Episode_47 怒涛の展開…って平和だけどね
聚楽第潜入調査が終わったけど、結局あれは何だったのかよく判らなかった。数多くの本丸が調査に向かったというのに、結局事前に知らされていた情報以上のものは出てこなくて、一体何なんだと。
歴史保全省歴史改竄対策局の情報部も政府所属の刀剣男士に潜入してもらって調べつつ、審神者からも情報収集してたけど、やっぱり判らなかったらしい。もしかしたら審神者には知らせることが出来ないようなヤバい事実が判明したから、通達せずに何も判らなかったと言ってるのかなんて穿ったことを考えもした。でもそれは何十回と潜入して調べた猿丸君から否定された。お猿君の部隊でも何も掴めなかったらしい。お猿君の本丸は彼の性質を反映して情報収集方面に優れている。そのせいか刀剣男士たちも数値には現れないけど索敵や偵察が優れているらしい。観察力に長けているともいえるな。
なので、丙之五さんから次回同じ聚楽第が出現したらそのときは調査に加わってほしいと言われた。まぁ、今回の調査って、戦績上位本丸殆ど参加してないからなぁ。というか、戦績上位に限らず、達成報酬が山姥切長義って判った時点で山姥切国広モンペ本丸の殆どが手を退いてるもんね。あれは情報の出し方と報酬が悪手だったと思う。山姥切長義も災難だな。
歴史保全省としては次回があるなら、そこでは何かを掴みたいってことで、戦績上位の本丸には次回参加要請は個別に行ってるらしい。
さて、そんな聚楽第調査から時は流れ、すっかり夏です。景趣の向日葵畑は入手してません! 向日葵ではなく、庭園の池には睡蓮が咲き乱れて日本の夏! って感じになってる。うちは寝殿造本丸で庭に向日葵は似合わないからと、歌仙や蜂須賀、鶴爺といった雅枠がプロデュースしてくれたんだよね。睡蓮って涼しげでいいよねー。
「暑い」
「いいで…いいだろー。誉取りまくったご褒美!」
長らく過ごした21世紀の猛暑に比べればかなり涼しいとはいえ、やはり夏は暑い。まぁ、あの頃は異常だったよね。35度とか当たり前で32度だと涼しいとか思ってたもん。本丸は大体28度くらい。あの当時のクーラーの推奨設定気温だから、言うほど暑くはないんだけど。でも、今、私は限定的に暑い。
それは何故か。今私は執務室を出た縁側(正確には寝殿造なので廊なんだけど)にいる。そして、何故かずおが私の膝枕で寝ているのだ。
「まぁ、日頃中々ゆったりと時間取って交流出来ないから、ずおが甘えるのは別にいいんだけど。っていうか珍しいよね、ずおが甘えるのって」
「たまにはいいじゃないです…だろ。俺が甘えても」
極修行を終えてずおは言葉遣いが変わった。ちょっと乱暴な言葉遣いになった。でも、なんかそれ、無理してない?
「ねー、ずお。なんかさ、うちの本丸って割と亜種が多いらしいんだよね」
珍しく甘えん坊になってるずお。多分、これ、ストレスが原因だと思うんだ。だから、一見関係ないような話題を振る。
「えー、何それ」
「ほら、うちだと短刀ちゃんたち甘えん坊じゃない? よそだと秋君や五虎ちゃんや今ちゃんはともかく、まぁ君やひぃ君が膝に座ることってないらしいし。鳴君はきぃちゃんに頼らずに会話が成立するし、ばみ君だって甘えるし、明石は働くし、鶴爺は落とし穴掘らないし、江雪は戦うし、伽羅は馴れ合うし」
「あー、確かにそうかもー。演練で馴れ合わない伽羅さん見るとビビるよね。他所の叔父上の声聞いたことないし、明石さんもうちの10倍はダルダルしてるし」
「ねー」
私の言葉に応えるずおの頭を撫でながら会話を続ける。
「だから、ずおも無理に他の極鯰尾藤四郎に合わせて乱暴な口調にしなくてもいいんだよ」
それが言いたかったこと。するとずおはびっくりしたように私を見上げる。
「え、なんで……」
「伊達に3年以上ずおの主してませーん。ずおが何度も言い直してるのバレバレだし」
言い直さなくても一拍置いてから喋ってることも多い。だから、あ、無理してるんだなって判った。
「別に他所の鯰尾藤四郎と違ってもいいじゃない。それがうちのずおなんだから」
ぐりぐりと頭を撫でながら言えば、ずおは何処かきょとんとした顔をしていた。
「あ、それとも修行終えたら美少女ぶりに拍車掛かったから、男の子主張?」
「なんですかー美少女って! それは乱でしょ!」
「うん、だねぇ。乱ちゃんにはびっくり。修行から帰ってきたら美少女アイドル爆誕!」
「本体がマイクに見えました」
「やっぱり? 私も見えた。っていうか、殆どにそう見えたらしくてね、ほぼ全員にそう言われたらしいよ」
クスクスと笑いながら言うと、ずおも笑う。乱ちゃんが呆れたように言ってからね。『やっぱりボクたちってあるじさんに似るんだね』って。
「別に見た目気にしてるわけじゃないですよ。修行前も俺、美少女とか言われてましたし」
