跡部から合同合宿のGOサインが出て、早速その夜、幸村に電話。
幸村もOKしてくれて、ゴールデンウィークに合宿やることになりました。
今年の連休は飛び石だから、まとまった休みは3日から6日の4日間。
で、2日までに部内新レギュラー決めの対抗戦1・2回戦を終わらせることが出来た。
今のところ、跡部・侑士・宍戸・滝・ジロちゃん・がっくんは皆勝ってて、このまま行くと4回戦で跡部はとがっくん、侑士とジロちゃんがあたる。滝は関先輩、宍戸は井上先輩かな。まぁ、4回戦まで残ったメンバー8人がレギュラーになるだろうから、3回戦まで勝てばいいんだけどね。
因みに侑士と跡部は決勝で残るように組んでみました。
尤も、8人出揃ったところで辞めるかもしれないけど。
がっくんが残るんであれば、侑士とのダブルスもありかと思うんだけど、対青学で勝てるオーダーを組むとなると、侑士はシングルスの可能性が高いかな。
跡部はこの合宿でどうするか決めるつもりでいるみたい。
合宿は、跡部が宿泊施設やコートを手配してて……まぁ、跡部の別荘なんだけどね。
参加メンバーはうちから6人(跡部・侑士・宍戸・滝・ジロちゃん・がっくん)、立海から7人(幸村、真田、柳、におちゃん、柳生、丸井、ジャッカル)、私を合わせて14人。全員1年生。
跡部の別荘だけあって、テニスコートは3面あるし、部屋数も20はあると言ってたから、それぞれ1人部屋でOK。跡部に見取り図? 貰って部屋割りもしたし。1階の6部屋に氷帝の6人(私含む)、2階の7部屋に立海の7人。で、跡部は自室として使ってる3階の部屋。
今回の合宿は氷帝テニス部と立海テニス部としてではなく、テニス好きな仲間が集まって遊ぶという体裁を取る。合同合宿なんていったら学校の許可取らないといけなくなるし、部の先輩たちへの配慮もあるから。
『テニス部』としての合宿という体裁は取ってないから、チョタ・ピヨ・樺ちゃん・赤也も参加OKにするか迷ったんだけど、中等部は今地区大会前だから誘うのは辞めたの。それにチョタいると宍戸がダブルス前提になっちゃうしね。宍戸にはこの合宿中にシングルスの勘を取り戻してもらわないといけない。
『久しぶりに長岡さんに会えるね。楽しみだよ』
なんて幸村は言ってたけど……。
幸村黒疑惑浮上中の私としてはちょっと怖かったりして……。
でも、におちゃんとは学校始まってからはほぼメールのみで声も聞いてない日も多いから、久しぶりに会えるのは楽しみ。勿論、幸村たちに会えるのも楽しみだし。
実りの多い合宿になるといいなぁ……。
合宿当日は、跡部がマイクロバス(29人乗り、当然跡部個人所有)でそれぞれのメンバーを迎えに来てくれた。……そうしないとジロちゃんが寝坊するから。
ルートの関係というよりも打ち合わせ時間確保の為に私と侑士が最初に迎えに来てもらって、その後、宍戸・滝・がっくん・ジロちゃんの順に迎えに行き、神奈川へ。
駅で立海メンバー7人を拾って、それから跡部の別荘へ。
途中、食料の買出しをして……。毎日買いに行くんじゃ時間効率が悪いからね。
こいつらがどれだけ食べるか判らないから、お米は一応10Kg買って。それから初日のカレーの材料、2日目のトンカツの材料、3日目のバーベキューの材料を買い込む。
……高校生男子13人の胃袋の容量が判らない……。どんだけ作ればいいんだろう。
まぁ、ここは跡部がポケットマネーでどーんと買ってくれたんだけどね。
最高級和牛ばかりを籠にいれた跡部はぶん殴って、お徳用パックの冷凍肉にしましたけど。
うん、スーパーではおばさま方の視線が痛かったね。ぞろぞろと14人の大所帯がお買い物だもの。
しかもがっくん・ジロちゃん・丸井の3人はお菓子コーナー行っちゃうし。
君たち15歳じゃなくて実は5歳でしょ。
