テニスの王子様

Reset*Restart-1stGrade01~20

動き出す夜

なんだかんだと、合宿も無事最終夜を迎えた。

今回の合宿は結構実り多かったかな?

都大会団体戦へ向けて……ぶっちゃけて言えば対青学に向けての実践練習になったし。

がっくん・滝のペアは丸井・ジャッカルペアととにかくゲームしてコンビネーション強化を図って。

跡部と忍足は対手塚・不二を想定して、幸村・真田・におちゃんとゲーム。

宍戸は柳や柳生とひたすらゲームしてシングルスの勘を取り戻す。

立海のメンバーには、かなり無理言って相手をしてもらったような気がする。

特ににおちゃんなんて、イリュージョン駆使して手塚・不二になりきってくれたし。

ともあれ、本日午後6時を以って練習は終了。

後は明日、総括のミーティングをやって合宿は終了。午後早めの時間には東京に戻ることになる。

で、これから……うちあげかねてバーベキューの夕食となります。

 

 

 

 

 

バーベキューってことで、私は何もさせてもらえない……。

『バーベキューは男の料理や。彰子の慰労も兼ねとるよって、彰子は何もせんといてや』なんて、侑士に言われてしまって、私はボーっと座ってジュース飲んでる。

意外と言うか、納得というか、仕切ってるのは宍戸で。うん、宍戸はこういうアウトドア得意そうだよねー。

宍戸の指導の許、侑士、におちゃん、真田、柳、柳生がせっせとお野菜を切ってる。(お肉はそのまま焼けるものを買ってあるからね)

で、残りのメンバー、跡部・幸村・滝・がっくん・ジロちゃん・丸井・ジャッカルがバーベキューセットの準備をしたり、飲み物やお皿お箸なんてものの準備をしてる。

「ねー、見てるの暇だから、私も何かする」

「てめぇは座ってろ」

「そうだよ、今日は長岡はお姫さまだからね。じっとしてて」

手伝うと言えば、跡部と幸村に拒否されるし。というか、幸村、お姫様ってなに……。

やがて準備も出来たらしくて、跡部の音頭で乾杯して(ジュースだけど)、バーベキュースタート。

やっぱりここでも仕切りは宍戸と真田。絶対真田とか、小学生のころボーイスカウトとか入ってた気がする。

「丸井、肉ばかり食わずに野菜も食わんか!」

早速丸井に教育的指導入ってるし……。

「彰子、どれ食いたい?」

「とってやるぜよ」

と、私の両サイドには侑士とにおちゃんがいて、甲斐甲斐しく給仕してくれる。

「ありがと。でも自分で好きにとるからいいよ」

座ってたら、皆の輪に入れなくて寂しいし。

しかし、まぁ、さすがに現役高校生。すごい勢いで食べてるなぁ。

がっくんもジロちゃんも感心なことにちゃんとお野菜もたくさん食べてるし。

私もたまねぎやとうもろこし、にんじん、ソーセージなんかを中心に食べてるんだけど。

バーベキューの時って、お野菜がすごく美味しいのよね。にんじんってあんまり好きじゃないんだけど、良いにんじんを焼いたりボイルしたりしたのって甘くてすごく美味しくて好き。

実は今日のお野菜は、跡部が契約してる農家から取れたてを持ってきてもらってるらしくて、すごーくいいお野菜なの。だから味は抜群。

「長岡、3日間ご苦労だったな」

侑士たちとおしゃべりしながら食べていれば、そう声をかけてきたのは真田。

「ありがと、真田。でもマネージャーとして同行したんだから当然のことをしたまでだよ」

真田ってホント律儀な人だと思うんだよね。

「そうかもしれんが、お前がいたことで、非常にやりやすく有意義な合宿となったことは事実だ」

うちのマネージャーではないことが残念だ。

そう真田は言ってくれる。

「ほんにのう。彰子が立海に来てくれちょったら良かったのにの」

「うむ。立海にくるのだとばかり思っていたからな」

真田とは下見に行った日にしか会ってなかったから、そう思ってくれてたのはちょっと意外。でも嬉しくもある。まぁ、におちゃんと幸村、柳以外のメンバーとは、今回の合宿が会うの2回目なんだけど。

