上田城にて。

 彰子が上田城にやってきて3日が経っていた。

 あの日の夕刻、城に辿り着いた一行は、まず佐助を医師の許に届け、それから幸村の部屋に程近い1室に彰子を迎え入れた。

(いきなり部外者の不審な女を、こんな中枢部に近い部屋に住まわせて大丈夫なの!?)

 と寧ろ当事者である彰子が心配するほど、上田城の人々は彰子を好意的に受け容れてくれた。

 それから湯殿に案内され、新たな着物──佐助が手配してくれた女中さんからの借り物──に着替え、さっぱりしたところで夕餉となった。

 山中のサバイバル生活を10日ほど続けていた身には、温かなお風呂はとても気持ちのいいものだった。一応毎日水浴びをして体の汚れは落としていたが(夏で良かったとこのときは痛切に思った)、やはりお湯に浸かるのは水浴びとは違う。檜のいい香りのする浴室で、ゆったりと手足を伸ばしての入浴は心身の疲れを癒してくれるものだった。

 烏の行水と猫たちに揶揄される彰子も、この日ばかりはたっぷりと時間をかけて入浴を楽しみ、猫たちに『逆上せてぶっ倒れてるんじゃないか』と心配されたほどだ。

 幸い、彰子は跡部の指示で自分で着物の着付けが出来るようになっていたから、着替えにも困らなかった。何せ、跡部はセレブだ。彰子は彼の要請で何れ彼の秘書となり片腕として傍で働くことになっていたから、それを理由にあれこれと普通の高校生ならば必要のないことも勉強させられていたのだ。その一つが着物の着付けだった。この時代の着物は小袖で現代日本のような振袖留袖に比べれば着付けは遥かに楽だから、何ら問題はない。着付けと共に着物を着たときの所作も身に着けさせられたから、この世界にいる以上は助かったことは確かだ。

 因みに着付け以外にも乗馬や華道・茶道もやらされていたから、この時代この世界でも然程困ることはないんじゃないかなーなんてことも思っている。無理やり習わされたときにはムカついたが、今となっては感謝だ。尤も、それらのスキルが必要になる前に帰還出来ることが望ましい。というか、それを熱望・切望している。

 入浴の後は夕餉だが、その席には幸村と佐助が同席した。約10日ぶりの味のついた食事に涙が出そうになる。味つきって大事! ご飯とおかずが揃ってるって素敵! と。因みに萌葱は自分で山に戻って野兎を獲ってきており、真朱と撫子もそれを食べていた。

 その席で、如何してこんなにも自分があっさり受け容れられたのかの謎も解けた。元々佐助の帰還が遅いことで上田城では最悪の事態を覚悟していたのだ。しかし、佐助は彰子によって保護されていた。実は佐助の怪我は思いの外危険な状態だったらしい。医師曰く『止血があと四半刻遅れていたら、佐助殿の命はなかった』という状態だったのだ。そんなに出血していたとは思わなかったのだが、萌葱が見つける前にかなりの量を既に出血していたらしい。

 そんなこともあって、『では、彰子殿がおられなければ、佐助は死んでいたのか!? なんと、彰子殿は佐助にとってもそれがしにとっても真田にとっても、紛うことなき恩人ではないか!!』と幸村が例の大音響で叫んだ為、その事実があっという間に城中に伝わったらしい。因みにそのとき彰子は入浴していたので、その大音響は聞いていない。

「彰子殿は佐助の恩人。ならばそれがしにとっても恩人でござる。ここを我が家と思うて、心安くお過ごしくだされ」

 幸村はそう言ってくれて、10日間のサバイバル生活で思ったよりも疲労していた彰子はその言葉に甘え、ゆっくりと休養を取らせてもらった。

 昨日には佐助があの山小屋からスーツケースを持ってきてくれ、荷物も全て手元に来て一安心となった。誰かに見つかりでもしたら、大騒ぎになりかねない。一目で怪しいパソコンや携帯電話は貴重品ということもあって、先に持ってきてはいたが。