買い物をさっさと済ませなきゃいけなかったから、お子様の世話は慣れてるジャッカルに任せちゃった。ごめんね、ジャッカル。
「彰子ちゃーん、ムースポッキー買っていい~?」
とパタパタと走ってきたジロちゃん、がっくん、丸井は……すご~~~~~~~く可愛かったんだけど。
「跡部パパが良いって言ったらね」
とニッコリ笑ってあげました。即座に陳列棚に戻しに行った3人に皆笑ってた。
「なんだ、長岡。俺がパパならお前がママか?」
ニヤリと笑って言う跡部に
「パパはパパでも、パトロンって意味ね」
と返してやれば、侑士と仁王が大爆笑。
「跡部は財布かいな」
「じゃのう。頼むぜよ、パパ」
大量の食品を買った後、愈々別荘へ。
漸く別荘についたのは午前10時ごろ。ま、自宅を出たのは朝6時くらいだったからね……。
先ずは全員で大量の食料を冷蔵庫へ。3日で使い切るから……冷凍しておく必要はないかな。
跡部と宍戸にウォータージャグ(所謂タンク)を倉庫から出してきて洗っておくように頼んで、立海メンバーには別荘内の施設を確認してもらうように頼む。
氷帝メンバーは過去にこの別荘にきたことあるらしくて、私も見取り図を見てるから大体判るしね。というか、部屋の位置を確認して回らないといけない別荘って、どんだけ広いんだよという話よね。
その間に侑士と滝にはお昼ご飯のお弁当を買出しに行ってもらう。スーパーでは荷物多すぎてそこまで手が回らなかったし。
で、私とジロちゃん、がっくんは洗濯の為の準備。
陽気も随分いい5月。しかもテニスで汗まみれになるだろう皆。
洗濯物はかなりの量になるに違いないからね。
効率よく洗濯するために、洗濯物入れの籠を3種類準備する。といっても洗濯籠はないんで、それになりそうなものをジロちゃんとがっくんに探してきてもらった。
「彰子ちゃん、これでいい~?」
「これなら良さそうだぜー、長岡」
と2人が3つの籠を持ってくる。どれも十分に大きい。……何に使う籠なんだろ。
因みに『どれくらいの大きさ?』と訊いてきたジロちゃんに、『がっくんが中で体育座り出来るくらいのやつ』といっておいたんだけど……まぁ、そこまで大きくはないけど、これだけあれば十分だろ。
それぞれの籠に『白物用』『色物用(跡部や侑士って意味じゃないよ!)』『タオル用』と書いた紙を貼る。
これで洗濯するときの仕分けが楽になる。
それから料理器具の確認をして、リビングに行く。暇になったジロちゃんとがっくんが子供みたいについてくる。……可愛い。
しかし……この壁に画鋲刺したら怒られそうだな。
「ホワイトボードみたいなのあればいいんだけどな……」
スケジュールとか貼りたいし、あったらミーティングとかでも使えるんだけど。
「確か、あるぜ。前にここで合宿したときあったから」
「うん、俺も見たC~! 持ってくるねー!」
小動物がパタパタとリビングを出て行く。入れ替わりに別荘内を見て周ってた立海メンバーが戻ってきて。それから間もなく……
「長岡ッ!! 忍足はともかく俺がイロモノってのはなんだッ!!!」
と、洗濯籠を抱えた跡部が怒鳴り込んできた。もう気付いたのか。
「え、そのまま?」
可愛くクビを傾げてみるが、跡部は誤魔化されてくれない。
「……長岡、あんま跡部で遊ぶな」
宍戸が呆れたように言う。まぁ、私が跡部で遊ぶのは日常茶飯事だしね。
「跡部、お前に過剰に反応するから長岡が揶揄うんだろ……」
更に跡部にも言う宍戸くん。まさにその通りですわ、宍戸先輩!
あまり見ないだろう跡部のこんな姿に立海メンバーは驚いてる。幸村とにおちゃんは面白そうに笑ってるけど。
「彰子~、買うてきたで。取り敢えず痛まんように冷蔵庫入れといたけどな」
「ありがと、侑士、滝」
怒ってる跡部は無視して侑士と滝を迎え入れると……
あー!