「ダメだよ、真田。彰子ちゃんはあげないC」

いつの間にやら来ていたのか、背後からジロちゃんに抱きつかれる。

「くれなどとは言っておらん。長岡はモノではない。しかし、残念だ」

「立海のマネージャーは出来ないけど、協力できることはさせてもらうわ。友達でしょ?」

評価してくれてることが素直に嬉しくて、笑って答えれば、何故か真田はうっすら赤くなって視線をそらす。

……真田って女に慣れてないのか。一応私も女だしね。

「氷帝の皆もそうだけど、立海の皆も本当にテニスが好きで真剣に打ち込んでるのがよく判るもの。公式戦ではライバルだけど、合同合宿では出来る限りのサポートさせてもらいたいって思ってるの」

「ああ……。よろしく頼む」

 

 

 

 

 

真田が去った後は、柳や柳生、丸井にジャッカルと次々に声をかけて労ってくれた。

「お前、どうやってこの濃い連中の手綱とってるんだ?」

なんてジャッカルにはまじめな顔して聞かれたけど……ジャッカル苦労人だもんね……。

というか、手綱とるって……。

 

 

 

 

 

わいわいと賑やかに食事をして、あっという間に時間は過ぎて。

後片付けも皆が分担してくれるということで、私はさっさと部屋に追い立てられた。

「先に風呂でも入ってのんびりしとき。いつもこの時間帯は彰子一人忙しかったんやから」

手伝うといったのにやっぱり侑士にそう拒否されてしまったわけで……大人しく部屋に戻ってお風呂にお湯を落とす。

後片付けからは解放されたけど、やっておくべきことは他にもあるわけで。PCを起動して、今日の練習のデータ整理に、スコアの整理もあるし。

幸い、合宿で使った備品はすべてこの別荘にあったものだったから、個人の荷物以外持ち帰るものもないし、洗濯物も干す時間がないからということで今日の分は全員持ち帰ってから洗濯することになってる。というわけで、後は朝ごはんの下準備だけすればいいから、他の時間は全部データ整理に使えるというわけだ。

今日の午前中の基礎練習メニューの達成状況と気づいた事を入力し終えたときに、お風呂のお湯も溜まって。

さすがは跡部の別荘だけあって部屋に備え付けのユニットバスとはいえ、それなりにゆったりと広い。しかもちゃんとバスオイルが何種類も準備してあって、嬉しい限り。どれにしようか迷って、今日はローズを選ぶ。

持ってきておいた小説を手にゆったりと湯船に浸かり、逆上せる前に髪と体を洗って。

かなりのんびりと入浴を楽しんだ。

しかし……この長い髪は鬱陶しいなあ。半分くらいの長さに切ろうかしら。

よし、明日帰宅したら美容院に行こうっと。ちょっと前からしゃれた感じの美容室見つけてて気になってたんだよね。

無駄に長い髪を生乾き程度にドライヤーで乾かして、終了。

あー、でも、明日は帰ったら猫たちが離れてくれないかもしれないなぁ。なんせこの3日間お留守番だったし。

一応、1日に1回餌とお水とネコトイレの確認に光一兄さんが来てくれることにはなってるんだけど(神様なのにごめんなさい!)。

それに、詩史にも連絡入れなきゃなー。

この3日間は部員は自主練ってことになってはいるんだけど、どの程度参加してるのかも判らない。とはいえ、一応部活はあるわけなんで臨時マネージャーとして詩史が入ってくれてる。

