刀剣乱舞

20世紀乙女【本編】21~30

Episode_21 戦力拡充意図してないのに拡充した件

審神者業界でまことしやかに噂されるもの。そして、日々それは確かにあるのだと実感するもの。それは……

物欲センサー!!!!!!

もうね、泣きたいよね。審神者になって早7ヶ月以上が過ぎて、2日目から狙ってる岩融と3日目から狙ってる江雪左文字がまだ来てくれないんだもんね……。

蛍君が来てくれた115日目。その翌日からこの2振を狙って鍛刀して既に100日が経過してるのに、一向に彼らは来てくれない。因みにもう1振は検非違使ドロップから鍛刀可能へと変更になった長曽祢虎徹を狙って鍛刀してる。

そう、つい最近のことなのだけれど、虎徹兄弟は鍛刀が可能になった。虎徹兄弟の本霊は検非違使に捕らわれてたらしいんだけど、なんと自力で脱出したそうだ。すげぇな、虎徹兄弟。

何でも政府側に属する分霊の数が増えたことによって、本霊の力が増し、政府管轄の刀剣の本霊の神域(護歴神社)へと転移することが可能となったそうだ。それで鍛刀が可能になったのだとか。

ということで蜂須賀は検非違使討伐部隊から抜けた。なんだかんだといってやっぱりお兄ちゃん救出のために検非違使対策部隊にいたんだね、ゴールドセ○ント!

なお、虎徹兄弟が囚われていた場所の特定は出来なかったそうだ。虎徹兄弟が囚われていたのは幾重にも結界の張られたコンクリートの部屋の中。そこに訪ねてくる者もおらず、流石の神様でも位置特定は出来なかったとか。護歴神社へも一瞬での転移だったから、距離とかも不明だったそうだ。

虎徹兄弟奪還(というか自力脱出)に沸いたのも束の間、検非違使は直ぐに今度は政府が新規契約した源氏兄弟を拉致ったらしい。このことから政府内部に内通者がいるんじゃないかと秘密裏に大掛かりな捜査が行われている。丙之五氏がそう言ってた。そういうこと一介の審神者に言っていいのか!? と思ったけど、政府上層部の意向である程度の審神者には知らせていいことになってるらしい。

っていうか、内通者捜索は歴史保全省でも極秘事項らしくてそれを知ってる丙之五氏は実はかなりのエリート官僚だったみたい。んで、このことを知らされてる審神者は戦績上位の優良審神者なんだとか。知らんかった。うち、優良本丸だったんだ。そういえば、先月分からお給料がほぼ倍額に増えてたけど、そうか、半年の査定で優良本丸って結果が出たからか。

うちが優良本丸認定されたことに、刀剣男士たちは『当然!』とドヤ顔しつつ誉桜撒き散らしてた。うん、皆の頑張りが認められて私も嬉しいよ!

なお、検非違使に捕らわれた源氏兄弟。以前、政府の演習マップで報酬としての先行配布があったんだけど、ぶっちゃけ興味なかったんでうちの本丸は参加してなかった。

実は私が審神者になってから7ヶ月の間に7振の刀剣が新規契約をし刀剣男士となっている。日本号、物吉貞宗、髭切、膝丸、後藤藤四郎(うちにもいる)、不動行光、数珠丸恒次。というわけで今現在刀剣男士は53振いるのだ。でも、うちはそんな新規刀剣男士をお迎えするのには積極的ではない。

そもそも、既存の刀剣男士をお迎えするのにも一部を除いて消極的だしね。最近お迎えしたじろちゃんで既に39振の刀剣男士がいて、更に錬度上げの順番待ちは長くなってるし。まぁ、カンストしてないのは残り11振なんだけどね。伏さん(95)、獅子君(94)、ずお(92)、浦君(91)、石さん(64)、とんさん(57)、蛍君(53)、後藤(51)、杵君(52)、みか爺(52)、じろちゃん(48)といった具合。でも、伏さんと獅子君は本丸稼動5日目には来てくれてたのにかなり待たせてたからなぁ……。ホント申し訳ない。

だから、積極的に迎えるのは家族が待ってる刀剣だけ。ってことで、岩融・江雪左文字・長曽祢虎徹が最優先で次点が明石国行と小狐丸。熱望している博多藤四郎は現時点ではどうやっても招けないから、次の大阪城地下出現まで待つしかない。

とかなんとか思ってたら! またやってきましたよ、大阪城地下ダンジョンイベント! いや、イベントではないのか。

政府からの緊急通達がこんのすけを通じて齎されて。次の金曜日から2週間、大阪城地下ダンジョンが攻略可能になるという。前回は5日間という短期間だったけど、今回は2週間! よし、前回よりも全員錬度上がってるし、赤疲労(私が)上等でやってやろうじゃないか!

しかも、大阪城地下は粟田口を捕獲してるのか、今度は50階に信濃藤四郎がいることが判明しているという。更に、どうやら大阪城地下ダンジョンが出現している間は博多藤四郎の本霊が現世に近い場所にいるのか、この期間は鍛刀できそうだという。うん、確かに前回の大阪城地下出現のときもそうだったね。

「今度こそ、博多藤四郎を迎えるぞ!!」

張り切る私に待ったをかけたのは、一番彼を待ち望んでいるであろう一期一振をはじめとした粟田口の祐筆班だった。

「さにちゃんの情報ですと、博多のれしぴは短刀にしては資源を多く要します。博多を呼ぶためだけに資源を浪費するわけには参りません。錬度かんすとが増えた今、軽傷であっても資源の必要量は増えておりますからな」

「だから、大将。鍛刀は1日に日課任務分の3回までだ」

「然様でございますよぅ、主どの!」

「依頼札、歌仙に預けた」

「無理のない範囲で鍛刀いたしましょう、主君!」

上から一期、薬研、きぃちゃん、鳴君、まぁ君。鍛刀に必要な依頼札を歌仙に預けることで私が必要以上の鍛刀を出来ないようにしてるあたり、徹底してるというかなんというか。使い道が然程なくて貯まりまくってるお給料をつぎ込んで、万屋で依頼札と資源を買い捲るつもりでいたんだけど、それもストップをかけられた。でもまぁ、私が鍛刀で博多呼べなくて落ち込む→粟田口が気に病む→申し訳なくて更に鍛刀で博多を狙って撃沈→粟田口が更に気に病むって負のスパイラルに陥るの目に見えてるし……ここは大人しく従っておこう。別に一期と薬研のお小言が怖いわけじゃないよ!