「まぁ、刀剣男士って一見美少女や美女に見える子も多いよね。短刀だと明確に男の子! って判るの厚と後藤と愛君くらいじゃない? 後の子はボーイッシュな女の子と言われても納得する」
中身は超絶男前でお前のような短刀がいるかとまで言われる薬研だって、見た目は完全中性的美少女だからなぁ。というか女装男士の乱ちゃんもじろちゃんも中身は男前だけどね。
「それ、本人たちには言わないでくださいよ」
「言うわけないでしょ。あー、宗三も極てから未亡人度増したよね」
「それ言ったら怖いですよ」
「うん、凄まじい口撃受けた」
「言ったんですか! ホント主って怖いもの知らず!」
「まぁ、あの口撃が宗三のチャームポイントの一つだしね」
「時々俺、主って滅茶苦茶大物なんじゃないかと思います」
呆れたように言うずおはすっきりした顔をしている。
「演練でね、見たんです。ハッキリ亜種って判る刀剣男士。で、そのとき周りの審神者がヒソヒソ喋ってるのが聞こえて。通常と違う刀剣男士は審神者の影響だから、あの審神者は問題があるんだって言ってたんです」
そうして、ずおは語り始めた。偶然見かけた亜種な刀剣男士。別に問題のある個体だったわけじゃないらしい。言ってみれば同田貫とか御手杵とか大倶利伽羅とか獅子王とか、普段から全く敬語を使わない男士が前田藤四郎や平野藤四郎みたいな話し方になっていたというようなもの。違和感はバリバリあるけど、決して負の変化ではない。けれど、審神者が刀剣男士の言動を縛っているのではないかと疑われるようなものでもある。
ずおが見たところその刀剣男士を連れている審神者に問題はなかったらしい。刀剣男士であるずおたちは人の穢れとか悪意とかには敏感だから、問題のある、所謂刀剣男士虐待とかするような審神者であれば判るという。そんなずおから見ても件の審神者は何ら問題はなかった。
なのに、周囲の審神者はさもその審神者に問題があるようにヒソヒソと話をしていたらしい。
「まぁ、ヒソヒソやってたほうが問題ありげな感じでしたけどねー。でも、噂ってあっという間に広がるでしょ。何の責任もないから面白がって広めちゃう。もし極になった俺が前と変わらない口調で主と話してたら、そんなふうに言われちゃうんじゃないかって思っちゃったんですよね」
つまり、ずおは私のために無理してたってことか。もう! 何この子可愛い! 健気!! 一期、やっぱりあなたの弟は天使です!
「ずお、ありがと。でも、ヒソヒソやられるよりずおが無理するほうがイヤだなぁ、私は」
ぐりぐりと頭を撫で続けて、たっぷりずおを可愛がる。実はばみ君よりも甘えてこないからね、ずおは。
「そーですね。っていうか、本丸でまで無理して口調変えることなかったですよねー。演練とか万屋とかで気を付ければいいんだし。まぁ、主が万屋に行くこと殆どないし、考えすぎちゃいました!」
粟田口の中では明るくてムードメーカーなずおだけど、やっぱり真面目なんだよね。だから考えすぎちゃったか。
「ねぇ、ずお。私はどんなずおでも、今ここにいるずおが大好きで可愛くて大事なんだよ。だから、ずおはずおらしく過ごせばいいんだからね」
「へへっ。そうですよね!」
ずおはニカっと笑うとお腹に抱き着く。
「主、ちょっとお腹タプタプになってません?」
「えっ、マジ!? やべぇ。光忠と歌仙の御飯が美味しすぎる所為だ」
「やや子がいるとか?」
「おう、喧嘩売ってんのか。言い値で買うぞ」
「ヤベ、そんなことになったら弟たちにお覚悟されます」
クスクスと笑い合いながらポンポンと会話が弾む。どうやらずおの屈託は解消されたみたいで安心だ。
そうして甘えん坊ずおは弟の薬研が『珍しいな、ずお兄が大将に甘えるなんて』とやってくるまで続いたのだった。弟に見られたお兄ちゃんは恥ずかしそうにしてたなぁ。
「はぁぁぁぁぁ!?」
その事前情報を見て、思わず叫んだ。その瞬間、後頭部をスパコーンとハリセンで叩かれた。犯人は『雅じゃない!』と常の口癖を発した本日の祐筆である初期刀様だ。
「どないしはったんです、主はん」
近侍の明石は興味深げにメール画面を覗き込む。何処かにハリセンを仕舞った歌仙も同じく覗き込む。
「次の極の先出情報。大太刀からだって」
政府は数か月に一度のペースで先行して刀剣男士の新規・極の実装予定やイベント予定を知らせてくる。そのスケジュールの中に次の極が大太刀だとあったのだ。
「うわぁ。光忠はん、ごっつう楽しみにしてはったのに」
打刀の極実装が終わったから、次は太刀だよねと初太刀の光忠はかなり楽しみにしている。光忠だけじゃなくて他の太刀も楽しみにしていて、太刀はどんな順番で極修行の許可が下りるのかを予想したりもしてた。それに現状当本丸唯一のレア5であるみか爺は自分のスロット数がどうなるのかも気にしてたなぁ。
なのに! 太刀を差し置いて先に大太刀!!
