甘いお菓子と薔薇と騎士
「もう、ジュリアスは五月蝿いなぁ!」
アンジェは溜まりかねたように言った。
ローズコンテストの予選を無事通過し、本選に向けてのメニュー構成を考えているところである。
このスウィートランドのスモルニィ学園では毎年お菓子作りの『ローズコンテスト』が開催される。お菓子大好き(作るのも食べるのも)少女のアンジェとしてはこのコンテストに出ることはスモルニィに入学して以来ずっと夢だった。参加資格は高等部在学中であること(注;オリジナル設定)。去年は候補には入ったものの、2、3年生に優先権があり、結局予選には出ることが出来なかった。だから今年、予選出場が決まったときは嬉しかった。更に親友も出場することが判って喜びは倍増した。
予選はダントツの1位で通過した。2位は親友のロザリア。2人ともコレット・レイチェルという1学年下の出場者を大きく引き離しての通過だった。
そこで、今度は本選に臨むのだ。本選はお菓子と飲み物を1品ずつ出品することになる。
お菓子はケーキで出品することが決まっていた。習熟度・持っているレシピの価値からの判断でもあったが、ジュリアスの存在も大きかった。
ジュリアス――大学部3年、学生自治会長、そしてスウィートナイツ筆頭。
「だから! ケーキは『星屑のケーキ』なんだもん。合うのは、『アイ・ラブ・ユー』『流星サイダー』『ドリームティー』『ハピネスパパイアティー』『流星茶』なんだってば。で、わたしがレシピ持ってるのは『流星サイダー』と『ドリームティー』なの。その組み合わせの何がいけないのよ」
先ほどから、メニューを組み立てているのだが、横からジュリアスがあれこれと口出しするのである。
「ジュースなどわたしの担当するケーキには合わぬ」
ジュリアスには彼なりの美学があるらしく、それにケーキとジュースという組み合わせはそぐわないらしいのだ。
「だったら、『ドリームティー』ね。はい、決まり」
「ならぬ!」
「どうしてよ!」
「ティーの担当はあのクラヴィスではないか!」
クラヴィスはジュリアスと同じ大学部の3年生だ。ジュリアスの幼馴染でもあるのだが、水と油というか犬猿の仲である。
「ジュリアス~~~~。個人的感情をコンテストに持ち込まないでよ」
アンジェは呆れたように溜息をつく。昔からこうなのだ。かなり子どもっぽいところがこの謹厳実直の大貴族令息にはある。
「それはお前とて同じだろう。何故、コーヒーを避ける?」
訝しげにジュリアスが言った。途端にぎくりとしたようにアンジェは沈黙した。
オスカー――大学部2年、コーヒー担当のスウィートナイツ。自治会の役員でフェンシング部のホープ。学生チャンピオンでもある。恐らくこのスモルニィで女子学生・生徒に一番人気のある男だった。
実は、アンジェは彼が苦手だった。いつでもどこでも女性に囲まれている。知り合ったのはコンテスト出場が決まってからだったが、当然その存在はアンジェも知っていた。いつでも華やかな噂の中心にいる彼だったから。
けれど、アンジェは彼を好きになれなかった。子どもは相手に出来ないとばかりに、いつでも『お嬢ちゃん』なんて呼ぶのだ。まるで近所の魚屋のおじさんのように。
どうせお子ちゃまですよ。オスカー先輩の周りにいるような、ナイスバディの美女たちに比べれば、ちんくしゃのお子ちゃまですよ。胸だって、Aカップしかないですよ。
「だって……オスカー先輩、苦手なんだもん」
だから、コーヒーはカフェオレしかマスターしていない。当然人気も低かった。
「お前こそ、個人的感情を持ち込んでいるではないか。わたしの『星屑ケーキ』にはオスカーの『流れ星コーヒー』が一番合うのだ。それ以外の組み合わせは許さぬ」
頑としてジュリアスは自分の主張を譲らない。
「もし、それが聞けぬというのであれば、今後お前との付き合いは一切断つ」
「ジュリアス、横暴! そんなことしたらママが悲しむじゃない」
「だったら、言うとおりにするのだな。オスカーなら武道館にいるぞ」
自分にたてつくなど10年早いとばかりにジュリアスは鼻で笑う。
「お兄ちゃんの馬鹿! 大嫌い!!」
そう怒鳴るとアンジェは仕方なく武道館へと向かったのである。
ジュリアスに対しての怒りを爆発させながら、アンジェはずんずんと歩いていく。
親友のロザリアと幼馴染のクラヴィスしか知らないことであったが、実はアンジェとジュリアスは従兄妹なのだ。アンジェの父カティスは若い頃にアンジェの母と駆け落ちし、家を飛び出していた。当然カティスの実家とは絶縁状態だったのだが、ジュリアスの父が密かにアンジェとジュリアスを引き合わせ、関係の修復を図ったのだ。だから、ジュリアスとアンジェが両家にとって唯一の交流ルートなのだった。表立っては貴族の体面もあって交流を図ることは出来なかったから。