PCにスコアを入力しつつ、そんなことを考えると携帯が鳴る。相手は──以心伝心? 詩史からだった。

『彰子、今時間大丈夫?』

詩史の明るい声が聞こえる。

「うん、平気よ。フリータイムだし」

詩史からの用件は、この3日間のテニス部の様子だった。

『とりあえず3日間の部誌、キャビにあげてあるから、詳しくはそっち見てね』

キャビとは、私と詩史、それに美弥子さん、由紀子さん、那津子さんの5人で共有してるオンラインのファイルアップロードサービス。4人はマネージャー業務を手伝ってくれるから、こういったデータ共有をしやすいように利用してるわけ。

『でもさ、彰子。やっぱり今の部員って半分以上使い物にならないと思うよ。特に2、3年』

ズバっと歯に衣着せず詩史は言う。詩史も中等部の厳しさを知ってるから、高等部のテニス部がぬるいと感じてるらしい。

「やっぱりファンクラブの目から見てもそう思うんだ」

『うん。美弥子さんたちも物足りないっていってるもの』

元々美弥子さんたちもテニス部ファンクラブとはいってるけど、主に応援してたのは中等部のテニス部らしいのよね。

しかし、あの先輩たちだって、中等部時代は太郎ちゃんの超実力主義に揉まれてきたはずなのになぁ……。

「ま、これから部内改革進めていくつもりだから、きっと詩史たちにも満足してもらえるテニス部に生まれ変わるよ」

『楽しみにしてる。彰子のお手並み拝見ね』

中心は跡部と侑士だけどね。飽くまでも私は裏方。

「ともかく助かったわ、詩史。ありがと」

『いいって。カフェテラスのシフォンケーキで手を打つわ』

「りょーかい。じゃ、休み明けね」

詩史との通話を終えて、キャビに接続する。当然のように跡部の別荘は全室PCとネット完備。

キャビのフォルダを見れば、この3日分の部誌がアップされてる。更に今回助っ人に入ってくれた美弥子さん、那津子さんからの報告書も。あの4人は助っ人に入った日には練習を見ていて気づいたことを報告書という形で連絡してくれる。

ううん、助っ人に入っていない日でもファンの目から見て感じたことを気づいたときには教えてくれる。緊急を要しそうな場合はメールで、そうでない場合はファンたちの所感をまとめて週末に。流石に200人超だから私一人では目が届かない部分もあるから、本当にこれは助かってる。

部誌と報告書をダウンロードしてUSBメモリに保存して自分のノートPCにデータを移す。面倒くさいけど、安全のためにこのPCはネット接続しないことにしてるから仕方ない。

「うわ……出席率5割切ってるじゃん……」

ゴールデンウィークともなれば、旅行に行く人もいるだろうからと自主練習だったわけだけど……。これは酷いわ。

中等部のときは部誌を見る限り概ね9割が参加してたというのに。

やっぱりこういうところでも意識の差は出てきてるのね。

出席率が一番いいのは1年で、ほぼ100%。次が2年で4割。3年に至っては2割……。

しかも……3年レギュラーで参加してるの2人しかいないじゃない。

こいつらレギュラー落ち決定。

決定するのは跡部だけどね。そう、現在顧問は何の実権も持ってない。元々存在感の薄い顧問だったんだけど、部内改革のひとつとして、跡部が全てを部長・副部長・マネージャーに任せるように顧問と交渉したんだ。

まぁ、顧問も定年間近のやる気のないおじいちゃん先生だったから渡りに船って感じだったみたいだけど。

「彰子、入ってええか?」

部誌を見て溜息をついてると、ノックと同時に侑士の声。

「開いてるからどうぞ」

PC画面から目を離さずに応えれば、コーヒーのいい香り。

「やっぱ、仕事しとってんなぁ」

侑士はそう苦笑混じりにいうと机の上にコーヒーを置いてくれる。

「なかなか戻ってきぃひんから、多分仕事しとるんやないか思うてな」

一番付き合いが長くて私のことを判ってる侑士だ。私の行動なんてお見通し。

「あは……。侑士たちが後片付けとかやってくれてるから時間有効にと思って」

「ま、予想の範囲内やな。ついでに明日の朝飯も準備しといたで。味噌汁作って、飯も14合炊き上がるようにセットしといた」

「うわ、そこまでやってくれたの? ありがとー」

まさかそこまでやってくれてたとは! 感謝感激雨嵐。(ホントは雨あられだけど)