「なんや、大太刀が先に極になったら、自分ら太刀の出番、のうなるのとちゃいます?」
はぁ、と深い溜息の明石。まぁ、太刀と大太刀って戦場完全に被るもんなぁ。打撃最大の大太刀が先に極になったら、打撃で劣る太刀は危機感抱くよねぇ。
「大太刀4振、大太刀の機動と偵察と隠蔽をカバーするために短刀もしくは脇差と組んで1部隊。これが主力になると言われても納得してしまうねぇ」
こら、歌仙、止め刺さない! ただでさえ極短刀は長らく最前線張ってたから、太刀面子の心を抉りまくってたんだし。
「確かに戦場は被るけど、それは今までも同じだからね。野戦は太刀メインの大太刀・槍・薙刀混じりで編成するよ。極だろうが無印だろうがね」
今までと変わらないんだよと明石を宥める。全員極になるんだから、早いか遅いかの違いだけで、どの刀種を優遇するとかはない。そりゃ、夜戦や室内戦は短刀・脇差メインの打刀サブで太刀以上の出番はないけど。それは弱体化してしまうから仕方ないしね。
取り敢えず、今日の全体ミーティングで周知しないとね。ああ、でも短刀や脇差に兄弟のいる太刀は特に楽しみにしてたから、落ち込みそうだなぁ。特に一期と江雪。
太刀が落ち込みまくり、それに大太刀がアワアワを慌て捲った日から数日後、いよいよ最初の極大太刀のシルエットが公表された。
「太郎はんと次郎はんですか。蛍やないんやね」
偶々IT関係のシステムについての報告で執務室にいた明石が知らせを覗き込んで言う。
「うん、蛍君の実装はちょっと心の準備をさせてほしいなぁ。ほら、蛍君、大太刀で唯一子供姿でしょ。極めたら成人するんじゃないかって話もあるんだよね」
「え、蛍の姿変わるんですか。大人の蛍もええですけど、なんや複雑やなぁ」
うん、そうだよね。大人姿の蛍君も見たい。きっと神秘的な姿になると思うの。でも、今の可愛らしい蛍君がいなくなるのも悲しいんだよね。
短刀の極化のときにも成人するんではないかという話は出ていた。でも、短刀はその役目柄あの子供姿となっている。ならば、極めたからと言って大人姿になるのは特性を損なうことになる。だから、彼らは極めても子供姿のままだった。
でも、蛍君の場合、何故彼だけが大太刀の中でただ1振子供姿なのか理由が判っていない。様々な考察が審神者の間でされていて、有力なのは実は蛍丸は『阿蘇氏が奉納した来国俊作の蛍丸』ではなく『失われた蛍丸のレプリカとして阿蘇の人々が打った蛍丸』の付喪神であり、刀が打たれたのは2000年代だから若い付喪神故に子供姿なのだという説だ。そして、もう一つが失われた蛍丸を守れなかった阿蘇の人々の想いが守られるべき存在として子供姿を取らせたという説。私は後者だと思ってる。
前者の説であれば、それは御手杵にも適用される気がするんだよね。彼も残っているのはレプリカだし。でも、御手杵は成人の姿だから、一方が大人姿なのにもう一方は子供姿というのは可笑しいと思う。だから、後者を支持してる。
で、そうなると、『これまでは俺が守られてきたけど、俺もちゃんと皆を守れるんだよ』ってことで蛍丸が極修行で成人することもあるかなぁと思うんだよね。
「ああ、ありそうやなぁ」
成人する可能性の理由を告げれば、保護者の明石も同意する。極になって仮令大人姿になっても、私の大切な蛍君であることには変わりないんだけど、でも、でも、一気に大人姿になられたらなんか寂しい!
「判ります、主はん。どんな蛍であれ自分は愛せます。せやけど、今の蛍の姿が失われてしまうんも寂しいんです。人のように徐々に成長するんやったら、それも楽しめるやろうけど」
まぁ、ここで私たちが心配してもどうにもならないんだけど。でも、やっぱり考えちゃうんだよね。
よし、蛍君の極実装までに覚悟決めよう! ね、明石。
そして。
「さて、主よ。お願いがあります」
と、実装当日の朝食前にたろさんは旅立った。で、4日後、
「いくら神がかりとされ、霊格が上がろうと、私は貴方の実戦刀。そういうことです」
見た目は完全に神職なのに実戦刀としての自覚バリバリになってたろさんが帰ってきた。うん、美しさに磨きがかかってるね!
「おー、兄貴! お帰り! じゃあ、次はアタシだね!」
って、出迎えたじろちゃんは
「ん~、ちょっとさ~、お願いがあるんだよね」
兄を出迎えたその足で自分の修行へと旅立っていったのだった。機動遅いのに素早かったなぁ。
因みにこの日、何度目かの連隊戦が始まった。今回の報酬、御歳魂10万個は新たな大太刀祢々切丸だった。まぁ、例によって140番以降なんでスルーですけど。というか、やっぱりイベント減ってないよね。だから、うちは基本的にイベントはスルーしまーす。
なんて思ってたら。いや、イベントはスルーで変わりないんだけど、140番以降は要らないよーって思ってたら。鍛刀でついに来ちゃったよ、140番以降。巴形薙刀。
打ち上がったばかりの依代に分霊は宿っていないとはいえ、そのまま刀解したり錬結に回すのもなんか申し訳ないというか後ろめたい気がして、『巴形薙刀』に聞こえるわけないと思いつつも、顕現しない理由を説明した。『巴形薙刀』が悪いわけではないが刀剣男士となった経緯に納得がいかないため歪んで顕現してしまう可能性があるから顕現はしないこと。刀剣男士たちから依代であっても長く本丸の置いておけば影響が出る可能性がゼロではないと言われたから錬結に回すこと。それをできるだけ誠意を込めて依代に語り掛ける。
「気が済んだかい?」
そんな私に苦笑して、歌仙が尋ねる。
「うん、まぁ、所詮は自己満足だけどね」
というわけで、巴形薙刀には早速たろさんの錬結資材になってもらいました。
そろそろ本丸の夏季休暇も決めないとねーなんて薬研と話をしながら今日も日課の鍛刀をするために鍛錬所へと行く。日本号出るまでは槍レシピ! と思ってたけど、まぁ、出ないよね。ってことで、基本的に槍レシピなんだけど週に1回脇差レシピの日と重めの太刀レシピの日を作ってる。そして今日は太刀レシピの日。
妖精さんに資材を渡しつつ、薬研とは夏の帰省について話す。物欲センサー切るには雑談しておくのが一番だからね!
去年からOKになった乙種審神者の帰省。新年は本丸で神事擬きをすることから帰省しない。なので、夏に2泊3日を2回(私は5泊6日だけど)することにした。
で、今回連れて行くメンバーをどうするかっていうのが今刀剣たちには最も熱い話題らしい。これまでに実家に連れて行ったのは、初回の歌仙・薬研・小夜ちゃん・蛍君・田貫・愛君、2回目の鳴・ばみ君・光忠・国君・たろさん・一期・まぁ君、2回目後半の厚・みか爺・石さん・こぎ・今ちゃん・岩さんの19振。帰省時護衛の必須条件である極っ子同行については打刀までは実装されてるメンバーは皆極めてるから問題ないし。
そんなことを話しつつ炉の時間を見れば、3時間2つと3時間20分。おお、これは小竜景光か小烏丸の可能性もあるな!