「ジュリアスの馬鹿~~~。わたしがオスカー先輩のこと苦手なの知ってるくせに!!」
だからこそ、ジュリアスはコーヒー以外認めないといったのだ。
「あれでよかったのですか、叔父上」
ジュリアスはアンジェに『大嫌い』と言われたことのショックを引きずり溜息をついた。
アンジェはまさに彼にとって目に入れても痛くない可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い(以下エンドレス)従妹だった。生まれたときから知っている。
彼女の笑顔を見る為ならなんだってやって来た。手ずからケーキを焼いてやったことも数え切れないほどだ(それがアンジェのお菓子好きに繋がっている)。
舌っ足らずな甘い声で「じゅりあちゅおにいたん」と呼ばれたときのあの甘美な感動、もみじ饅頭のような、じゃなくって、もみじのような小さな手がすることであれば、仮令自慢の豪奢な金髪を引っこ抜かれることだって構わなかった。確かに年と共に立派なレディとなれるように口煩くなったことは認める。だが、それは全て可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い(以下エンドレス)従妹の為を思って、心を鬼にしてやってきたことだった。
今回、アンジェが名誉ある『ローズコンテスト』の出場者に選ばれたとき、ジュリアスは天にも上るほど嬉しく誇らしかった。自治会長・スウィートナイツ筆頭という立場ゆえに表立って支援は出来なかったが、出来る限りの力になってきた。このコーヒーの件に関してもそうだった。最良の組み合わせなのだ。だから勧めた。
「悪かったな、ジュリアス」
笑いを堪えながら、奥のドアから1人の男が姿を現す。ジュリアスの叔父であり、アンジェの父であるカティスだった。
実は今回無理にでもオスカーとアンジェを接近させるようにと頼んだのはカティスだったのである。
勿論カティスにとってアンジェはそれはそれは可愛い愛娘である。だが、溺愛しすぎることはなく、ちゃんと父親として冷静な目も持ちながら娘を見守っていた。そして、ローズコンテストが始まった頃から、娘の様子に微妙な変化が現れたことに気付いたのだ。
親の欲目を差し引いてもアンジェは可愛らしい、まさに天使のような少女だった。だから、男女を問わず人気があり、友人も多かった。だが、なぜか恋には縁遠かった。1つにはこの厄介な従兄の存在がある。アンジェを溺愛するジュリアスが彼女に虫がつかないように監視している所為でもあり、ジュリアス自身がかなりレベルが高い所為でもある。幼馴染のクラヴィスとて根暗すぎるところを除けばかなりハイレベルだ。
しかし、そんなアンジェの口からオスカーの名前が出るようになった。それは好意的な言葉ではなかったが、だが、アンジェがそんなことを言うことも珍しかった。かなりアンジェがオスカーを意識していることは間違いなかった。
アンジェの母はそれこそ恋の前兆に違いないと主張し、カティスも父親ゆえの複雑な気分を味わいながらもその意見を認めた。そこで、アンジェがその思いを確り自覚できるようにオスカーとの接近を図らせたのである。勿論、アンジェの恋が100%上手くいくとは限らない。振られる可能性だってある。だが、それでも気付かないよりはアンジェの為になるだろうと思ったのだ。もし失恋しても、彼女を支える家族の愛がある。
「まさか、あの幼かったアンジェがオスカーに恋をしているなど……」
ジュリアスとしては信じがたいことだった。しかもよりによって相手がオスカーだとは。
ジュリアスはオスカーととても仲がいい。といっても一般の友人関係とは違うが。同じ役員として信頼しているし、実際オスカーはジュリアスの片腕だった。だが、そんなジュリアスでさえ、オスカーの女性関係の派手さには眉を顰めざるをえない。
そんな百戦錬磨のプレイボーイのオスカーと初恋すら未経験のアンジェではあまりにも経験値が違いすぎる。上手くいくとはとても思えない。
「まぁ、後はアンジェ次第だがな」
苦笑しながらカティスは言った。アンジェの恋が上手くいってほしいような、まだずっと手元においておきたいような……。父親は複雑なのである。
アンジェは漸く重い足を引きずって武道館にたどり着いた。
「いなければいいのに……」
そうすれば、口実が出来る。
中を覗くと、オスカーはいた。いつものように美女たちには囲まれてはおらず、1人だけだった。黙々と練習をしていた。目には真剣な光があり、流れる汗は輝いていた。アンジェの知らないオスカーの姿があった。