 流石に上田城ではパソコンでの日記をつけるわけにも行かず、ノートに手書きで日記をつけるようにした。元の世界に帰ったら、これをネタに創作するかなーなんて思いながら。──そんなふうにでも考えていないと、帰れないのではないかという恐ろしい可能性ばかりを思ってしまう。帰ったらあれをしよう、これをしようと考えることで、彰子はなんとか希望を繋いでいるのだ。

「体も回復したし……暇だなぁ」

 ぼーっと庭を眺めながら彰子は呟く。昨日と一昨日の2日で随分体の疲れは取れた。今日は上田城に来て4日目になる。そろそろ手持ち無沙汰で退屈になってきた。

 元の世界では学校に部活に趣味に……と忙しく、1日30時間にしてくれと思うくらいだった。幸村たちに保護されるまでは生きる為の食材集めに必死で、退屈だなんて思う暇はなかった。それなのに今は何もすることがなくて、ぼーっとしているだけ。暇が出来るということは考える時間が増えるということで、如何しても今の状況を考えてネガティブ思考に陥りがちになってしまう。

「やっぱ、何日も徒飯食らいは気が引けるもんね」

 それに体を動かしていれば、無駄な考えに陥ることも避けられるだろう。

 佐助に相談して何か仕事をさせてもらおう。そう決めると彰子は立ち上がり、取り敢えず『佐助さん、いる? 相談あるんだけど』と天井に向かって言ってみた。二次創作ならばこれで佐助が現れるはず。しかし、一向に佐助は現れない。

 忍隊の長なのだから忙しいだろうし、佐助自身が自分に張り付いていると思ったわけではない。だが、配下の一人くらい見張りに付けているだろうと思ったのだ。しかし、如何やらそれもないらしい。5分経っても誰も現れない。

 因みに彰子はこっそり腕時計を帯に挟んで使っている。ドレスウォッチなのが幸いして帯飾りに見えるので、今のところ誰からも不審がられてはいない。尤も、如何にも高価に見えるそれの所為で『やはり彰子殿は何処かの姫ではないのか』などと噂されていることに彰子は気付いていない。

(……10分経過。こりゃマジで私に見張りついてないんだ)

 無駄に10分を過ごしてしまった自分に呆れながら、彰子はその事実に複雑な気分になる。信用してくれるのは嬉しい。誰だって疑われるのは嫌なものだ。

 だが、それにも限度はある。山中で1人生活していた女だ。しかも身元を示すものは何もなく、身分証明などされてもおらず、自分のことは何も語らない。普通は警戒する対象だろう。

 佐助は自分が未来の異世界から来たことは知っているが、それとて疑おうと思えばいくらでも疑えるだろう。飽くまでも自己申告だけなのだし、持ってきた道具だって何一つ自分は佐助に見せていないのだ。

 こんなにあっさりと警戒心を解いてもいいのだろうかと彰子は心配になる。一番疑ってかからなければならない忍隊が彰子を監視していないというのは気を許しすぎなのではないか。本当に未来から来たのだとしても、もしかしたら甲斐に来る前に他の土地で過ごし、間者となっているかもしれないではないか。

 あまりに簡単に受け容れられてしまったから、逆に彰子としては『自分が不審人物である可能性』を幸村や佐助に何度か説いた。彰子は自分を保護してくれた幸村や佐助に感謝している。それだけでなく、幸村のかなり暑苦しいとはいえ好青年ぶりにも、佐助の優しさにも好意を抱いている。上田城の人たちにもだ。だから、心配になってついついくどいほどに自分を──身元の判らない不審な女を警戒するように言ったのである。

 しかし、幸村は『彰子殿は佐助の恩人。そのような方が間者であるはずがない』とキッパリと言ってのけた。城主がこの調子だからなのか、結局、城の人々は皆、彰子に対して警戒心を全く持っていないのだ。