取り敢えず、手伝い札もかなりのストックが出来たので今日は全部手伝い札でサクッと終わらせよう。博多からも許可出てるし。
というわけで、相変わらずの鍛刀率の燭台切光忠2振と見たことのない太刀。うん、これは……。
「小竜景光か小烏丸か」
薬研はそう呟くとちょっくら呼んでくるぜと鍛錬所を出て程なく光忠をお姫様抱っこして戻ってきた。いやさ、そりゃ光忠って太刀の中でも機動遅いけどさ。伊達男が恥ずかしそうに顔を覆ってるじゃないか。
「長船じゃないね。ってことは小烏丸さんだよ」
鍛刀された太刀を見て光忠は言う。そして傍らの刀掛けにある自分を見て『僕来過ぎ』と呟いてた。光忠が『長船じゃない』と言ったのは3時間20分だと今現在は求めていない小豆長光もいるからだ。
140番以降に思うところはあれど、もう20振もいれば段々それも薄れては来る。特に私としては光忠の同派が悉く来ない現状、もう謙信景光や小豆長光でもいいかなーなんて気はしてるんだよね。毛利藤四郎だってたったひと振だけいない粟田口だから別に来てもいいかなーと思ってもいる。
正直なところ、今の私が偏見と隔意を持ってる140以降の刀剣って3振だけなんだよね。だから、それ以外は来てもいいかなーって思ってる。ただ、方針として顕現しないって決めてるから、そこは時期を見て刀剣たちと話し合いをしなきゃと考えているところだ。
ということで小烏丸を手に取り、顕現するために呼び掛ける。
「我が名は小烏丸。外敵と戦うことが我が運命。千年たっても、それは変わらぬ」
桜吹雪とともに現れたのは最も古い日本刀と言われる、日本刀の父。見た目は完全に子供だけどね! いや、身長だけか。雰囲気は年齢とかそんなのは超越してる感じ。年寄りって印象はないものの、全ての刀剣男士よりも年長だと感じさせる貫禄と神秘性がある。
「ようこそ、小烏丸。審神者の右近です」
「ふむ。ここには随分と子らが多いようだな」
どうやら本丸にいる刀剣男士たちを感じ取っているらしく、小烏丸は言う。
「そうね、パパ上で55振目。実装済み刀剣男士数からすればまだいない刀剣男士も多いけど」
薬研と光忠とともに鍛刀所を出、出陣前の朝礼のために皆が集まっている広間へと行く。小烏丸の場合は関係者遠征もないし、1回通常の出陣させてる間にパワーレベリング編成しないとな。順番待ちしてる極勢と一緒に阿津賀志山でいいか。
「パパ上、とは我のことか?」
首を傾げるパパ上。
「審神者の間での小烏丸の愛称だよ。刀剣の父とはいえ、本丸内では石切丸が実質お父さん的立場にいることが多くてパパって呼ばれてるし、刀剣たちにしても刀工を父と呼んでる子が多いからね。だから、区別をつけるためにパパ上。気に入らないなら別の呼称を考えるけど」
「パパ上、希望があるなら言ったほうがいいぜ。言わねぇと妙に可愛い呼び方されたりするからな」
「ああ、こぎさんとかとんさんかな」
私の説明に薬研と光忠が補足する。別にこぎもとんさんも不平不満は言ってないじゃんー。それとももしかしたら私のいないところでは言ってるのかな。ちょっとそこは今ちゃんと千さんあたりに聞き込みするか。
「ふむ。別によいぞ。パパ上か」
薬研たちの補足を聞いて、パパ上はフム、と頷く。古刀って懐広いんだろうか。あっさり受け容れてくれた。あー、いや、古刀には限らないなぁ、刀剣男士の懐の深さや寛さって。戦神なのに皆穏やかで度量が大きいよね。
「パパ上には早速ガンガン出陣して錬度上げてもらうからそのつもりで。今レベリング中なのは極だけで、極になってない刀剣男士は全員カンストしてるからね」
極も結構な数カンストし始めてるけどね。歌仙も既にカンストしてるし。そう考えると、実質錬度差って200近いんじゃ……。当分は出番もなく終わるだろうな。阿津賀志山なら短刀は金銃兵2だし、脇差は金弓兵2、打刀は金投石兵2(一部3)だし。下手すりゃ遠戦で終わる。パパ上は太刀の中では機動高いとはいえ、極に勝る機動にはならないし、白刃戦でも出番なさそう。
「早速我の力を欲するか。良かろう。戦いこそ、刀の本分。存分に我を使うがよいぞ」
自信たっぷりなパパ上に薬研と光忠は苦笑してる。うん、まぁ、新人の誰もが通る道だよね。
案の定、1日を終えたパパ上は攻撃が通らず、それどころか殆ど出番がなくちっとも誉が取れないことにこっそりと落ち込んでいたみたいです。
「どうだ! アタシの晴れ姿! 惚れなおした? なおしたよね? じゃあ祝い酒だ!」
パパ上が来た翌日、じろちゃんの修行帰還。って、ちょ、何! なんかじろちゃん、可愛くなってない!?
修行から帰ってきたじろちゃんを見て、思った。萌えキャラ化してないかって。いや、中身は変わってないけど。見た目がね! 装束がたろさんと同じく直衣になってるし(狩衣じゃなくて直衣になってるよね?)、派手なお化粧もなくなってるし。小首傾げて帰ってきたから、余計に!
まぁ、口を開けば変わってませんでしたけど。頼りがいも相変わらずですけど。
脇差の極化は2振ずつだったから、大太刀もかなぁ。だとしたら次は石さんと蛍君だけど、いつになるんだろう。
石さんの機動、どれくらい上がってくれるかな。そして……蛍君、成人するや否や。楽しみであり、怖くもあるなぁ。
Episode_48 三木眞ヴォイス~~~~!!
