく、側室として入っていただく。側室であれば政宗様の一存である程度どうとでもなる。多少身分が怪しくてもな。まぁ……それでも侮られることはあるだろうな」

 沈鬱な表情で小十郎は溜息をつく。

「政宗様は正室にとお望みなんだが……流石にそれは難しい」

 身分がないから如何しようもねぇと小十郎は何処か苦しげに呟く。そんな自分を佐助が『役者だねぇ、右目の旦那』と生暖かい目で見ていることに小十郎は気付いたが、今は無視する。政宗の為ならこれくらいなんでもない。

「伊達殿は正室にとお望みなのか……」

 それほどまでに彰子のことを深く想っているのかと、幸村は衝撃に似たものを感じた。最早感動しているといってもいいくらいに。奥州筆頭の正室ともなれば、普通はそれなりの大名家から迎えるものだ。或いは京の公家の姫を迎えることもある。実際、己の主である信玄の正室(正確には継室)は公家の姫だ。なのに、政宗は身分も何もない彰子を正室にと望んでいる。己の想う女性と共に生きようとしているのだ。そのことに幸村は感動していた。

 自分に出来ることはないのか……彰子の身分が低いゆえに正室にはなれない。側室となっても周りからはそれゆえに侮られる。彰子がどんな女性なのかは幸村もよく知っている。決して侮りを受けるような、そんな女性ではない。立ち居振る舞いも美しく教養も深い女性だ。奥州筆頭の正室となるのになんら不足はない女性なのだ。そう、不足しているのは身分だけだ。

「ああ。仮令側室であれ、身分さえ確りしてりゃ、跡取りを産めば正室に直すことも出来るだろうが……身分が低すぎるとそれも難しいだろうな。身元を隠さなきゃならねぇとなれば尚のこと」

 心持ち顔を伏せ、小十郎は溜息をつく。それでいながらこっそりと幸村の様子を窺っている。

 そんな小十郎の様子には気付くはずもなく、幸村は思案を巡らす。そして、小十郎や綱元が期待した以上のことを口にした。

「彰子殿はそれがしの異母姉にござる」

「……なんと!」

 まさかそこまでのことを幸村が言うとは思わず、小十郎は素で驚いた声を出した。幸村配下の武将の娘という身分を手に入れられればと小十郎と綱元は考えていたのだが、それ以上の成果だ。佐助も流石にこれには驚いたようで、目を丸くして幸村を凝視している。

「父上が母上を憚り表に出しておらなんだゆえ、知る者も少ないが、確かにそれがしの姉上にござる」

 キッパリと告げる幸村に、小十郎は心から感謝し、頭を下げた。

「忝い、真田殿」

「何ゆえ礼を言われるのか判り申さぬ。彰子姉上はそれがしの姉上であるから、そう申し上げただけのこと」

 自分の姉であれば、少なくとも奥州で侮られることはないだろう。真田家は武田譜代の家臣であり、自分とて一応武田軍の重鎮なのだ。今は敵国とはいえ、恐らく今回の政宗の甲斐訪問によって武田と伊達は同盟を結ぶことになるだろう。同盟国の重臣の姉となれば、奥州へ行ったとて彰子が軽んじられることはないはずだ。

「……んじゃ、俺様、それも含めて大将に報告してくるね」

 すっかり小十郎の話を信じ込み、策に簡単に乗ってしまった幸村に溜息をつきつつ、佐助は告げる。単純な幸村に困ったものだと思いながらも、こういう話を信じ込んで、彰子の為に最善の手を打った幸村を何処か誇らしくも思えた佐助である。

「ああ、猿飛。済まねぇが、この書状も甲斐の虎に渡してほしい」

 小十郎はそう言って懐から書状を取り出す。そこには小十郎が幸村に騙った、もとい、語った内容と彰子を保護してくれたことに対する礼、そして政宗が出向き『今後の甲斐と奥州の関係について話し合いたい』旨を記してある。

「了解。──大将も彰子ちゃんのこと、結構気に入ってるから、竜の旦那はちょっと苛められるかもしれないな」

 これで彰子は本当に上田からいなくなってしまうのだと思うと、佐助は少し意地悪な気分になり、そんなことを言った。

「心しておこう」

 小十郎は何処か神妙な顔をして頷き、佐助を見送ったのだった。






 躑躅ヶ崎館に赴いた佐助は、昨晩からの出来事を信玄に伝えた。流石に猫たちから事情を聞いたなどとは言えず、彰子の口から政宗の名が出たということにしておいたが。

 そして、現在政宗と小十郎が彰子を迎えに上田城に来ていること、彰子の事情、それを聞いた幸村の措置を告げる。

「ほう……幸村も大人になったものよのう」

 幸村の『異母姉』発言を聞いた信玄は豪快に笑う。武人としては一人前の幸村とはいえ、まだまだ人情の機微には疎いと思っていたのだが成長したようだと、親代わりの信玄は嬉しくなったのだ。

「それで、伊達の小僧と片倉が躑躅ヶ崎館へも参るというわけだな」

 小十郎から預かった書状に目を通し、信玄は確認する。

「はい。如何やらあっちもうちとの同盟を考えてたってのは、間違いなかったみたいですね。その話もあるみたいですよ」

 うむと佐助の言葉に頷き、信玄は深い笑みを浮かべる。

「伊達の小僧も暫く会わぬ間に成長したようだな。楽しみにしていると伝えよ。それから、彰子も連れてまいれ。奥州へやる前に今一度会っておきたいからのう」

 対面したのはたった一度ではあるが、信玄に深い印象を与えた娘だった。幸村と、そして政宗の成長に全く無関係ではない娘。いや、恐らく大きな影響を与えただろうことは想像に難くない。そんな彰子にもう一度会いたいと信玄は思ったのだった。