 いつまで待っても来ないと判断した彰子は佐助を探しに行くことにした。足の怪我はほぼ完治したらしいが(あの怪我が全治1週間かからなかったことに彰子たちは『流石BASARA』と思ったものだ)、大事を取って当分遠出するような任務には就かないと聞いている。だとすれば、恐らく幸村の周辺にいるのではないか。そう思って幸村の執務室へ向かって歩き出したところで、佐助がやって来た。

「あ、佐助さん、丁度良かった。今、探しに行こうとしてたところだったの」

 彰子がそう声をかければ、佐助は何処か読めない笑みを浮かべた。その滅多に見ない表情に彰子は何かあったんだなと確信する。これでも人の表情を読むことにはそれなりに長けている心算の彰子だ。そうしないとあの曲者だらけの学園では生きていけないのだ。

「そっか。俺様も彰子ちゃんに話があったから、丁度良かったよ」

 如何やら佐助は自分のところへ向かっていたらしい。佐助と共に彰子に与えられた部屋へ戻り、それぞれが座る。

「まず、俺からいいかな。彰子ちゃん、旦那が自分を信用しすぎるって心配してたでしょ」

「うん」

「俺だって何もしてないわけじゃなかったんだよ。この3日間、彰子ちゃんのことを調べた。山に入るところを見た人がいないのか、山で出会った人はいないのか、ってね。今川や徳川にも人をやってみた。けど、なーんも出てこなかった。精々10日くらい前から萌葱と物々交換した村人くらいだね、出てきたのは」

 山に入るところを見た人がいない、ということは山の中に突然現れたことの裏づけの一つになる。虎を連れた奇妙な格好をした女が山に入ろうとすれば目立つから、何処かで誰かが目にしているはずなのだ。因みにこれは佐助自身が調べた。この事実は佐助にとっては彰子の話の裏づけになるが、他の者にとっては彰子を不審人物と見做すに充分な根拠となる。

 間者であれば最も可能性が高いのは、現在敵対関係にある今川と徳川だ。その領地に配下を遣って調べさせたが、彰子に該当しそうな人物は見つからなかった。細作であればそう簡単に該当者が見つかるわけもないが、真田忍隊は彰子が細作であるとは欠片も思っていない。細作にしては彰子の身のこなしは重すぎるし、ある意味世間知らずと言っていいほど彰子には警戒心と危機感がない。寧ろ深窓の姫君と言われたほうが納得出来ると忍隊は理性で判断した。

「ってわけで、やっぱり俺様としても彰子ちゃんを疑う要素は一切なし」

 そう言って佐助は笑う。先程の読めない笑みとは別物の、何処か安堵したような笑みだった。

「そっか。ならいいや。あんまり信用されちゃって心配だったんだよね」

 ちゃんと用心していてくれたのならそれでいい、と彰子は思う。自分で疑えというのも何ではあるが、この甘さが他にも適用されてしまうと危ないだろう。佐助を襲い怪我をさせ、素知らぬふりで手当てをして恩人を装う。佐助が簡単に騙されるとは思えないが、今回のパターンでいけばあっさりと城の中枢部に入れてしまうのだ。

 心底ホッとしたように言う彰子に、佐助は苦笑する。自分が疑われて怒るならまだしも、信用されてそれを不安に思うとは。人が好いと思うと同時に頭が良いと改めて感じる。

「それで、彰子ちゃんの話って?」

「ああ。徒飯食らいも気が引けるから、何か仕事させてもらえないかな。流石に食を扱う厨房に余所者は入れないほうがいいと思うから、それ以外で。お掃除とかお洗濯とかならお手伝い出来ると思うし」

 彰子の言葉に佐助は驚く。確かに厨房に入る者はかなり厳しく吟味している。代々上田城に仕えている者、或いはそういった譜代家臣が身元保証をし推挙した者しか入れない。お端とはいえ、一番採用の審査が厳しいのが厨房なのだ。まさかそんなことを未来から来た彰子が知っているとは佐助も思わなかった。