夏真っ盛り、今月中旬から土日を合わせて9連休の夏季休業が始まる。審神者の福利厚生もかなり充実していて、昨年度から漸く夏季休業についての規定が出来た。7月から9月の間に5日間。うちのように土日を全体休日と設定している本丸だと最大9連休が可能だ。
そんな8月を迎える前に政府から二つの通達があった。一つは2回の鍛刀キャンペーン。1回目は日向正宗、2回目は大般若長光。そして、通称パン祭。期間中にとある任務を毎日達成することによってシール? を集めて、それを便利道具や刀剣男士の依代と交換できるというもの。
このパン祭、去年までは所持刀剣数に制限があって余裕がないからという理由で便利道具と交換していた。でも、今年は刀剣男士所有枠に余裕も出たことだし、刀剣男士ゲットだぜ。
日向正宗は代表的な持ち主が石田三成ということで余りゲットする気にはなれない。清正公さんと犬猿の仲と言われているし、そんな武将の刀剣は欲しくないって感じだ。まぁ、刀帳番号140以降なので顕現する気皆無。既に飽和状態といっても過言ではない短刀ということもあって、まぁ来たら取り敢えず顕現する気になったときのために依代ゲット出来ればいいかなくらいの気持ちでいた。結果、来なかった。政府が提示していたレシピがALL300ということで、まぁ、今居ない物吉貞宗とかくればいいなーなんて程度の気持ちで日課の一つとしてやってた。そうしたら、日向鍛刀最終日。
「物吉貞宗と言います! 今度は、あなたに幸運を運べばいいんですか?」
来たよね! ばみ君でもずおでも国君でも青江でもない依代が出来た時点で貞ちゃん呼んで顕現して。貞宗兄弟の真面枠揃った―!
貞ちゃんに本丸案内してもらって、そのあとはこれまで出来ていなかった脇差6振での出陣。主要任務はこれで槍3条での出陣を残すのみ!
物吉の愛称は吉君と考えてたんだけど、口をついて出てきたのは『もっくん』だった。うん? そのときふっと薬研を『やっくん』、ゆきちゃんを『ふっくん』と呼べば、シブ〇き隊だなぁなんて思ってしまった。まぁ、薬研に以前『やっくん』呼びは拒否られてるんだけど。もし薬研を『やっくん』と呼ぶなら、同じ短刀兄貴分の厚は『あっくん』、後藤は『ごーくん』(流石にごっくんは変だし)と巻き込まれることになる。というか私と薬研が巻き込む。
もっくんが来たので、夏季休暇の終わりに2泊3日で行く沖縄保養所は1人分予約を追加。現世のホテルだと中々追加変更とか難しいんだけど、そこは審神者業界専用保養所。日々の鍛刀や出陣で本丸人数が変動することが当たり前だから、予約の人数変更は当日の朝10時まで受け付けてくれている。まぁ、こういうことがあるから、保養所のレストランは全てビュッフェ形式になっているんだろうなぁ。
早速、池田屋の記憶周回でもっくん育成しつつ、今度は幸運を運ぶもっくんまたは祖の刀光忠を相槌に大般若長光チャレンジ。まぁ、鍛刀キャンペーンといっても、日課分以上の鍛刀はしないというかさせてもらえないんだけど。
「にゃーさん来たら、パン祭は大包平かなー」
パン祭では最近実装された山姥切長義・豊前江・祢々切丸以外の全ての刀剣男士と交換可能だ。
うちは刀帳番号140番以降は呼ばない方針だから、大般若長光鍛刀さえできれば、あとはどの刀剣でも構わない。鍛刀・ドロップ不可能なのは大般若長光以外は全部140以降だしね。
なので、鍛刀とドロップだとまだ鍛刀運のほうがマシなので、ドロップ限定の刀剣男士を交換するつもりでいる。となると、大典太光世・ソハヤノツルキ・大包平・篭手切江の4振で、篭手切江は142番なので除外。残り3振なら『鳴き声オーカネヒラ』のうぐ爺のためにも大包平かなぁ。太刀ばっかり増えるけど、まぁ、そもそも太刀は実装数が多いから仕方ない。
それに8月に入ってあった通達によれば8月下旬に2年半ぶりとなる新戦場が開放されてしまう。そこは関ケ原の戦場に近く、時代としては室町の南北朝期の戦場若しくは天下分け目の関ケ原関係の戦場らしい。どうやら平原とかそんな戦場だという話だ。ならば、これまで後方支援に回っていた太刀や大太刀の出番になる。ああ、この戦場があるから、大太刀の極が先に来たのかな。
池田屋の記憶、延享の記憶と初期刀組に関係のある戦場が続いているから、この戦場もそうなんじゃないかな。だとすると、初期刀組で最も古い刀は歌仙兼定で戦国時代生まれ。ならばこの新戦場は関ケ原関係かな。蜂須賀虎徹と陸奥守吉行はまだ生まれていないから、山姥切国広関係? でも、山姥切国広は足利城主長尾顕長以外は有名どころいなかったような気がするし、関ケ原に関係する所有者っていたかな。南北朝期はまだ山姥切国広生まれていないし、関係ないだろうから、安土桃山時代の関ケ原だと思うんだよね。もしかしたら、今度の新規戦場は初期刀組無関係なのかな。
現在は神薦審神者の方々と政府預かりの刀剣男士が先行調査してくださっている。新戦場の出現は一部で盛り上がっているけど、これ、盛り上がることじゃないから! 新戦場ってことは敵が新たな時代に侵攻を始めたってことなんだからね!