アンジェは声をかけることも忘れ、吸い込まれたようにオスカーを見つめていた。
「どうした。お嬢ちゃん? 俺に見惚れてたのか?」
だからオスカーが不意に声をかけてきたときは酷く驚いてしまった。練習していたオスカーの姿が目に焼き付いていて、彼が近づいていたことにも気付かなかったのだ。
「みみみみみみみみみみみみみみみみみみ見惚れてなんかいませんっ!」
不意をつかれた所為で、アンジェは必要以上に慌てた。しかも図星だったからなおさら。
「ふ~ん、そうか?」
含みの有りそうな言い方だったが、オスカーはそれ以上何も言わず、面白そうにアンジェを見下ろした。
「で、何か用があるんじゃないのか、お嬢ちゃん」
「あの……コーヒーの町に連れて行っていただきたいんですけど……」
「ほう、珍しいな。君からお願いに来るとは」
確かに大抵は他の出場者の付き合ってのことだった。アンジェからお願いするのは初めてだったかもしれない。
「コーヒーを出品するのか?」
「はい」
揶揄うようなオスカーの口調にむっとしながらも、アンジェはこくんと頷く。
その幼い仕草にオスカーは笑みを誘われる。
今まで自分を避けていたアンジェのことがオスカーは酷く気になっていたのである。1つにはプレイボーイとしての矜持。そして、敬愛するジュリアスが殊の外彼女に目をかけていること。何故だろうと思って彼女を見つめているうちに、次第に惹かれていっていた。だが、自分を避けている少女を追いかけることなどオスカーはしなかった。というよりは出来なかった。
その彼女が、自ら近づいてきたのである。内心オスカーは踊りだしたいほど嬉しかった。尤も表面にはそんなことは微塵も出さない。
「今まで、コーヒーはカフェオレくらいしか作ってないだろう? 珍しいこともあるもんだな」
「だって、ジュリアスが……」
「ジュリアス先輩?」
そこに敬愛するジュリアスとはいえ、他の男の名前が出てきたことにむっとする。
「ジュリアスが、自分のケーキに組み合わせるなら、オスカー先輩の『流れ星コーヒー』じゃなきゃだめだって言うから……」
不本意そうに言うアンジェにオスカーは更にむっとする。他人に言われたから、ジュリアスに言われたから、避けていた自分の所に来たというのか!
だが、それでもオスカーはアンジェの願いを退けることは出来なかった。元から女性の頼みは聞き届けずに入られない性質だし、ましてや相手は密かな片恋の相手アンジェなのだ。
「着替えてくるから、そこで待っていてくれ、お嬢ちゃん」
アンジェが頷くのを確認するとオスカーは悠々と更衣室へ歩いていった。ただし、アンジェの見えない所に着くと猛ダッシュで。
「どう?」
「……80点」
「う~~~~」
初めて2人でコーヒーの町に行ってから、10日が過ぎていた。あれから、アンジェリークは毎日のようにコーヒーの町に行ってはレシピと材料を集めている。そして町から帰ると家庭科室にこもって、コーヒーを入れる練習だ。漸く、昨日『流れ星コーヒー』のレシピと材料が揃ったばかりだ。まだまだ満足行く出来には仕上がっていない。
「豆を煎りすぎてる。初めからやり直し」
「うん」
オスカーはコーヒーに関しては厳しすぎるほど厳しい教師だった。でも、かえってそのほうが好感が持てた。
(軽薄なだけのプレイボーイだと思ってたけど、違うのね)
あんなに嫌っていたのに、こうして2人でいることがちっとも苦痛ではない。寧ろ、心地いいくらいだった。
「ほう、やっているな」
そのときジュリアスが入ってきた。
「ジュリアス! 何しに来たの?」
「目を離すな、お嬢ちゃん!」
顔を上げたアンジェをオスカーが叱る。アンジェは慌てて視線をコーヒー豆に戻す。
「オスカー、厳しく指導してくれているようだな。わたしからもよろしく頼むぞ」
「……先輩に言われるまでもないことです」
オスカーは、これまでジュリアスに対して、こんな口のきき方をしたことはなかった。だが、はっきりとオスカーの中には『ジュリアスは恋敵』とインプットされている。そのジュリアスにアンジェとの貴重な時間を邪魔されたくはなかった。
「そうか……」
ジュリアスは苦笑する。オリヴィエからの情報は間違いなかったようだ。パフェ担当のスウィートナイツ・オリヴィエはかなりの情報通であり、オスカーの親友でもある。その彼が言っていたのだ。『オスカー、かなりアンジェにマジらしいね』と。
「出来た、と」
アンジェが豆を火から下ろす。
「で、どうしたの? ジュリアス」
漸くジュリアスに話し掛ける。
「ああ、これをお前に渡そうと思ってな」