例によって信濃がいる50階と博多がいる100階は粟田口パーティで攻略することにして、それ以外は中々錬度上げの順番が回ってきていない蛍君・後藤・杵君・みか爺・じろちゃんを中心に編成することにした。

実は、後藤が若干不満を漏らしていたらしい。中々出陣できないって。しかも短刀で唯一カンストしてないってのも気になってたっぽくて。それを短刀の兄貴分の薬研と厚が窘めてくれてたらしいんだけど……。そこでやっと気付いたんだよね! 大ポカしてたよ、私!!

「薬研、私今気付いた。後藤、本丸の運営方針、知らなくない?」

「は? ちゃんと説明してるだろ、顕現した日……。…………してねぇな……」

「だよね?」

「ああ、あのころは俺っちも含め、皆異常状態だったからな。すっかり忘れてたぜ」

そう、後藤がやってきたのは当然前回の大阪城地下出現期。後藤は顕現するや否や粟田口パーティの一人として、地下に潜ってた。あのときは1日に16時間出陣してたから、帰還したら皆バタンキュー状態。私も手入れをしたらフラフラで、大抵歌仙か同田貫に抱っこ(後者には俵担ぎ)されて寝室に放り込まれてた。そして、大阪城地下が閉ざされるころにはすっかり後藤がド新人だということを忘れてた。しまったー。蛍君にも後藤より後に来た杵君・みか爺・じろちゃんにもちゃんと説明してたのに、後藤にだけ、忘れてたよ!! そりゃ後藤も不満に思うよ!!

なので、大阪城地下攻略が始まる前に、後藤には遅くなったことを詫びた上で本丸の育成方針を説明した。そしたら、流石に短刀兄貴の一角、直ぐに納得してくれた。

「初めっから言ってくれてりゃ、俺も不満なんか持たなかったのに。でも、状況的に仕方ないよなぁ」

顕現直後にあの地獄の行軍を体験した後藤は何処か遠い目をして、苦笑して許してくれた。寧ろ、まぁ君やひぃ君、一期といった真面目組が私に土下座する勢いだったほうが困惑。自分たちが兄弟としてちゃんと説明していなかったのが悪かったんだと。尤もそれは『済んだことをあれこれ言っても仕方ないだろ!』と当の後藤が明るく言ってくれたことで謝罪合戦にはならずに済んだ。どうせ、また博多ゲット出来ずで異常テンションの謝罪合戦が二週間後には開催されるんだろうから、ここでの謝罪合戦は回避したいよね。

 

 

 

 

 

そんなこんなでやって来た、我が本丸にとって2回目の大阪城地下ダンジョン期間。前回の反省を生かして、今回は100階到達までは6時から22時の出陣、100階到達後は通常業務の時間帯に戻して、阿津賀志山出陣を大阪城に当てることにした。つまり、今回は検非違使日課もやるってことね。

実は大阪城とかの特殊戦場が開放されると、途端に検非違使討伐数が激減するのだという。然もありなん。特殊戦場は検非違使が出ないし、大抵の審神者は通常から検非違使は避ける。うちだって任務以上の検非違使討伐はしないしねー。

政府としては検非違使の情報欲しいし、源氏兄弟の本霊を取り戻すためにもどんどん検非違使を倒して政府側の分霊数を増やして欲しいという思惑がある。よって、『出来得る限り検非違使日課任務を達成するように』という特別通達も来てたりする。

ってなわけで、確実に入手できる信濃君がいる50階まではハイペースで進め、そのまま博多がいるだろう100階までは粟田口&長谷部の心情も鑑みやはりハイペース。100階に到達したら後は運に任せる部分も大きいし、一応最終日までに約80戦は出来る計算だから、それでいいかなーと通常出陣の時間に戻す。粟田口が待ってるとはいえ、前回の私の異常状態は刀剣たちにはある種のトラウマらしくて、睡眠時間の確保と休日はきちんと取るように言われた。今回は2週間ってことで途中で土日挟むからね。まぁ、それでも土曜日は出陣して完全休日は日曜だけだけど。

因みに、その間の家事は光忠と国君、同田貫が中心になって回し(あれ、いつもと変わらないか)、書類仕事に関しては歌仙・蜂須賀をはじめとした初期刀ファイブが担当することになった。私は大阪城に集中し、出陣終わったらひたすら休養に勤めろということらしい。

その甲斐あって、大阪城地下出現2日目の午後半ばには無事信濃藤四郎を救出できた。

「俺、信濃藤四郎。藤四郎兄弟の中でも秘蔵っ子だよ」

そう言って現れたしぃ君はちょっとばかり甘えん坊な子だった。余り戦場には出ず大事大事に城の奥深くにいたのは今ちゃんや薬研以外の短刀にはほぼ共通なんだけど、なんだか、しぃ君はその意識が強いみたいで。身長的にはお兄ちゃんの部類なんだけど、他の『大将』組に比べると幼い感じ。なので、一応6年生組ではあるんだけど、四つ子認定ではなく、薬研・厚・後藤が三つ子、しぃ君はその弟ということにした。

んで、当然のように即出陣。但し、今回は粟田口部隊の出陣は50階と100階限定なんで、未カンスト部隊に放り込んだんだけどね。まぁ、お兄ちゃんのずおがいるから大丈夫でしょってことで。

しかし……

「ねえ、懐入っていい?」

そう言われたときは本丸に激震が走ったよね……。本人は本体の短刀を、ってつもりだったんだろうけど、全員が全員、人型を想像したらしくて。

「おい、しぃ! そりゃあ聞き捨てならねぇなぁ?」

「来たばかりの新参の癖にそりゃあ図々しいだろ」

「ちょっと、あるじさんが女人にょにんだって判ってる!?」

「いくら兄でもこればかりは許せませんね」

私が何かを言うよりも早く、初日顕現の粟田口短刀がしぃ君に詰め寄ってた。短刀って守り刀だから、皆主の懐に入りたいってのがあるらしくて。でも今は人型だし、他にも大勢の短刀がいるから実は言いたいのを我慢してたみたい。そこにストレートにしぃ君が言ったもんだから『俺たちでも願ってねぇのに、生意気だぞ』となったそうだ。詰め寄ったのは4振だけだったけど、他の短刀たちも非難するようにしぃ君みてたもんなぁ。普段は明るい愛君のジト目とか結構怖かった。

