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【第2弾】ICPOvsシシリアンマフィア【ファルトレク】

幕間~開始前の打ち合わせ~

~ダンクファミリー通信室~

「私としては、征ちゃんをこっちに引き込みたいんだけど」

ある日の打ち合わせのスカイプで実渕は言った。

「征ちゃん、洛山で1人だけICPOでしょ? それにキセキでも1人だけあっちだわ。寂しいんじゃないかしら」

まるで子供を心配する母親のような口調で言う実渕に画面越しに集っている面々は苦笑する。

あの赤司に限って寂しいとか思わないだろうと思った黒子ら帝光中卒業生ではあったが、それを口にすることはしなかった。自分たちにとって赤司は主将でありリーダーだった。同級生とはいえ上に立つ者という認識が強かった。しかし、実渕は赤司の『先輩』だ。自分たちに見せたのとは違う顔を見せているのかもしれない……そんなことを思ったりもしたのである。尤も、帝光中でも下級生だった時期はあるわけで、それを思い出せばそれが単なる思い過ごしでしかないことは容易に想像がついたはずだ。更にしかし、卒業してから1年以上経っているのだから、彼が変わっている可能性だって充分にある。

「赤司に寂しいなんて可愛い感情あるのかよ。魔王だぞ」

ボソリと呟いた黛の言葉はコートの中と同じく影が薄く、同様の性質を持つ黒子以外には認識されなかった。

「それを言うなら、うちの高尾だってぼっちだぞ」

現主将が参加しない秀徳もICPO側にいるのは高尾だけだ。現主将兼PGである赤司と同じくICPO側に同校の者はいない。

大坪の言葉に木村も頷いている。

「鳥目2人がICPO側ってのも不利だしな。高尾をこっちにひきこんでもいいんじゃねーか?」

宮地が更に大坪の意見を後押しする。

「鳥目って、全然違う意味になるだろ」

宮地の言葉に笑いながら森山がツッコミを入れる。確かに鳥目は夜目が効かないことを指すから、鷹の目・鷲の目の鳥の目とは違った意味になってしまう。

「鳥の目だったら、伊月先輩だって持ってます。伊月先輩だっていいはずです! ボスとして伊月先輩の寝返り工作を指示します」

名前ばかりのボスの黒子(但し、本番になればその特性を活かして大活躍予定)はここぞとばかりに主張する。

「そーだぜ、です! 主将とフリもこっちに引き込もうぜ!!です!!」

火神も同意する。日向と降旗も付け加えるあたり意外とちゃっかりしている。先輩大好きな2年生たちは同輩と先輩が別のチームにいることが嫌で仕方ないらしい。尤も、福田と河原は先輩ばかりのチャット(しかも話し合いの中心は殆ど交流のないOB組)に萎縮してしまい、殆ど発言できない。何しろ、一番発言するのは頭のよい宮地であり、宮地といえば=物騒発言だ。誠凛ではクラッチに入った日向が乱暴な言葉を発するくらいで物騒な言葉とは無縁な学校だから、それだけで恐がってしまっている。他の学校は「シバく」(海常・笠松)、「捻り潰す」(陽泉・紫原)、「両の目を刳り貫いて/オヤコロ」(洛山・赤司。但しこれは暴言と言うよりも中二病)などがあるためか、それほど恐がってはいない。