一部の盛り上がっている審神者に歴保省も『遊びじゃないんだ! 戦争だって自覚しろ』と頭と胃を痛めているらしい。でも、一部がそうなっちゃったのって、政府がやたらと娯楽色を出したイベント連発した影響だと思うよ。自業自得。本当に敵が絡んでた特別任務なんて、2ヶ月前の聚楽第潜入調査と一昨年10月の初回江戸城潜入調査だけだし、他の任務は定期化してる政府が用意した擬似戦場だもんね。
と、まぁ、そんな感じでもっくん育てながら鍛刀してたんだけど、一向に来ません! 政府の指定したALL800のレシピで富士札使ったら4時間でみか爺! 富士札効きすぎ!
やっと3時間20分だと思ったら、ほぼ恒例のいち兄! 一期がまたOTZしてそのままごめん寝して光忠に謝ってた。光忠は苦笑してたな。うん、みっちゃん主に左文字に同じことしまくってたもんね。
そんな一期に見慣れている弟たちは『ホント、いち兄もあるじさんのこと大好きだねー』なんて笑ってた。それを聞いた包ちゃんが『いち兄、主と結婚するのか? じゃあ主は人妻になるの!?』と目を輝かせて、一期と鳴君とばみ君と薬研とまぁ君に教育的指導としてプロレス技掛けられてた。私が格闘技とか観ないからどんな技なのかは判らないけど。っていうか、その情報と技術は何処で仕入れたんだ。まぁ、個々人でパソコンやタブレット端末持ってるし、居間と刀種部屋にはTVもあるし、それで見たんだろうけど。
だけどね、包ちゃん、うちの本丸で私と刀剣男士の結婚はないからね? というか、殆どの本丸でもないから。禁止されているわけでもないけど、刀剣男士に性欲がないことも恋愛機能がないことも護歴神社と神祇局から正式通達出てるし、審神者も刀剣男士もそれは判ってるんだよね。
まぁ、刀剣男士との結婚も『生涯傍にいて守るため』『生涯の縁を強めるため』という理由で選ぶケースもないわけじゃない。一部、そういう理由で婚姻関係を結んでいるケースもあるらしいけど。尤もそれは建前で、結婚相手が初期刀や初鍛刀ではなく三日月宗近・一期一振・鶴丸国永と偏っている時点で、政府は『あ、恋愛脳審神者』と判断してるっぽくて、要注意本丸に登録されてしまうらしい。
刀剣男士としては『親子は一世、夫婦は二世、主従は三世』という概念?を持ってる。親子の縁は今世のみ、夫婦ならば今世と来世、主従は来々世まで繋がる縁ということだ。つまり、刀剣男士は夫婦よりも現在の主従(政府の契約は主従関係じゃないんだけど)のほうが縁が強いということを知っている。だから態々弱める選択をするはずないし、仮に承知の上で選択しているなら寧ろ刀剣男士側は縁を少しでも弱めたいと思ってるってことになる。つまり、その審神者は問題ありってことだ。
って、すげぇ話逸れた。
ALL800だと太刀と打刀が出まくって、中でもレア打刀と言われるメンバーが出まくってたから、あの同田貫ですら『あー、わりぃ』なんて言うほどだった。どうやら、打刀勢の中では歌仙と同田貫が私の霊力と相性がいいのか、かなりの頻度で鍛刀されるんだよね。あれ、これって霊力というより地元の縁? 小夜左文字も結構出るし。尤も蛍丸はレア大太刀ってことでそんなに頻度高くないけどね!
そうそう、蛍君といえば、極実装時期はまだ判ってないけど、シルエットは出た。子供サイズだった! 可愛い蛍君のままなことが嬉しかったけど、本刃は複雑そうだった。大きくなりたいって気持ちもあったんだろうな。
そういえば、極の修行について、気になる話を聞いた。元々各本丸の刀剣が同じ時期の同じ場所に修行に出ることについて時間軸がどうなっているのかという話はあったんだよね。厚藤四郎とか乱藤四郎みたいに時期不明の刀剣男士はともかく、明確に日付が判る薬研藤四郎とか和泉守兼定、長曽祢虎徹、時期がほぼ特定できる今剣、前田藤四郎、五虎退、愛染国俊、物吉貞宗、浦島虎徹、大和守安定、歌仙兼定、太郎太刀もいるわけだし。それは各本丸が同じ時に同じ戦場に出陣しても鉢合わせないのと同じで各本丸ごとに微妙に世界線が違うのかなという予測も出来た。
ただ、最近実しやかに噂されているのが、実は修行に出たのは本霊で、刀剣男士は修行に出たと見せかけて政府本部の何処かで眠り、その間に本霊から修行の記憶をインストールされているのではないか、というもの。手紙も内容が一言一句全く同じだと確認されている。個々刃が修行に出ているのであれば、個体差もあって全く同じ行動は取らないだろうし、手紙の内容だって違うはずだと。初期刀とそうでない同位体であれば、本丸運営を気遣う内容が入っているいないの違いもありそうなもの、というのだ。でも、本霊の記憶をインストールされ、手紙も本霊が書いているのであれば、全く同じ行動と同じ文章の手紙も納得がいくというのだ。
その話を聞いたとき、成程と思うと同時になんか怖かった。だから、デマだと思いたい。楽しそうに修行の話を聞かせてくれる刀剣男士の表情を見ているから、それが本刃が体験したことではないとは思いたくない。
結局、鍛刀キャンペーンは惨敗した。
なので、パン祭では大般若長光を選択する。これは刀剣男士たちも納得していた。叔父にあたる光忠以外はね。
「え? いいの? うぐ爺は大包平さんを待ってるし、青江君だって数珠丸さんに会いたいよね? ずっと日本号難民だし、貞ちゃんやもっくんだってお兄さんに会いたいでしょう?」
うちの本丸にいないのは大典太光世・ソハヤノツルキ・数珠丸恒次・大包平・亀甲貞宗・大般若長光・小竜景光・日本号の8振だけ。140番以降を含めれば増えるけど、まだ当分は140番以降を呼ぶ気はないから。