で、短刀たちが怒ったから、普段なら真っ先に怒る歌仙や蜂須賀、文句を言うキヨも押されたのか黙ってた。

薬研たちが怒ったおかげで懐にはいる云々は有耶無耶になったけど、希望があれば本体を懐に入れたり、腰に差したり、腰に佩いたりしてもいいかなとは思った。……槍と大太刀はどうしよう。

大阪城地下出現4日目(日曜挟んでるから正確には5日目)には最終戦で100階到達。まぁ、当然のように博多藤四郎はドロップしませんでしたけどね! で、その後はひたすら100階攻略。勿論、当初決めたように1時間乃至2時間は検非違使任務もやった。

中々現れない博多にどんどん本丸の雰囲気は暗くなっていく。毎日の日課分3振の鍛刀も博多レシピの100/460/100/460。近侍は一期か長谷部。前回は脇差ツインズも加わってたけど、元々脇差が出やすい配合ということもあって鯰尾藤四郎・骨喰藤四郎のどちらかが来ることが多くて落ち込んでたから、今回は外した。

そうして、残り2日となった、地下出現13日目。

「……にじゅうごふん……」

「にじゅうごふんですな……」

資源を妖精さんに渡し、表示された時間を見て、私と一期は思わず手を握り合った。

「粟田口、集合ーーーーーー!!!!!!」

気付けば、叫んでた。まぁ、関係者が鍛刀されたときに私が叫ぶのはもはやお約束になってることもあって、即座に粟田口全13振が揃った。序でに黒田組でもある長谷部も。

そして、普段この時間なら決して使わない手伝い札を妖精さんに渡す。

「俺の名前は博多藤四郎! 博多で見出された博多の藤四郎たい。短刀ばってん、男らしか!」

現れたのは、私には懐かしい響きの方言男士。五虎ちゃと見た目はそう変わらない歳に見えるものの、何処か確り者というかちゃっかり者といった雰囲気をまとった、(うちにとって)粟田口最後の短刀。

「なんね、兄弟たち全員揃っとるとね! あ、長谷部もおるとか!」

じっと自分を凝視する粟田口13振+長谷部に博多はニカっと笑う。

取り敢えず、これで大阪城に行く必要はなくなった。ってことで、検非違使部隊を出陣させてる間に部隊再編しようと歌仙と話し合い、その間に粟田口を3パーティに分けて(当然どのパーティにも博多としぃ君が入る)遠征に行ってもらうことにした。いつもの家族揃ったから30分遠征だ。

が……この日の新規刀剣出現はこれでは終わらなかった。日課の鍛刀はあと1振分あったから、岩融狙いで資源を投入。近侍は『構ってくれねば、そろそろ爺も拗ねるぞ』という何処か可愛いみか爺のおねだりによって、滅多にないみか爺。そして、表示された時間は4:00:00。

「むぅ……1時間足りぬ。俺か、小狐丸か……。済まぬ、今」

天下五剣が今ちゃんに土下座してました。流石にレア度極がそう簡単に来るとは思えない(既に2振目いるし)し、小狐丸かなーなんて思いながら、今回は手伝い札は使わず、放置。

検非違使部隊(愛君、小夜ちゃん、キヨ、ヤス君、切国、宗三)を出陣させて、本日の祐筆歌仙と近侍みか爺とともに出陣部隊の編成をしていたら。

『主~なんか、太刀げっとしたよー』

隊長のキヨからの通信。検非違使1回目でいつもとは違うドロップがあったとのこと。検非違使は一部審神者の間ではショタコン疑惑があるくらいに、短刀のドロップ率が高い。その検非違使から、太刀。うん、今の検非違使が持ってる太刀は恐らく2振。……マジか!?

取り敢えず、宗三が中傷になってたこともあって一旦帰還させる。

「源氏の重宝、膝丸だ。ここに兄者は来ていないか?」

キヨから太刀を受け取り、顕現させる。するとあれ、デジャヴ。えーと、前回は名乗りより前に『兼さんいますか』だったな。

「あー、兄者はまだだね」

そう苦笑混じりに告げれば、がっかりしたように項垂れる。粟田口以外は顕現のときに兄弟のことを言ったりしないからちょっと新鮮。国君なんて兄弟そっちのけで兼さんだったもんねー(実はそれゆえ切国が『どうせ写しなんて……』とかネガってた)。

あー、でも、来ちゃったかぁ、源氏兄弟(弟)。正直、あんまり来て欲しくなかったんだよね。源氏弟は歴代の主の中に義経がいる。そう、膝丸は今ちゃんと同じ義経の刀剣なのだ。だけど、今ちゃんが義経の守り刀だというのは後世の創作の可能性が高いという。義経がいた鞍馬寺に奉納された短刀だから、そういう創作が為されたんじゃないかな。一方の膝丸は現存している刀であり、代々源氏総領家に伝わったのは間違いないらしい。もし、膝丸が『義経の守り刀は今剣ではない』なんて言ったりしたら……今ちゃんのアイデンティティは根底から崩されてしまう。

「兄者はいないけど、同じ義経公の刀だった今剣はいるよ」

だから、会わせる前に膝丸が今ちゃんをどう認識しているか確認。

「義経公……いつの主だ。よく覚えていないな」

おい、そこからか!!

「それよりも兄者! 兄者は何処だ」

ダメだ、このブラコン。ま、今ちゃんにとっては良いことかな。今ちゃんには『昔のこと過ぎて、義経公のことはよく覚えてないんだって』と告げればいいし。

「あー、兄者は検非違使に囚われてるからねー。そのうち、俺ら検非違使対策部隊が回収してくるよ」

嘗ての主よりも兄を重視する膝丸に、嘗ての主大好きなキヨは若干退いてる。キヨもヤス君も沖田君大好きだもんなー。

しかし、まさか、こんなに早く膝丸来るとは思わなかったなぁ。髭切来ちゃうと余計まずいよなー。髭切の主の中には義経主従にとっちゃ仇ともいえる異母兄・頼朝いるもんなぁ。対策、考えておいたほうがいいかな。流石に今まで刀剣同士で仇なんてのはなかったから……。(よかった、明智光秀の刀実装されてなくて)

