アンジェリーク

哀しみの必要

「では、新宇宙の第2代女王アンジェリークよ、女王の玉座へ」

アンジェリークは女王試験の終了を告げ、新女王の即位を告げた。

自分が選んだ2人の女王候補。奇しくも1人は自分と同じ名前だった。そう言えば自分の前の女王もアンジェリークという名だった。

「ここに新女王アンジェリーク陛下の即位を宣言する!」

数年前に自分が受けた言葉と同じ言葉をジュリアスが宣言する。

ほぼ5年に亘る歳月の間守護聖の交替はなかった。自分が女王候補だったときから見守り続けてくれた守護聖は1人も欠けることなく、自分を支えてくれた。

新女王の即位を見守りながら、アンジェリークの心の中を様々な出来事が走馬灯のように駆け巡った。

守護聖たちが新女王に忠誠を誓う中、アンジェリークはロザリアと共に謁見の間を出た。

「お疲れさま、アンジェリーク」

二度と使うことのない女王の部屋へ戻ったアンジェリークにロザリアが言った。

「貴女も、お疲れさま。ロザリア」

ロザリアに微笑み、アンジェリークが応える。

「長いようで短かったわね」

感無量といった感じでロザリアが呟いた。

「そうね。でも、これからが長いわよ、きっと」

重かった王冠を外し、アンジェリークは言う。女王の装束を脱ぎ、着替える。自分はもう女王ではないのだ。1人の女に戻ったのだ。

「ま、これからもよろしくね。炎の守護聖夫人」

「こちらこそ。水の守護聖夫人」

ロザリアも聖地に残るのだ。リュミエールの妻として。アンジェリークとオスカーのことを心配するうちにいつのまにかそういうことになっていた。それを知ったアンジェリークは2人に結婚を勧めた。だが、ロザリアは頑として首を縦には振らなかった。『陛下が我慢してらっしゃるのにわたくしが結婚することは出来ません』 そう言い続けたのだ。

これから2人はそれぞれの夫となる守護聖の館に住むことになる。既に私物はそれぞれの館に運びこまれていた。

「アンジェリーク。迎えにきたぞ」

即位の式典が終わったのか、オスカーがやってきた。そして、一緒にいるロザリアを見ると、隣の部屋にいるらしいリュミエールに声を掛ける。

「リュミエール、お前の奥様もこっちにいるぞ」と。

そんなオスカーの行動に、アンジェリークとロザリアはクスっと笑った。

「きっと、聖地もまた変わっていくわね」

ロザリアが予言した。

 

 

 

それから数年ののち、同時期に3人の守護聖が聖地を去った。光の守護聖ジュリアス、闇の守護聖クラヴィス、地の守護聖ルヴァ。3人は外界に行っても行動を共にするのだといった。『ジュリアスやクラヴィスが1人で生活できるとは思えませんからねぇ』とはルヴァの弁だった。取り敢えずジュリアスの生家へ立ち寄り、その後は恩給を許に学校を開くのだという。アンジェリークとロザリアの母校であるスモルニィ女学院のような、女王養成の為の学校を。

そして、更に数年後、オスカーのサクリアが衰えの兆候を見せた。オスカーは一向に慌てることなく、新たな炎の守護聖に教育を施し、守護聖首座の役目をオリヴィエに渡して、聖地を去っていった。聖地で得たかけがえのない宝……愛するアンジェリークと共に。

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