「掃除とか洗濯ね……。女中の仕事をさせるの、旦那がなんて言うかな」

 多分反対するだろう。彰子のことは客人として扱っている幸村である。

「うん、幸村様は反対なさるだろうなとは思うんだけど……でも、どれくらいここにいるのか判らないのに、何もしないでお世話になりっぱなしっていうのも心苦しいもの」

 それに退屈なんだよねと彰子は肩を竦める。

「まぁ、気持ちは判らなくもないけどさ。女中仕事は旦那が猛反対するだろうし、彰子ちゃんへの旦那の態度を知ってる他の女中も遣りにくいと思う。他の仕事となると……」

 佐助はそう言い、暫し思案する。

「そういえば、彰子ちゃんは文字の読み書き出来る?」

「文字?」

 現代日本では15歳以上の識字率が99.8%だから、当然学校に通っている彰子も読み書きは出来る。更に政宗滞在中にこの時代の文字も教えてもらっているから、一応の読み書きは出来るはずだ。

「この時代と私の時代じゃ多少文字が違ってるけど……多分出来ると思うよ」

「そう。じゃあ、ちょっと待ってて」

 そう言うや、佐助はまさに風のようにびゅんっと何処かへ行ってしまった。何なのだろうと不思議に思っていると、あっという間に戻ってきた。その手には何やら書類のようなものと硯箱がある。

「この文書を清書してみてくれない?」

「え、ああ、うん」

 いきなり何かと思ったが、恐らく就職試験のようなものだろうと判断し、彰子は墨を磨り、渡された文書に目を通す。一応読める。読めるが……こんなもの読ませていいのか!? と思わず佐助を見上げた。

「何、読めない?」

「じゃなくて……いいの、これ。これって越後との同盟に関する擦り合せ事項じゃない……」

 機密じゃないのか!? と彰子は慌てる。

「あー、越後との同盟はもう公になってるから心配しなくていいよ。ほら、最後に日付あるでしょ。水無月八日って。1ヶ月前の文書だよ」

 その佐助の言葉に彰子は再び驚く。1ヶ月前が6月8日というならば今日は7月8日ということになる。自分がトリップしたのは夏休み初日の7月20日で、この地に来てから2週間が経過したところだから、今日は8月3日のはず。時間軸が違っているのか……そこまで考えて、ハッと気付く。今は就職試験の真っ最中だった!

 その疑問は取り敢えず後回しにすることにして、彰子は目の前の文書に集中する。

 この時代の文字は政宗のものしか見たことがなかったが、多分この手蹟の持ち主はあまり巧いほうではないのだろうなと思えた。政宗の字は雄々しさと美麗さを兼ね備えていて、流石は奥州筆頭と思わせる手蹟だった。文字の美しさというのはこの時代の人物評価の一手段であるはずだから、これを書いた人は苦労してるんじゃないかな……なんてことを考えつつ、文書を写し取っていく。

 丁寧に写し終え、間違いがないことを小さな声で音読しつつ確認し、佐助に渡す。佐助は受け取った文書をじっくり読み、審査(?)していく。

「彰子ちゃんの手蹟、きれいだねぇ。女性らしい柔らかさもあるし、何処か凛としてる」

 そんなふうに褒められたことなどなかった彰子は照れくさくなる。だが、褒められれば悪い気はしない。

「ありがと。で……?」

「うん、これなら問題ない。旦那の字も問題なく読めてるし」

 幸村の手蹟だったんかい! と彰子は心の中で突っ込んだ。流石に彰子には手蹟から人物鑑定をするなんてことは出来ないが、正直『悪筆だな』と思ったのだ。口にしなくて良かった。