因みに、4時間は小狐丸でした。みか爺がさめざめと泣きながら『そなたではない。そなたを望んではおらぬ』と小狐丸に詰め寄り、『空気を読もうね? 野生なんだからそれくらい出来るだろう?』と目だけは笑っていない笑顔で石さんが関節技をお見舞いしてた。兄弟から歓迎されずに落ち込む小狐丸は今ちゃんに慰められてました、まる。

 

 

 

 

 

一気に3振増えたから、例によって1時間育成しようかと思ってたんだけど、彼らが顕現した翌々日から、政府主催の戦力拡充計画が行われることが判ったんで、彼らにはそこで錬度上げをしてもらうことにした。戦力拡充計画の戦場は錬度30未満、錬度60未満、制限なしと分かれてるからね。

この戦力拡充計画は『拡充』というだけあって、普段入手できない刀剣や入手しづらい刀剣のドロップ率が高くなってる。うん、是非この機会に岩融と江雪、明石に来て欲しいもんだ。あとは、刀種的に数の少ない、脇差の物吉貞宗と槍の日本号が来てくれたら、戦力的にいい感じになるかな。

因みに他にこの戦場で入手できるのが、通常は鍛刀でもドロップでも入手できない太刀の数珠丸恒次と短刀の不動行光。短刀も太刀もそれなりの数が本丸にいるから、別に入手できなくてもいいやーと思ってた。

けど、数珠丸恒次は青江派。そう、にっかり青江の親戚なんだよね。これまで同派や同じ主に仕えた者のいない、青江(一応、たろさんが末期青江派の刀剣だから親戚と言えなくもないけど、たろさんはじろちゃんとの兄弟関係のほうが強い)。うーん、これは親族呼ぶべきかな。あ、青江は別にぼっちってわけじゃない。霊刀である青江は妖怪斬りの切国や膝丸、御神刀かつ鬼斬り逸話のある石さんと仲がいい。3振とも割と天然な部分がある刀剣だから、青江の無駄に意味深なセリフもスルーしてるし。

「青江、お兄ちゃんに来て欲しい?」

「ああ、数珠丸恒次かい? 彼は兄ではないねぇ。親戚って感じかな」

兄弟認識じゃないのか。青江は穏やかにそう言った。

「主が欲しいと言うならそれでいいけど、僕は別にどちらでもいいかな。太刀なら彼よりも左文字が待ってる江雪左文字と来が待ってる明石国行が先でいいと思うよ。あと、兄者兄者五月蝿い新人いるしねぇ。そもそも主が『欲しい』って思ったら来てくれないよね?」

仰るとおりで何も言えません。小夜ちゃんも愛君も蛍君も長いこと待ってるし、まだ来たばかりの膝丸は五月蝿いし。更に物欲センサー仕事しまくってるし。

しかも、数珠丸恒次は天下五剣で2振目のレア度極。簡単には入手できないよねー。

因みに天下五剣仲間ってことでみか爺にも聞いてみた。

「ふむ。同じ天下五剣とはいえ、面識はないからなぁ。俺は会うたことのない数珠丸よりも岩融をこそ望むぞ。岩融狙いで来たのは小狐丸であったし……今に申し訳なくてな」

おじいちゃんが気に病むことじゃありませんーーー! 全ては私の鍛刀運の為せる技なのです。罪は私にあるのです……。

2人して落ち込んでたら、ずっと待たれていたという経緯のある博多が『主さんも爺ちゃんも落ち込まんでよか! 必ず来っけん、心配せんちゃよかよ!』と慰めてくれた。尤もみか爺は『くっけん? 屈剣とはなんだ?』とか言ってたけど。

 

 

 

 

 

まぁ、そんなこんなで始まった、戦力拡充計画。一旦マップを全開放して、ラストステージのボス倒したら新人育成をしようと決めて臨みましたよ。錬度30未満のマップは新人3人に行ってもらい、その次の夜戦マップは非粟田口短刀&脇差メイン。粟田口は大阪城でハード出陣してたからねー。

このマップは物吉貞宗がボスでドロップ出来ると聞いてたから、それを狙ってた。まぁ、私の物欲センサーで無理だろうなーって思ってたんだよね。そしたら……

「主さん!! うちのニート来たぁぁぁぁぁ」

ボス撃破して戻ってきた愛君が私の顔を見るやそう叫んだ。そういや、このマップで出るんだった!

「どうも、すいまっせん。明石国行言います。どうぞ、よろしゅう。まっ、お手柔らかにな?」

顕現の名乗りをあげた明石。でもその姿は直ぐに目の前から消えた。あれ、と思って目線を下にすれば、明石は何故か地に伏していた。何が起こったんだろう。ここはスローVTRでもう一度。

名乗りをあげた明石にドドドドドとすごい音を立てて走ってきた兼さんがドロップキック。その後ろに続いた国君が倒れた明石を踏みつけ、更に浦君、小夜ちゃんと続き、現在今ちゃんが地に伏した明石のお尻の上で飛び跳ねてる。今ちゃん、そんな薄いお尻だとクッションにもならないよー。

「……いきなりなんですのん」

顕現直後の余りの仕打ちに、地に伏したまま明石が抗議の声をあげる。その様子を愛君は呆然と見やり、やって来た蛍君はお腹を抱えて笑ってた。

「俺たちがどんだけてめぇを探したと思ってんだ! 主は愛のためにこの本丸が始まった日からお前探してたんだぞ!! 毎日毎日三条大橋に出陣して、そのたびに愛も蛍もてめぇがこねぇって寂しがってたんだ!!」

クールで素っ気無く見えつつ実は情に厚い兼さん。本当に愛君のこと気にかけてたもんねぇ。

「そうですよ! 仮にも保護者名乗るんなら、愛君や蛍君を寂しがらせてどうするんですか!!」

「そーだそーだ! 家族が来ないのは寂しいんだからな!」

……ごめん、浦君。必死で長曽祢レシピ回します。

「復讐」

可愛い復讐だね、小夜ちゃん。明石のお尻の上を今ちゃんと一緒に飛び跳ねて。

「愛と蛍のさびしさをおもいしりなさい、にーと!!」

今ちゃん、待っててね! 絶対、呼ぶから、岩融!!