こんぺいとうと星のかけらだった。
「こんなにいっぱい? ありがとう、ジュリアス!」
「礼なら、クラヴィスとコレットにも言っておけ。お前の為に集めてきてくれたのだ」
「うん、そうする」
こくんと頷くアンジェの金の頭をジュリアスが優しくポフポフと叩く。
「では、頑張るのだぞ、アンジェ」
ジュリアスは片手をあげて軽く振ると、家庭科室を出て行った。
「嬉しいなぁ、いくらあっても足りないもの。オスカー先輩、なかなか100点くれないし」
「当たり前だ。こんな味で100点なんて出せるわけないだろう」
「うん。オスカー先輩はだから、信頼できるの。オスカー先輩に100点もらえたら、絶対大丈夫、って思える味になるわ」
アンジェのその一言が、思いもかけないほど大きな喜びをオスカーに与えた。自分を嫌っていたはずのアンジェが、仮令スウィートナイツとしての彼にではあってもこれほどの信頼を寄せてくれるとは。だから、オスカーは思い切って訊いてみることにした。
「お嬢ちゃんとジュリアス先輩の付き合いは長いのか?」
「うん、長いよ。生まれたときからだもん」
気になって仕方のなかったことに対して、アンジェは簡単に答えた。
「生まれたときから……?」
ジュリアスは大貴族だ。ということは生まれながらの婚約者か? いや、アンジェは庶民だからそんなはずはない……。アンジェの言葉に、オスカーの頭はぐるぐると思考をめぐらす。
「あ、まだ、オスカー先輩には言ってなかったんだっけ。ジュリアスは従兄なの。すっごく口煩いお兄ちゃん」
アンジェが明るく言う。その屈託のない表情にオスカーは全身から力が抜けた。
従兄、従妹! 恋人ではなかった! まだ自分にもチャンスはあるのだ!
「そうか、そうだったのか!」
オスカーは、初めて屈託なく笑った。そして、その少年めいた笑顔はアンジェに強烈な印象を与えた。
「恋、ね。それは」
きっぱりとロザリアは言った。
「恋?」
「そうよ。それ以外の何だと言うの? あんたは先輩のことが気になってしょうがないんでしょ? いつも先輩のことばかり」
あの日からアンジェはオスカーといることが苦しくなっていた。どきどきして、オスカーとちょっと指先が触れただけでも心臓が踊りだして、笑顔が眩しくて。でも、一緒にいないと寂しくて、心にぽっかり穴があいたようになってしまう。始終オスカーのことばかり考えている。
自分が判らなくて親友に相談した。その結果、ロザリアはきっぱりと言ったのだ。
「ほら、そろそろオスカー先輩と町に行く時間でしょ。あ、お迎えに見えたみたいね」
ロザリアの示す方向を見るとオスカーが立っていた。
眩しかった。
オスカー先輩に恋してるの? ……うん、恋してる。
その日、町で15個目のレシピ、「ベリーグッド・ラテ」をアンジェは手に入れた。
「お嬢ちゃんにご褒美だ」
そういってオスカーは新しいレシピを教えてくれた。名前はない。自分でつけるのだそうだ。
「さて、家庭科室に戻るか。昨日は98点だったからな。あと一息だぜ」
「はい」
アンジェリークは家庭科室に戻り、コーヒーを入れる。
(流れ星コーヒー……流れ星は願い事を叶えてくれる……。それなら、わたしの想いも、オスカー先輩に伝えてくれるかしら)
アンジェはオスカーのことを思いながら、コーヒーを入れる。
「出来ました。味見、お願いします」
アンジェはじっとオスカーがコーヒーを味わう姿を見つめている。
「よく頑張ったな。100点だ」
ゆっくりとコーヒーを味わったオスカーが、アンジェに告げる。
「何を思いながら入れたら、こんなに素晴らしい味が出せるんだい、お嬢ちゃん?」
「オスカー先輩のこと……先輩のことを考えながら入れたんです。先輩に、わたしの想いを伝えてほしいって、そう思いながら……」
オスカーはわが耳を疑った。だが、目の前のアンジェは頬を染め、恥ずかしそうに、だが確りと顔を上げてオスカーを見つめている。
「お嬢ちゃんの想い、確かに届いたぜ……」
オスカーはそう言って、アンジェの頬に優しく手を当てると、ゆっくりと口付けた。
ローズコンテストは、アンジェの優勝で幕を閉じた。アンジェが得た称号はこれまで誰も手にしたことがなかった『スモルニィのばら』。最高の称号だった。
けれど、その称号を得たことよりも、アンジェはオスカーと想いが通じたことのほうが何百倍も嬉しかった。
そして、アンジェが得た各ジャンルの伝説のレシピ。それは1つを除いては皆が味わうことが出来た。
ただ1つ味わえなかったレシピ。
それは『オスカー』と名づけられたコーヒーだった。
「これは、俺とアンジェだけで味わおうな」
コメント