「実はさ、旦那って字が下手でね。重要な文書は俺や傍にいる重臣が清書しなきゃいけなくて。当然俺も家臣も他の仕事があるわけで、清書に取られる時間が勿体なかったのよ。で、祐筆置くかって話になってたとこだったんだよね」

 祐筆はいわば秘書だが、この場合は清書限定の役目と解釈すれば良いだろう。

「つまり、私に幸村様の祐筆をやれと?」

「うん、そういうこと。彰子ちゃんなら情報の重要さも判ってるから、下手に口外もしないだろうしね」

 如何やら態と上杉との同盟に関する文書を見せたらしい。彰子が何も言わなければこの話は流れていたのだろう。

「ってわけで、彰子ちゃん。俺たちを助けると思って旦那の祐筆やってくれる?」

 その佐助の口調にクスッと笑って、彰子は頷く。

「佐助さんが信用してそんな大事なお仕事を任せてくれるのであれば、私に断る理由はないわ」

 彰子はお願いしますと佐助に頭を下げる。その礼は深すぎず浅すぎず、顔を上げるタイミングも遅すぎず早すぎず、礼儀に適ったものだ。幸村に対してのものもそうだったが、彰子の作法は何処の奥勤めに出しても問題ないほど洗練されたものだった。21世紀の世とやらは庶民でもこれほどの礼法を身に付けているのかと佐助は感心せずにはいられない。尤もこれは彰子がビジネスマナーとして学んだことの応用と、跡部によって叩き込まれたものだったのだが。

「じゃあ、早速、旦那のところに行こうか」

 こうして、彰子は幸村の祐筆という仕事を得たのであった。






 佐助から彰子を幸村の祐筆にと言われ、幸村は反対した。

「彰子殿はこの真田にとっての恩人。客人としてお世話申し上げているのだから、そのようなことを為さらずとも良いのですぞ」

 幸村はそう言って、首を縦には振らない。

「でもさ、旦那。彰子ちゃん何もしないと退屈だって言うんだし」

「それにお世話になりっぱなしというのも心苦しいですし」

 幾ら佐助と彰子が理由を挙げて反論しても、幸村は一向に頷いてはくれず、話が進まない。

「……判りました。佐助様の恩人というだけで何もさせていただけないのであれば、城を出て行きます」

 いい加減焦れた彰子がそう言うと、幸村だけではなく佐助も驚いた顔をして彰子を見つめた。

「衣食住、そして安全まで保証していただいているのにそのお礼も出来ないのであれば、大変心苦しく、このままお世話になるわけには参りません。城を出て、城下で仕事を探します」

 今にも立ち上がりそのまま城を出て行きそうな彰子に幸村は慌てる。

「待ってよ、彰子ちゃん。城下で仕事を探すって、何か出来るの?」

 佐助も尋ねる。この世界の住人ではない彰子が仕事を探すとなるとそれはかなり難しいことになるだろう。身元の保証もないし、住むところだってない。しかも虎まで飼っているのだ。

「どんな仕事があるか判らないけど、何とかなると思うわ。それに女なんだもの。いざとなれば幾らでも方法はあるでしょう」

「……それって花街ってことだよね」

 それは飽くまでも最終手段だが、生き抜くことを最優先に考えるのであれば、それが選択肢に入る日も来るかもしれない。

「だっ……駄目でござるー!! そのようなこと、彰子殿にさせられぬ!! そのようなこと、お考えにならないでくだされ!!」

 佐助の言葉に幸村は真っ青になって叫んだ。単純な幸村は可能性の選択肢の一つであるそれを、確定したものとして捉えてしまったのだ。

「だったら、祐筆やってもらうってことでいいよね」

「うむ。彰子殿がそこまで思っておられるなら、お願い申す」

 遊女になられるくらいなら、この城で働いてもらったほうが遥かにマシだと幸村は思ったのである。

(これで旦那と彰子ちゃんの力関係も決まったかな……)

 内心で溜息をついた佐助なのであった。