「あー、皆、その辺にしてやってくれよ。来たんだから、もういいって」

嘗て三条大橋攻略隊で一緒だったメンバーの怒濤の勢いに愛君は呆然としてたんだけど、何処か嬉しそうに笑った。明石が来たことよりも、これだけ自分を思ってくれていた仲間がいることが嬉しいんだろうね。

「大体さー、国行は来ても役に立たないでしょ。働きたくないーってヤツだし? うちの本丸出陣数バリ多い優良本丸だしさー」

最愛の被保護者蛍君が止めを刺した! 明石百万のダメージ!

「あー……なんやえろうすんません。国俊も蛍も大事にされてるみたいで、ええところに呼ばれたんですなぁ、自分」

漸くお尻の上から今ちゃんと小夜ちゃんが退いてくれて(石さんと宗三に止められた)明石は立ち上がる。

「自分、大概はやる気あらへんけど、まぁ、2人のこともありますよって、出来るだけ頑張らせてもらいますわ」

……亜種か、この明石。脱ニート宣言しおった。

「うん、まぁ、明日くらいから、他の新人と一緒に頑張ってもらうことになると思う。特が付いたら、暫くは引きこもってもいいよ」

新人に特が付いたら、またカンスト目指せ部隊の育成だしね。

しかし、この3日で新規刀剣4振かぁ。こんなに一気にくるのは初期以来だなぁ。錬度が同じくらいの低さのメンバーが一気に揃ったから久々に江戸の記憶とかに出陣かな。

……なんて思ってたら。

 

 

 

 

 

「源氏の重宝、髭切さ。君が今代の主でいいのかい?」

物欲センサー働くよねぇ。検非違使からあっさりキヨたちが奪ってきました。

「兄者ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

弟、五月蝿い。3日くらいで来たんだから寂しかったとか言うな。今ちゃんや小夜ちゃんなんてなぁ……(号泣)。

「ああ……弟か。えっと……名前、なんだっけ」

確かに源氏兄弟は別名多いけどさ。弟の名前、忘れてやるなよ。

というか、この源氏兄。ホケホケ具合がみか爺以上だった。

「俺も爺だが、流石に兄弟の名前を忘れたりはせぬぞ? 主、あれの年齢は98歳にしてはどうだ」

なんて、みか爺が真面目な顔で言うから、笑うしかなかったのだった。

戦力拡充計画で拡充されたのは明石国行1人だけだったけど、同週として考えれば、一気に5振増えちゃった。意図せず戦力拡充ですな。

……江雪、岩融、長曽祢!! 待ってるからね!!

Episode_22 薙刀、やぁぁぁぁあっと参戦

審神者になって約9ヶ月。早いもんで今年もあと残すところ数日となりました。

っていうか、『今年』は私にとっちゃ207年間なんだよなぁ…。私が混乱しないようにってことで、3月31日まで2003年で過ごして(仕事の年度末がその日だから。通常なら退職後1ヶ月で振り込まれる退職金は手渡しだった)、翌日の4月1日からは2210年。いやはや、なんとも波乱万丈な1年ですな!

「兼ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、サボってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

今日も同田貫は元気です。

本日、12月29日、土曜日。今年は年末が土日にかかってるから、業務休みにしたのは大晦日だけ。それから来年の三が日が正月休みで4日からは通常業務。うん、まぁ、現世の社会と一緒だよね。

実質6日間も戦場に出ないってことで一部刀剣からは不満の声も上がったけど、そこは年末年始の祀り事をきちんとやっていた時代の刀剣たちだから、石さんたち御神刀勢の『祀りは大事だよ』の一言で大人しくなった。うん、別に本丸打撃第1位(85)が恐ろしかったわけではないと思う。同田貫と杵君が拳骨落とされてたけど。

で、年末休暇の初日は本丸総出で大掃除。まぁ、普段からそれなりに掃除はしているんで、そこまで大変じゃないとは思うんだけど、個々人の荷物は増えまくったりしてるし、遊戯室(主にTVゲーム)や図書室にもかなりの物が増えてるから、その整理整頓も結構大変。

祐筆班と戦況分析班の部屋にも資料とか結構増えてるしなぁ。

「主君、これはどちらに仕舞いましょう?」

「大将、こっちは捨てていいんだよな? 焼却炉に持っていくもんは他にはねぇか?」

私の執務室の片付けを手伝ってくれてるのは祐筆班の中からまぁ君と薬研。他の祐筆班のうち、歌仙と光忠、国君は厨房の掃除をしてて、残りのたろさんと鳴君、ばみ君と一期が祐筆班部屋の整理をしてる。戦況分析班は同じく自分たちの執務室を整理してて、他の刀剣たちは本丸内の共有スペースの掃除となってて、その指揮監督をしてるのが、普段から掃除班のリーダーをやってる同田貫。

「しかし、1年経ってないのに結構物が増えてたねぇ」

日々の報告書やら、調べたことのメモやら、色々な書類が増えまくってる。調べ物もネットだけでは済まずに結構書籍もあるし。というか、元々私が電子書籍よりも紙媒体の本来の書籍のほうが好きというのもあって、本を集めてるからなぁ。

「それだけ大将が俺っちたちのために一所懸命になって勉強してくれたってことだろ」

既にデジタル化済みのメモと未デジタル化のメモを分けながら薬研が応じる。

「ええ、主君はいつも僕たちのことを考えてくださって、本当に勤勉でいらっしゃいますから。無理はなさらないでくださいね」

可愛らしい顔を困ったように歪ませてまぁ君も薬研に応じる。

「私があなたたちのことを考えるのは当然でしょ。大事な仲間で家族なんだから」

仕事では一応上官と部下。でも仕事を離れれば大家族。この9ヶ月でそれがこの本丸の姿になりつつある。まだ顕現して1ヶ月経ってない源氏兄弟なんかはそれに戸惑ってるみたいだけど。因みにしぃ君・博多・こぎ・明石は元々『家族』や『兄弟』がいたからそこまで本丸家族には戸惑いはないみたい。

「ふふ、主君がそうやって僕たちを家族と言ってくださるのが嬉しいです。刀である僕たちにはお母さんはいませんけど、主君がお母さんみたいですよね」

「光忠の旦那と歌仙の旦那もおっかさんになるけどな」

薬研の言葉にまぁ君とクスクスと笑う。

「みか爺がおじいちゃんで石さんととんさん辺りがお父さんかな」

「いち兄、蜂兄、伏兄が皆のお兄さんですね」

「じろ姐さんは皆の姉御って感じだな」

今この本丸にいる45振にはなんとなく、皆での家族の役割が出来てる感じ。それを皆で楽しんでる。

「来年は絶対に江雪左文字と岩融呼ばないとね。小夜ちゃんと今ちゃんにはホンット待たせちゃってるから」

特に今ちゃん。こぎが顕現したときは衝撃だったわ。みか爺が『お前じゃない』って泣くし、石さんが『空気読めや』って怒ってるし。来たばっかりで兄弟に責められてこぎ涙目だったよね……。