「いいんだよ、数珠丸は鍛刀でもドロップでも入手可能だからね」
「きっこー兄ちゃんも同じく! それに俺も物吉兄ちゃんもまだ来たばっかりだからな!まだまだ待てるぜー」
「そうですね。あの兄なので、当分まだまだまだまだ来なくていいですよ」
「大包平は鍛刀は出来んが、拾えるからな。そのうちひょっこりとやってくるさ」
関係者はそう言って光忠に気にするなと笑う。というか、もっくん、中々酷いこと言ってない? まだの数が多い気がするんだけど。
「御上の通達で今月下旬には日本号が配布されるんだ。だから、日本号をパン祭で交換する必要はないね」
初期刀として政府通達を見ていた歌仙が更に付け加える。
政府は審神者政策の広報の一環として、色々なことをやっている。刀剣男士をモチーフにしたアクセサリーや小物、バッグや着物を販売したり、アニメやミュージカルを製作したり。そして今回、なんと映画を作ったのだ。現世の俳優を使っての映画なんだけど、実は審神者には余り評判は良くない。うん、人間に刀剣男士役をやらせるのはねぇ? いくら人間としてはカッコいい人たちを集めたとはいえ、実物を知っている身からすれば『喧嘩売ってんのか、ああん?』という感じだ。人間のどんなイケメンであっても流石に神様である刀剣男士の美しさには及ばないからね。特に天下五剣一美しい三日月宗近とか初期刀組で一番モンペの多い山姥切国広とか不満を漏らしている審神者は少なくない。
初期刀組にはモンペ多いよねー。私も歌仙モンペな自覚ある! 映画に出てないけど、それはそれで『ああん? 歌仙じゃ役不足とでもいうのかよ!』って不満。アニメもミュージカルも初期刀組でメイン扱いされるのってほぼ山姥切国広で偶に加州清光。時々陸奥守吉行。歌仙兼定と蜂須賀虎徹は殆どスルーされてる。出演したらしたで作画がどうとかビジュアルがどうとか文句言う気もするけど。当の本刃は呆れて『出ても出なくても文句を言うのなら、出ないほうがマシなんじゃないかい?』って言ってた。うん、ダメージ少ない出ないほうがマシかな? でも、我が初期刀が軽んじられているみたいで不満なんだよ! って言ったら、嬉しそうに頭撫でられた。
映画化が決まったとき、実は面白いこと大好きな鶴丸国永の本霊は『俺が出てやろう!』なんてことを仰ったらしい。それを聞いたうちの鶴爺は『俺が言いそうなことだ』と苦笑してた。流石に神様が映画に出るのは問題ありまくりだろうということで護歴神社と神祇局が必死に止め、親戚筋の三条刀と伊達家所縁の刀がお説教したそうだ。石切丸と燭台切光忠が正座させた鶴丸国永を説教してる姿が目に浮かぶ。うちでもたまーに見る光景だな。うちはびっくり爺じゃないからお説教頻度は2ヶ月に1回くらいだけど。
そんなことがあったからなのか、映画に鶴丸国永は出ないそうだ。映画に出てくる刀剣男士は8振で三日月宗近・骨喰藤四郎・薬研藤四郎・鶯丸・山姥切国広・へし切長谷部・不動行光・日本号らしい。本能寺の変が舞台なんだから、宗三左文字も入りそうなものなのになぁ。織田組の薬研・長谷部・不動が出るのは判るし、秀吉との絡みで三日月と骨喰かな。まぁ、三日月は刀剣男士政策(審神者と刀剣男士の諸々の政策は『刀剣乱舞』政策というらしい。広報活動に力を入れたときにこの名称がついたそうだ)の広報担当として前面に出てるから納得。でも鶯丸・山姥切・日本号はなんでこの3振なんだろうという気がする。山姥切は初期刀組の代表かもしれないけど、だったら歌仙兼定のほうが織田家とは縁があるんじゃないかなぁ。細川忠興は信長嫡男の信忠に仕えていたわけだし、明智光秀の娘婿だし、それなりに関係深いと思うんだけど。刀剣男士の選定基準は判んないし、今更言っても仕方ないけど、どうしてって思ってしまう。あ、本霊が出演拒否った可能性もあるのか。歌仙兼定とか蜂須賀虎徹とか拘り強そう。そう考えれば、宗三左文字も本霊が出演NG出したのかもしれない。
で、その映画公開を記念して、何故か出演刀剣の依代を配布することになったそうだ。なんで? まぁ、難民化してた日本号が手に入るならいいけど! これでやっと三名槍が揃うし、主要任務コンプリート出来る。この情報にとんさんも杵君も博多と厚、小夜ちゃん、そして隠してるけど長谷部も嬉しそうだ。
とまぁ、そういう事情があって、日本号も入手出来ることが確定している。なので、鍛刀キャンペーンやこういったイベントがなければ入手不可能な大般若長光を交換するってことで刀剣男士と私の意見は一致しているわけだ。ただ光忠は身内なだけに、他の刀剣への遠慮があったんだと思う。本当に光忠は気を遣うからなぁ。
「ってことで、大般若長光ー!」
受け取り箱から大般若長光の依代を取り出す。実は既に交換していたのだ。悪いな、光忠!
既に夏季休暇に入っていた我が本丸。乱ちゃん・五虎ちゃん・ひぃ君・秋君・切国・宗三を連れて一旦実家帰省し2泊3日。3日目に去年の夏と同じく丙之五さんに東京駅まで来てもらって刀剣男士の交代。去年第1部隊で帰省同行していた国君を除く幕末組と青江がやって来て、そのまま軽井沢旅行。2泊3日の旅行を終えて、本丸へと戻ってきたのが今日で、既に交換を終えていることを教えていなかったから光忠はこんな話をしていたというわけだ。交換は持って行ってたタブレット端末から出来たからね、帰省中に引換所オープンしたから、即交換しておいた。
「お初にお目にかかる。俺は大般若長光。長船派の刀工、長光の代表作さ」
ふぉぉぉぉぉ!! いい声!! 流石三木眞一郎激似ヴォイス!!