「跡部、勝手に剥がさないでよー!」
折角貼った紙を籠から剥がして丸めて……ヤバス。
とっさに横にいた侑士の後ろに隠れる。
そう、跡部が渾身の力をこめて私めがけて投げてきたから。いくら紙とはいえ、あれだけ力いっぱい投げられたら痛いっつーの。
が、難なく侑士はそれを受け止めて……
「なんやこれ……」
ガサゴソと紙を開く。
「…………彰子。俺はイロモノやあらへんで。俺は色男や」
「うん、侑士が色男なのは認めてあげるのも吝かではない。でもイロモノでもあると私は思うんだよね」
確かに侑士は色男だと思うから認める。勿体ぶってるけど。
「イロモノっちゅーんは、跡部みたいなヤツのこと言うんやで」
「だよねー」
「てめぇらッ」
「あ、がっくん、ジロちゃんありがとー!」
跡部が何か言おうとしたけど、そこにジロちゃんたちがホワイトボードを持ってきてくれたので、跡部をスルーして2人にお礼&移動。
ホワイトボードに部屋割りとこれからのタイムスケジュールを貼り出す。
「跡部部長、準備できましたから、初日の最初のミーティング始めません?」
マネージャーの顔でそう言えば、跡部も直ぐに切り替える。こういうところは流石だよね。
「ああ、じゃあ、皆適当に座ってくれ」
尤もすれ違いざま、『てめぇ覚えてろよ』って言われたけど。
跡部が練習スケジュール(跡部と幸村と3人で相談して決めたスケジュール)を説明した後、私にバトンタッチ。私は生活全般の注意事項を言わないといけないからね。
「先ず部屋割りは、この図の通りです。まー、自分たちで部屋交換するのはOKなので使いやすいように各学校ごとに調整してください」
面倒くさいから、思いついた名前順に部屋を手前から割り当てただけだしね。
「それから、各部屋はご自分で掃除してくださいね。掃除機は1階の物置にあります。洗濯に関しては、練習で使用したタオル、テニスウェア・シャツのみ、私が洗濯します。それぞれ白物・色物・タオルと籠が作ってあるからそれに放りこんでおいてね。練習時以外に着用する服・下着類は自分で洗濯してください。まぁ、私が洗ってもいいんだけど」
「あかんっ! 彰子が他の男の下着なんか触るんやない!」
と、侑士が反論。何慌ててるのよ……。しかも他の男って……侑士のならいいわけ?
「下着は同年代の女性に洗ってもらうのも抵抗あるからね、各自で洗うよ」
にっこりと幸村が言って、皆頷いてた。
「跡部も自分で洗うんだよ。溜めないでね」
この俺様は多分もって帰るか捨てるかしそうだな。
「あとー、皆がどれだけ食べるか判らないんで、パン食は食費嵩みそうなので朝食もご飯と味噌汁になるけど、朝から米食べれないーって人いる? あ、跡部の朝食はイングリッシュブレックファストじゃないと駄目ってのは聞かないから」
ついつい跡部を揶揄ってしまうけど……これくらい許されていいはずだ。
結局この合宿の宿泊場所の手配以外は全部私がやったんだし! 部内トーナメントの組み合わせも全部私が組んだし! この1週間鬼のように忙しかったんだから!!
「誰もいないねー。では、次ねー。起床は6時で決まってるけど、就寝時間消灯時間は決まってません。部の合宿じゃないからそこまで決めなくてもいいかなと思って。但し、翌日の練習に障らないようにね。なお、夜11時以降の外出は深夜徘徊となって補導対象になるから、夜遊びは程ほどにお願いします」
ここまで質問は? と訊けば誰も何もない様子。
「では、私からは以上。じゃ、ラスト、幸村君」
締めは幸村にお願いして。
「丁度いい時間だね。これから昼食を取って1時間後に各自着替えてコートに集合。3日間有意義に過ごそう。では、解散」
最後に幸村がそう告げて、それぞれキッチンへ行く。
「長岡さん、3日間よろしくね」
合流したときに挨拶はしてたはずだけど、改めてそう言ってくる幸村。
「こちらこそ、幸村君。あと、長岡でいいよ。うちのメンバー、誰も長岡さんなんて呼んでないでしょ?」
さん付けとか慣れてないから(大嘘だけど……。でもさん付けにはずっと寂しい思いしてたから)といえば、幸村も「じゃあ、俺たちのことも君なしでいいよ。下の名前でもいいけどね」と言ってくれたので、お言葉に甘えて、におちゃん以外は全員君なしで呼ばせてもらうことにした。
「じゃ、俺たちも食事するとしようか」
「そうね」
そうして、キッチンへ行けば、皆賑やかにお弁当選びをしてる。
「彰子どれがええ?」
「んー、残ってるので良いよ」
侑士が適当に選んでくれて、渡される。
「こらー! がっくん、ちゃんとゴミは分別しなさい! 紙とプラスティック一緒にしちゃ駄目!」
「ジロちゃん、ニンジン残さない!」
「跡部ッ。拙いとか言ってるんじゃないの! お店の人に失礼でしょ」
ああ……もうこいつらは……。
「彰子、大変じゃのう……。保母さんに見えてきたぜよ」
いつの間にか隣でお弁当を食べていたにおちゃんが苦笑混じりに同情してくれた。
「慣れたけどね……」
わいわいガヤガヤとしたお昼の時間も過ぎて。愈々練習スタート。
さぁ、私は皆が心行くまで十分に練習できるように頑張らなきゃ。