『ぬしさま……私は来てはいけなかったのでしょうか』なんて耳(一応あれは髪の毛らしいけど)を垂らして言うこぎがなんとも哀れだった。そのこぎを今ちゃんが必死になって宥めてたなぁ。

「そうだなぁ。粟田口うちは全員揃ってるからな。岩融と江雪左文字がくりゃ、三条と左文字も揃う。そうなるとあとは長曽祢虎徹だけか」

「長曽祢虎徹は微妙ですよね。他の本丸では蜂兄が長曽祢虎徹を毛嫌いしたり忌避していると聞きますし」

「それは大丈夫じゃないかな。蜂須賀ずっと検非違使部隊から離れなかったくせに、長曽祢虎徹が検非違使ドロップじゃなくなった瞬間に検非違使部隊から抜けたしね。あれは確実にお兄ちゃん迎えに行ってたでしょ」

「そういやそうか。いやはや、打刀の旦那たちはツンデレとかいうのが多くて面倒臭いぜ」

うん、それは常々思う。打刀は多少の差はあれ、ほぼ全員がツンデレ属性持ってるからなぁ。全くそれがないのって鳴君と陸奥くらいかな。あ、キヨも素直か。本丸ではキヨ超可愛いし甘えん坊だし。でも戦場に出るとカッコいいんだよね。これは全員に言えるんだけど。可愛い短刀たちもオカンな歌仙や光忠もホケホケ爺なみか爺も、皆流石に『武士もののふ』って感じがする。

そんなことを考えながら、まぁ君と薬研に手伝ってもらって無事執務室整理も完了。

翌日には各個人の部屋の清掃も終え(一部刀剣は周りを巻き込んで相当大変だったらしいけど、本刃の名誉のために名前は伏せておく)、年末大掃除は無事に大晦日前には完了することが出来た。それほど汚れが溜まっていたわけではないけど、気分的にやっぱり違うよね。本丸は神様のいらっしゃる場所でもあるから私もそれなりに気を付けて掃除してたし、本丸の標準装備として自動浄化機能もついてる(歴史修正主義者との戦いで刀剣に穢れが付かないようにってことらしい)。何より神様たち刀剣男士自身が毎日御自ら掃除なさってたわけだしね。いや、ホント、同田貫や杵君が掃除班仕切るようになるとは思ってもなかったなぁ……。助かってるけどね!

大晦日には光忠・国君・歌仙・薬研・伽羅・宗三・蜂須賀と私を中心に御節作り。45振+1人の46人×3日分って超大変だった。厨房横の食料庫の一角の棚全部が重箱で占領されるくらい大変だった……。刀剣の一部は自分たちで御餅を搗く気満々だったんだけど、大量に消費するであろう御餅、そのためのもち米を蒸す労力がとんでもないことになりそうだったんで、鏡餅分だけを搗いてもらってあとは審神者通販で購入しましたよ。すごい量でこれまた食料庫の一部を以下略。

因みに本丸戦争の原因ともなるお雑煮は丸餅に澄まし汁の熊本風です。お屠蘇も赤酒。ここの主である私の出身地のもので統一だ! と珍しく主権限振りかざしました。それまでは江戸派京都派関西関東東北と争ってたんだけど、『主に馴染み深く親しんだものを皆で味わうのもよいなぁ』とほけほけとみか爺が言ってくれたのが決定打になりました。ありがと、みか爺。

うん、みか爺はその穏やかな表情と声音で皆の小さな喧嘩を両成敗することなく収めてくれるんだよね。まぁ、ヤンチャがすぎたときには流石の天下五剣っぷりを発揮して武闘派な一面も見せるけど。んで、最終的にはヤンチャした子と戦線拡大したみか爺は石さんに打撃85の拳骨を食らうとこまでがお約束。

元旦には御神刀である大太刀4振が神事もどきをやってくれて、皆で初日の出を拝んで。それからお年玉配布。

このお年玉も若干トラブルだったというか。何処までお年玉をあげるかって問題があったんだよね。見た目に日常は引き摺られてる部分の多い刀剣たち。つまり、短刀くんたちは本丸では『子供』になってる。なので、短刀は関係の深い面々がお年玉を渡す。主に兄弟とか同じ主に仕えたことのあるメンバーとか(結局最終的にはほぼ全員が短刀には渡してたことが後から発覚したけど)。

じゃあ、脇差以上はどうするかってことで実は保護者組で極秘会議(笑)が開かれたりした。参加者は鳴君、一期、宗三、蜂須賀、伏さん、本丸全体の保護者枠ってことでみか爺、石さん、とんさん、光忠、歌仙、それから私。結論から言うと、実家のルール適用することにした。実家では大学を卒業するまではお年玉をもらえた。一応大学からはバイトOKだったんだけど、それでもお年玉とお小遣いはあったんだよねー。

で、そのルールを本丸でも適用。未就労者だからお年玉対象だった実家とは違うけどね。それいうと全員就労者ですし。ちゃんと政府から日当5000円出てますから月収15万円程度ってとこだね。当初の日当1000円(月収3万円弱)から比べると随分上がったなぁ。多分、次の査定では上限の日当1万円になるだろうと担当官からは言われてる。1回で上がる上限が5000円だったらしい。

本丸のお年玉対象者はまず短刀くん全員と蛍君(小学生認定)。中学生認定のばみ君とずお、浦君。高校生認定の国君、獅子君、ヤス君、キヨ。大学生認定の鳴君、同田貫、兼さん、伽羅、青江、切国、宗三。……宗三とか同田貫とかお年玉って似合わねぇぇぇぇ。

