刀剣乱舞

20世紀乙女 【番外編】

人知れずこそ思ひそめしか

本当に何も告げなくていいのかい?

 

あら、ちゃんと私だって判ってるわ。人間刀剣男士の想いが通じることはないことくらい。

でも、私の気持ち、ばれちゃってるのね。

 

そうだね。色にいでにけりというやつだ。大丈夫、当刃には気づかれていないよ。君の仮面は十分役目を果たしている。

 

それならよかった。人間恋情想い付喪神には重荷でしょうから。……気づいているのは誰?

 

君の近くに在る短刀たちや祐筆、それに人の想いに敏い者たちかな。

 

あらあら、じゃあ大半にはばれているのかしら。

 

半数も気づいていないよ。

 

そう、安心したわ。気づいている皆には気を遣わせてしまうわね。

 

主を案じるのは僕たちの権利だよ。きみは僕たちの愛し子なのだから。

 

ありがとう。ねぇ……お願いがあるの。

 

なんだい? 僕に出来ることなら。

 

あなたにしか出来ないことよ。ううん、あなたにしかお願いできないこと。

もし、私の想いが溢れて恋に狂うようなことがあったら、私を止めてほしいの。……命ごと。

 

……酷なことを言うね。

 

そうね。でも、私の命を、想いを預けられるのは初期刀あなたしかいないの。

 

本当にきみは残酷だね。けれど、承知しよう。きみの命ごと想いを封じ込めてあげるよ。

 

ありがとう……。

 

しかし、髭切にそれば僕の役目と言われそうだ。

 

ふふっ、彼の場合は私が嫉妬に狂って鬼になったら、でしょう? ああ、でも恋に狂えば鬼になってしまうかしら。そうなったら髭切と鬼丸の出番ね。

 

彼らの出番がないことを願うよ。勿論、僕の出番もね。主を37人目にはしたくなどない。

 

ええ。私だって、目標は老衰での大往生よ。皆に看取られていい人生だったって眠るように逝くの。

 

死に水は僕がとろう。きっと薬研がきみの御霊を守るよ。数珠丸や地藏、江雪がきみの浄土への道を示してくれるだろう。

 

ねぇ、歌仙。きっと大丈夫よ。恋はいずれ形を変えるわ。皆と過ごす歳月時間の中でこの恋は昇華されて穏やかに消えていくと思うの。

だから、きっと、何十年か後になって、お互いにあんなことも言い合ったねって思い出話にして笑えるわ。

 

そうだね、そう願うよ。

 

 

 

 

 

 

 

そう、願っていたよ、主。

けれど、彼はきみを置いて逝ってしまった。そして、きみも僕を置いて逝った。

彼がきみをどう思っていたのかは、僕にも判らない。

きみに呼ばれ、君に愛され慈しまれて作られた僕たちの魂は、輪廻の輪に迎えられるのだろうか。

だったら、願おう。

来世ではきみと彼が人として出会い、幸福な結末を迎えられるように。

願わくば、僕はきみの近くで見守る存在でありたいね。

きみは危なっかしくて心配だからね。

 

我が主。

どうか、安らかに。そして来世が幸福なものであるように。

さて、そろそろ僕も追うとしようか。

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