誠凛の3年生たちはといえば、「別チームなのは寂しいけど、こういうのもいいよね」と特に3人を積極的に寝返らせようとはしていない。

しかし、最大人数の誠凛の光と影コンビが主張したことによって、それまで黙っていた複数人数の学校も黙ってはいなかった。

「それなら、うちだって、笠松先輩寝返って欲しいッス!」

「室ちんと福ちんだって、同じチームがいいしー」

「若松さん、よぼーぜ」

黄瀬・紫原が主張し、少し遅れて青峰もそんなことを言い出す。

そして、各校がそれぞれの学校のICPO側を寝返らせたいと主張しだし、喧々諤々の大論争となってしまう。これではいつまで経っても寝返らせる候補が決まらない。

「確かに、笠松さんに寝返ってもらうのはいいかもしれないですね。前回の時も笠松さん、今吉さんに含むところがあったみたいですし」

「でしょ? ね、黒子っち、笠松先輩に寝返ってもらおうよ!」

「タツヤと同じチームもいいな」

「火神、そう思うよねー?」

「あのチームだと、若松とか中村とか苦労しそうだねって水戸部も言ってるよ」

「中村ってヤツはどうでもいいけど、若松さんはこっちだろ!」

結局、何も決まらないまま、予定の打ち合わせ時間が終わろうとしていた。

「今日も決まらねぇか……」

宮地が溜息をついたそのとき。

「だったら、今吉以外、全員寝返らせるってのはどうだ?」

本日初めて諏佐が口を開いたのであった。

~ICPO指令部~

「ほな、誰寝返らせるか決めようか」

ICPO司令官である今吉の仕切りによって今日の打ち合わせが始まった。今日の議題は誰を内通者にするかだ。

「向こうが誰を寝返らせようとするのかも考えたほうがいいですね」

それを受けて赤司が発言する。

「だな。多分、向こうは赤司と高尾を狙ってくるんじゃないか?」

「ああ、赤司と高尾は1人ですからね」

笠松の言葉に日向も頷く。

「後は誠凛のメンバーかな? 誠凛は皆仲がいいからね。タイガが寂しがってたし」

「それをいうなら、紫原もお前を引き抜きたいんじゃねーか? 結構お前には甘えてるし」

陽泉コンビもそんなことを言い、

「絶対、うちの駄犬は笠松さんを寝返らせようとするでしょうね」

「うちも妖怪をスカウトしそうだよなー」

中村、若松も自校のOBの名を挙げる。

「結局のところ、各校全部お誘いきそうやな」

だったら、それを逆手に取ればいい。そう今吉は思う。けれど、あまりたくさん寝返らせても面白くない。

「まぁ、多分、あちらさんは最終的には赤司と高尾は狙うてくる思うで。やっぱ、1人だけっつーのはネックや」

「だろうな。だったら、こっちもそれを利用して、内通させるか。洛山と秀徳からそれぞれ1人ずつだな」

今吉が言い、笠松が同意する。これでICPO側は大体方針が決定する。

「実渕、葉山、根武谷、黛。誰がええと思うんや、赤司は」

「そうですね……。玲央は僕の保護者的な立場にいますから、向こうも予想していると思います。小太郎と永吉は止めておいたほうがいいでしょう。あいつらは隠すことが出来ませんから、内通はすぐにばれます。そうなると、千尋を寝返らせるのが妥当だと思います。でも、素直に千尋が内通に応じるとは思えません。アレで反骨精神は結構強いですからね。僕に対しては」

「あー、そんな感じだったな」

対戦した冬の大会を思い出し、伊月も頷く。赤司のために寝返らせるなら実渕と誰もが思うだろう。葉山と根武谷は隠し事には向かない。しかし、一番赤司に対して含むところがありそうな黛ならば、内通するとは思わないかもしれない。そう考えれば、黛を寝返らせるのはありだろう。

「黛さんを寝返らせるのは有りでしょうね。あっちには影薄いのの1号2号がいるわけですから、いくら鳥の目持ちの俺と伊月さんいるっていっても、不利になる可能性は高いっすから」

自分と伊月がいれば、黒子・黛を見つけるのは難しくないかも知れない。だが、コートとは条件が違う。コートの中では「絶対にいる」ことは判っているのだ。だからこそ、「いる」と判っているからこそ、見失わないのである。いないかもしれない、いるかもしれないという状態で何処まで早期発見できるかは判らない。実際、前回のファルトレクで高尾は黒子を見つけることが出来なかったのだ。尤もそれは高尾の視認可能な範囲に黒子が現れなかっただけなのであるが、それを高尾は知らない。

「秀徳はやっぱり寝返らせるなら、緑間か? 高尾の相棒だしな」

若松が問えば、それを否定したのは高尾自身だった。

「それは実渕さんのパターンと同じで、多分皆が予想してると思うんすよね。オレといえば緑間みたいな。だから、秀徳から寝返らせるなら、一番意外性があるってことで木村さんかなって思います。でも、あの人が大坪さんや宮地さん裏切るとは思えないんですよねー」

恐らく、マフィア側が寝返りを最も警戒していないのは木村ではないかと思うと高尾は言う。前主将である大坪、頭脳派である宮地は寝返り打診を警戒しているだろうとも。

「まぁ、こっちから裏切りが出ない限り、無理に内通者作らなくてもいいんじゃねーか?」

少人数ゆえにこちらは既にかなりお互いの意思疎通が図れている。既にチームとして纏まりつつある。この11人で勝つのだと。寝返る者がいるとは思えない。ゆえに福井はそう言った。

「ああ、ホンマに寝返らんかてええねん」

「そうだぜ。打診するだけでいいんだ。向こうを疑心暗鬼にさせることも出来るからな」

ニヤリと笑う元主将2人に、「ああ、この人たちが同じチームでよかった」と思ってしまう、ICPOのメンバーなのであった。

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