「3日間彰子がよう頑張ってくれとったんは皆よう知っとるからな。これくらい当然やって」

コーヒーを飲んで一息つきつつ、PCの画面を眺める。

侑士も私の横に立ったままコーヒー飲みながら画面を見る。

……というか、そういう姿も絵になるな、侑士ってば。

「これ……部誌やないか?」

「そう。詩史が送ってくれたの」

体をずらして、侑士が画面を見やすいようにすると……

「なんや、これ……。あかんわ。やっぱレギュラー総入れ替えしぃひんとあかんな」

出席率を見て呆れ顔の侑士。

「うん、後で跡部と3人で相談しよ」

「せやな」

あれ……侑士の顔、なんか足りない……。

あ……

「どないしたん?」

じーっと侑士を見つめてしまった私に侑士が不思議そうに聞いてくる。

「眼鏡……」

「ああ。俺も風呂入ったよってな」

侑士の眼鏡なしの顔って初めて見る……。見慣れてるはずの侑士が、違う顔になってる。眼鏡ひとつでこんなにも印象が違うんだ……。

切れ長の眼が……いつもの侑士の柔らかさをなくしていて、知っている人なのに知らない人みたい。

「なんや、そないに変か?」

「変じゃないけど……ちょっと美人すぎ」

そう! 眼鏡がないだけで侑士の美人度が当社比200%増みたいな。

「……おおきに」

ああ、なるほど。

「眼鏡で印象柔らかくしてたんだ」

「んー……まぁ、そういうことやな」

侑士の綺麗な切れ長の眼は鋭い印象を与える。ぱっと見た感じ、その綺麗な顔立ちと合わせて冷たい印象を与えてしまう。

でも、いつもの丸眼鏡はその切れ長の眼を隠して、印象を柔らかくする。きっと長めの髪も冷たく見えがちな目元を隠すためなんだろう。

「眼鏡なしの顔見せるんは、女の子には初めてやな」

侑士はそう言って笑う。これまで眼鏡を外した顔を見せたのは家族以外ではテニス部のレギュラー(中等部の3年のときのメンバーね)だけらしい。つまり、侑士は信頼してる人にしか素顔を見せない……ってこと。

そして……女では、私だけ……。

あ……あれ。

なんか、ちょっとドキドキしてる?

私だけって嬉しいって……感じてる……。

「コ……コーヒー飲み終わったら、跡部のトコ行こうか」

微妙に赤くなってそうな顔を見られたくなくて、何故かときめいていることを悟られたくなくて、侑士から眼をそらしてPCに向き直る。

「せやな。けどその前に……」

侑士はそう言うと、何故かベッドに腰掛けて「こっちに来ぃ」と私を呼ぶ。

「う……うん」

ドキドキは止まらないまま侑士に呼ばれて側に行けば、隣に座らされて。

「右腕、出してみ」

と言われる。右腕……?

素直に出して……はっとする。もしかして気づかれた?