「……高校生認定組までで良くないかな?」

大学生認定組の顔ぶれを見て光忠が呟く。

「確かに、『子供』という感じではありませんな」

とんさんも同意。他の保護者組も頷いてる。

「そうすると、新撰組で兼さんだけ貰えないよね?」

そうなると国君が気にしそうだしなぁ。じゃあってことで高校生組をなしにするってのも獅子君が楽しみにしてるからないし。

「獅子王は無視してもいいんじゃないかい? 彼、実際はジジイ組だよ」

苦笑する石さん。いやいや、それ言っちゃうと一気に短刀組もお年玉対象から外れるし。

「色々面倒だ。当初の予定通り大学生認定組までを対象にする! 金額は一律500円! お年『玉』だからね、硬貨限定」

少ない金額にブーブー文句は出そうだけど、12月顕現の髭切以外はお給料出てるし、髭切もボーナスは(雀の涙ほどとはいえ)出てるし! お年玉は一種の行事だからね、それでいいはず。因みに私からは大人組にもお年玉はある。現金じゃなくて500円相当のちょっとお高いビールだけど。

まぁ、そんなこんなの保護者会議を経て、元旦は皆でお年玉配布をしてました。

正月休み3日目には担当官丙之五氏も招いて新年会をして、翌4日からは通常業務スタート。まぁ、金曜だったから、1日出陣しただけで直ぐ2連休だけどね。

それからはいつもどおりに出陣して遠征して週末には演練して。

1月2週目には制度の変化があった。審神者にも錬度があるんだけど、それの上限が300に引き上げられた。実は歌仙がカンストしたのとほぼ同じくらいに私の審神者錬度もカンストしてたんだけど、今回の引き上げにより一気に127になった。経験値累積してたのかー。因みに刀剣男士の錬度は上限変わらずなんだけど、なんかランクアップの動きがあるらしい。あれかな、髭や膝みたいに特二とか特三とかあるのかなー。まさか源氏兄弟レア度まで変わるとは思わなかったよ。序でに経験値累積もないらしい。

年が明けても本丸生活にほぼ変化はなかった。戦況にも大きな変化はない。まぁ、私が審神者に就任するまで五年大きな変化のなかった戦局が大きく動くこともないか……。

毎日規則正しく、ほぼルーティン状態で日課をこなし、刀剣たちを戦場に送り出し。日課の鍛刀3回は岩融・江雪左文字・長曽祢虎徹狙いで回してた。そしてその度にコモン太刀・元太刀打刀、そして打刀勢が今ちゃん、小夜ちゃん、浦君に謝る日々が続いてた。

 

 

 

 

 

1月も第3週になって、短刀ちゃんたちが雪合戦しまくってたある日のこと。今日の近侍はレア四繋がりで江雪左文字呼べないかなってことで一期に頼み、資源投入。時間は1:30:00、3:00:00。そして……5:00:00。

5時間!?

「あ、主殿……!」

「ついにきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。一期、手伝い札用意。今ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!」

一期に手伝い札をスタンバイさせて、恒例の雄叫び。すると、ズダダダダダと凄い音をさせて今ちゃんをおんぶした博多、みか爺を肩に担いだ厚、こぎを肩に担いだ愛君、石さんを担いだ長谷部が現れた。うん、なにこれ、カオス。確かに担いで来たメンバーはうちの本丸でもトップクラスの機動を誇ってますがね。長谷部は普段から本丸では特上軽騎兵2積んでるから機動67だし、短刀たちも鬼ごっこ用に本丸じゃ特上軽歩兵つけてるから機動+5だし……。まぁ、いいか。

「あるじさま! ついにきたんですね!!」

お目目キラキラの今ちゃん。うんうん、ずーーーーーーっと待ってたもんね!!

「主、ようやった、ようやったぞ主」

顕現前から既に泣いてるみか爺。おじいちゃん涙腺脆いよね。

「日々の祈祷の甲斐があったね。漸く主の穢れも断ち切れたのかな!」

私の穢れのせいだったんかい! ていうか物欲は穢れなのかそうなのか! あと2振りのために引き続き祈祷よろしくね、石さん!

「私のときとは随分な違いじゃ……」

こぎ、落ち込まないで。うん、君のときは非道かったもんね……。

「よし、顕現するよ」

「はい!」

手伝い札を妖精さんに渡す私の傍らで、何故か今ちゃんは屈伸運動をしてる。……なんの準備ですか、今ちゃん。

「おお。小さすぎて気付かなんだわ。俺は岩融、武蔵坊弁慶の薙刀よ! がははは……ぐぉっ!?」

現れた超デカい僧兵は、大笑いの直後に仰け反り倒れた。理由は……

「おそいですよ、岩融!! まちくたびれました!! さぁ、はやく、ちさんをあるじさまにおわびするのです!!」

華麗にジャンプして岩融の顎に膝蹴りをクリーンヒットさせた今ちゃんでした。

「今ちゃんや……別に岩融が悪いわけじゃなくてだね、物欲センサーが」

「いいえ! 岩融がのんびりしすぎなんです! もっともでにくい三日月も、けびいしがなかなかかいほうしない髭切も膝丸もすでにふくすうきているというのに、なかなかこなかった岩融がわるいのです!!」

……まぁ、昨日、髭爺4振目来たよね。源氏兄弟出すぎだろ。同じだけ検非違使狩ってたのに浦君1振しか来なかったもんな、虎徹兄弟は。

「がはははは! それは済まなんだな、主よ! 遅参の詫びは戦場で返そうぞ!!」

起き上がった岩融は豪快に笑いながら、私の頭をぐりぐりと撫でた。痛い痛い、背が縮む! 蛍君の台詞じゃないけど!

「唯一の全体攻撃できる薙刀だからね、期待してるよ岩融。尤も、他の殆どが錬度上限に達してるから、暫くは落ち込むかもしれないけど」

特付きになるまではカンスト部隊に放り込むからなぁ。パワーレべリングですよ。

「む。そうか。ならば精進せねばらなぬなぁ!」

相棒の今ちゃんは2日目顕現の古参組だし、とっくに錬度上限になってるしね。最近みか爺もカンストしたから、三条でカンストしてないのは他はこぎだけ。そのこぎも60は超えてるし。

「さて、まずは三条には恒例の刀派揃った記念遠征に行ってもらうかな。今ちゃん、相棒の世話よろしくね!」

「はい、あるじさま! ばびゅーんといってきますよ!」

いつもニコニコしてる今ちゃんの笑顔は、これまでで一番の輝き具合だった。

よし、これで家族が待ってるのはあと2振だ!