中学のころから筋金入りの声優ファンだった。見るアニメ、吹替映画、プレイするゲームは内容はもとより出演声優で選んでいたほど。興味ないジャンルのアニメや映画やゲームでも好きな声優が出ていれば見て(遊んで)いたからね。当時はドラマCDなんかも多くて、それも知らない作品であっても好き声優さんが出ていれば買ってた。一番好きな声優だった人に関しては溜息だけで彼だと判っていたくらいだ。
そんな中でも三木眞一郎氏はベスト10には入る好き声優さんだった。残念ながらベスト5入りは無理だけど。上位3位は不動で塩沢兼人氏・関俊彦氏・池田秀一氏だ。そのあとに井上和彦氏・堀内賢雄氏・速水奨氏と続き、ここまではほぼ不動。その後鈴置洋孝氏・子安武人氏・森川智之氏・田中秀幸氏・森功至氏・置鮎龍太郎氏、そして三木眞一郎氏がその時々によって順位を変えつつ続く感じだ。私がこちらに来るころには既に主役級を演じることは少なくなった方たちだが、上位五5にどれだけつぎ込んだか判らないな。
なので、三木眞一郎氏そっくりな声の大般若長光に悶えてしまう。
「……主?」
雅じゃない! とお怒りの歌仙だってスルーさ! でも、いかん、このままでは主としての威厳が!!
「千さん、カモン!」
「何でショウ主?」
「『俺様の美技に酔いな』って言って!」
「huhuhuhu。よいでデスよ。俺様の美技に酔いな!」
「ふぉぉぉぉぉ!」
叫んだ瞬間、後頭部に歌仙のハリセンが炸裂した。勿論手加減はしてくれたんだろうけど。してなきゃ首もげてるはずだ。
「ああ、あるじさんの観てたアニメの貴様何様跡部様」
納得したように言うのはアニメ鑑賞もゲームも付き合ってくれることの多い乱ちゃんだった。
「そういえば、千さんの声、似てますね」
短刀ちゃんたちが頷く。そう、似てるでしょ? 諏訪部順一ボイスに!
「あ! 僕判った! 大般若さんの声、天の青龍に似てるんだ!」
そう言ったのは何故か乙女ゲームプレイ率の高いヤス君で、同じくプレイ率の高いキヨと頷きあってる。
「いい加減にしないか、主! 顕現したばかりの大般若長光が戸惑っているだろう!」
初期刀の当然のお叱りに姿勢を正す。すると、大般若はお腹を抱えて大笑いしていた。
「ハハハッ。あんた、面白いなぁ」
笑いながら大般若は気を悪くしたふうでもなく戸惑ってもいなかった。流石長船太刀。この包容力と許容力半端ねぇ。
「俺にリクエストはないのかい?」
「喋ってくれてるだけで十分」
頼久にも頼忠にも特に決め台詞はないし、どちらかと言えば口数の少ないキャラクターだった。プレイしまくっているのは1と2だけだから、3以降は判らん。3はねー歴史改変しまくるゲームだから、流石に本丸でプレイする気にはならないんだよね。
「いきなり変な審神者でごめんね。改めてこの本丸の主である審神者の右近です。もう、めっちゃ待ってた! 江戸城でも鍛刀キャンペーンでもゲットできなかったからね! よろしく頼むよ」
「待たせちまった分は頑張らないとなぁ」
屈託なく笑む大般若はカッコいい。
「光忠、にゃーさんの案内と部屋決めお願いね」
「判ったよ。長光、こっちだ」
光忠ににゃーさんの案内を頼む。お、珍しい。年上刀剣には『さん』、年下刀剣には『君orちゃん』付けする光忠が呼び捨て。やっぱり同派だからかな。
「にゃーさんってのは俺のことかい?」
可笑しそうに笑いながらにゃーさんが尋ねる。
「審神者の中での愛称だね。嫌なら他に考えるけど」
「いや、にゃーさんでいいさ。愛嬌があっていいじゃないか」
おお、懐広いな、にゃーさん。流石長船太刀!
「長光がいいならいいんだけどね。主、序でに僕まで変なあだ名で呼ばないでよ?」
カッコいいことに拘る祖の太刀としては甥っ子認定のにゃーさんの呼称には物申したいところなんだろうけど、私が聞かないのは判ってるらしい。流石に初太刀。大丈夫、ピカチュー呼びもママン呼びも心の中だけにしておくから!
そうして、光忠がにゃーさんを呼んで、そのまま何かを話し始める。
「うわぁ、あそこだけ歌舞伎町」
「大将、気持ちはめっちゃ判るが、そろそろやめねぇと歌仙の旦那の血管切れるぜ」
思わず呟いた言葉に薬研が同意しつつ窘めてくれる。うん、随分今日は雅や風流とは程遠い言動しまくったからね。歌仙の心の平穏のためにもそろそろ通常に戻します。
「あ、保養所の予約変更しないと。1名追加だね」
「主、僭越ながらこの長谷部、既に変更連絡をいたしました」
極まってから主厨に磨きのかかった長谷部がシュタッと目の前に現れて報告してくる。うん、素早いね、色々。
「ありがとう、流石長谷部、素早いね」
「お褒めに預かり恐悦に存じます」
キラキラお目々の長谷部。だから君は忠犬ハセ公なんて言われるんだよ。ほら、宗三とゆきちゃんが揶揄う気満々で見てるから。
これで本丸に集った刀剣男士は57振。随分揃ったなぁ。まぁ、実装数は76振だから、まだ20振近くいないんだけどね。そこはのんびり行きましょう。
ああ、そろそろ、140番以降をどうするか話し合う時期かなぁ。
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