 

 

 

 

 

こうして、待望の岩融に今ちゃんがニーキックをかまし石さんがアイアンクローをお見舞いして(実はやってたんですよねー……)から数日後。政府からの通達メールが来た。それを見た私は、執務室の片隅にあるマイクのスイッチを入れる。これは本丸が広くなったこともあって、連絡を通達しやすくするために入れた放送設備。学校の校内放送やら、ショッピングセンターの迷子放送を思い浮かべてもらえばいい。

『光忠、伽羅、直ぐ執務室来てー。光忠はちゃんと来るだろうけど、伽羅も来いよー』

光忠は文句言わずに来ると思う。けど伽羅はねー。万年反抗期ですから。出陣とか遠征のときじゃないと呼び出しには中々応じないんだよね! でも、主、ちゃんと学んだ!

『来なかったら、伽羅のこと、これから「く~りりん(はぁと)」って呼ぶからな。10数える間に来いよー』

私がこう呼べば意図を察した歌仙たち祐筆班、面白いこと大好きな脇差と三条、愉快犯気味なところのある宗三や新撰組は乗って同じように呼ぶしね。短刀も意図が判ってる薬研とまぁ君によって同調する。つまりは真面目組以外の殆どの刀剣が伽羅を『くりりん』呼びすることになるわけだ。馴れ合いたくない系男士の伽羅にはこれは超イヤなことだろう。

『じゅーう、きゅーう、はーち、なーな、ろーく……』

お、ドタドタとすんごい音がする。

『ごー、よーん、さーん、にーぃ……ちっ、来たか。しゃーないから、くりりん呼びは次のチャンスに』

「やめろ! 阿呆主!!」

「主にその言い方はないだろう、伽羅ちゃん! 僕はそんな子に育てた覚えはないよ!!」

「俺もお前に育てられた覚えはない!!」

ぜぇぜぇと息を切らして執務室に駆け込んできた伽羅と実は隣の祐筆班部屋にいたために余裕で現れた光忠が、母子漫才を繰り広げる。それを見て、マイクのスイッチを切る。ごめんなー伽羅ちゃん。マイク切るの遅かったから今の漫才、本丸全部に筒抜けだわ。

「来たね、2人とも。じゃあ、これ見て」

母子漫才はいつものことだからスルーして、やって来た2人にメールを見せる。

「あ……主!! これって」

「うん、やっと契約成功したらしいよ。お待たせ、光忠、伽羅」

「……別に俺は待ってなんか……」

待ってないなら、名前出したりしないよね。時々『光忠や貞宗に任せればいい』とか言うけど、その貞宗は明らかに物吉貞宗じゃないよねー。

「契約成功はしたけど、刀剣男士としての参戦予定はまだ未定なんだって。鍛刀で出現するのか、いつもみたいに政府主催の訓練での報酬なのかも未定」

「いいよ、それでも! 貞ちゃんに会えるんだから」

ニッコニコと嬉しそうな光忠。

「うん、そう言ってもらえるとちょっと安心かな。ほら、物欲センサーがよく仕事してるじゃない? どんだけ小夜ちゃんを待たせてるか……」

蛍君だってかなり来なかったし、岩さんだって今ちゃんを10ヶ月も待たせたからね。なのに全く求めてなかった源氏兄弟はあっさり検非違使から奪い取ってたし。

「まぁ、側でよく見てるから、判ってるよ」

だよねー。光忠、今ちゃんと小夜ちゃんに謝りまくってたもんね……。

「これで伊達の刀がまた増えるねぇ。短刀なんだよね、どんな子なんだろうね、貞ちゃん」

うーん、短刀増えまくりだなぁ。バランス悪いよね、刀種の。既に短刀と打刀と太刀は2桁の刀剣男士いるんだから、1桁しかいない脇差・大太刀・槍・薙刀ともっと契約して欲しいんだけどなー。付喪神になってる刀剣が少ないのかなぁ……。あー、薙刀は現存してるのって3本しかないとか聞いたことあるけど……そもそも岩融って実在疑われてるよね(持ち主の武蔵坊弁慶自体が架空の人物説あるし)。だったら、実在するかしないかより、どれだけ人の想いが集まってるかで付喪神化しそうな気もするんだけど。

「主……鶴丸国永も呼んでくれ」

黙って私と光忠の会話を聞いていた伽羅が突然口を開いた。鶴丸国永か。そういえば彼も伽羅と同時期に伊達にいたんだっけ。伊達政宗没後に伊達に来てるから光忠とは伊達での交流はないらしいけど。一応光忠によれば『燭台切光忠』になるまえの織田時代に多少の付き合いはあるそうで『鶴さんかぁ……来たら賑やかになるね』なんて笑ってる。

「鶴丸国永か。彼も一応伊達の刀に分類できるんだよね。伽羅とは200年くらい一緒にいたんだっけ」

「ああ。俺のカンスト祝いはまだだっただろう。その褒美は鶴丸国永を呼ぶことにしてくれ」

ぷいっと顔を背けて言う、伽羅。耳が赤い。ちょっと、万年反抗期の一匹狼の照れた姿なんて超可愛いんですけど!

「みっちゃん、みっちゃん。伽羅がデレてないかい?」

「うん、デレてるよね、これって」

「だよねー。ちょうかわいい」

「うんうん。ちょうかわいい」

「五月蝿い!!」

思わず光忠と感慨に耽ってしまうと、伽羅は更に顔を赤くして怒鳴る。これ以上揶揄うと完全に拗ねるから、ここまでにしておこう。

「判った。ただ、光忠にも言ったように、私の鍛刀運もドロップ運もかなり物欲センサーに邪魔されまくってるから、かなり待たせることにはなると思うけど」

「判ってるから心配するな」

……ありがとー。判られるのもなんか複雑なんだけどね。

うん、レア運は決して悪くはないと思うんだ。22日目に最初のレア4太刀である一期が来てくれてるし、みか爺もこぎも蛍君もいるしね。顕現してないけど、みか爺2振目、一期2振目、蛍君2~4振目も保管庫に眠ってるし。源氏兄弟なんて探してもいないのに検非違使誘拐から1週間くらいで来て尚且つそれぞれ4振目が保管庫にいるくらいだしね。

ただ、そこに『来てくれー』という欲望が入ると途端に来てくれなくなるんだよ。

「よし、じゃあ、滅多にない伽羅のおねだりだもんね! 明日からはレア太刀レシピ2と長曽祢レシピで日課鍛刀するよ」

……岩さん来てから実はずっとそのレシピ配分だったのは内緒。

当分レア太刀難民からは抜け出せないかな……?

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