「気づいてへんと思うとったんか? 俺の目は誤魔化されへんで」

侑士は腕を取り、ひじの辺りを強く押す。

「……っ!」

途端に痛みが腕全体に走る。

「やっぱり痛みあるんやないか」

明らかに侑士の声は怒ってる。

「無理するな、なんかあったら言えって何べんも言うとるやろ」

そう言って侑士はひじを中心に揉み解すようにマッサージをしてくれる。

「あー……別に無理してるわけじゃなくて……」

そう反論すれば「阿呆」と叱られる。

別に怪我したってわけじゃないんだよね。OA肘とでもいうか……。PCを使う仕事をしてる人に多いんだけど、右の肩・肘・手首に痛みが出る症状。長時間眼と腕を使う上に座りっぱなしで姿勢も固定されるからこういう症状が出るんだよね。

元いた世界でもかなりPC使う仕事だったし、自宅でもネットやゲームや創作活動で起きてる時間の9割はPC使ってたから、結構なってた。

で、こっちに来てからもあちらにいたころほどではないけどかなりPC使ってるし、ちょっと痛くなってたとこだったんだよね。まぁ、温湿布してマッサージしてれば痛みはなくなるんだけど。

「彰子。お前が俺らのためにいつも一所懸命やってくれとるんはよう判ってる。感謝もしとるし、頼りにもしとる」

侑士はそう言いながらゆっくりとマッサージをしてくれる。

侑士の大きな手が、長い指が……私の腕を柔らかく揉み解す。侑士が触れている部分がだんだん暖かくなってくる。……マッサージで血行が良くなったからってだけではなく。

「俺らには彰子は大事なマネージャーや。けどな、それ以上に大切な仲間なんやで。皆お前の様子心配しとる」

無理しすぎてないか、ファンやなんやらに嫌な目に合わされてないか。いつも気にしてる。

「まぁ、肘に気づいたんは……多分俺と跡部くらいやと思うけどな」

「……ありがと、侑士」

侑士は私の腕の様子を見ていて、私からは若干伏目がちな侑士の顔が見える。

「痛ないか?」

「うん……」

「じゃ、今度は後ろ向いてや」

言われるままに侑士に背を向けると、侑士の長い指が右の首筋に触れる。耳の後ろから肩にかけて凝りを解すかのようにマッサージし、指圧してくれる。

そう、マッサージなのに……何故かドキドキしている。侑士の指が、私の首筋に触れていると思うだけで。背筋が痺れたように、まるで電気が走るかのように……。

……背を向けてて良かったかも。多分、顔赤くなってる。

漸く侑士の指が離れてくれたときにはホッとする。これ以上続いてたら、逆に体に力入って余計に凝ってしまう。

でも、離れた侑士の手は今度は背中に回って……肩甲骨や背筋を指圧してくる。

「こらこら、逃げたらあかんって」

指圧されているからなのか、それとも侑士の手と意識してしまったからなのか、微妙に体が前へ動いてしまう。

「で……でも……」

殆ど無意識に動いちゃってるわけで……。

「しゃーないなぁ……」

侑士は私の腰を掴むようにして、親指で指圧を続ける。私の体が逃げないように……。

確かに今の私の体は細い。でも平均的な太さはあるのに……侑士の手は私の腰を掴んでも支障なく指圧できてしまう。

大きいんだ……侑士の手。やっぱり、男……なんだ。

「こんなもんやろ」

そう言って侑士の手が離れたときには本当にホッとした。でもそれも束の間……侑士は背後から私の右腕を掴んで持ちあえて。ゆっくりと肘を屈伸させる。

……体が……かなりくっついてる……

「どや、痛ないか?」

その上、この体勢からは当然なことに、耳元で侑士の声。

「い……痛くない……。大丈夫」

声が……上擦ってる気がする。

「さよか。まぁ、念のために温湿布しとこか」

侑士はそう言って私から離れると、準備してきてくれてた温湿布を肘に貼り、剥がれないように上から包帯を巻いてくれた。

「ありがと……」

「どういたしまして」

なんか、侑士の顔がまともに見れません。

「ほな、跡部のとこいこか」

「うん」

侑士がマグカップ2つをトレーに乗せて、その上PCまで持ってくれようとしたので、PCはあわてて私が持つ。

やっぱり、侑士がまともに見れない。

侑士が不審に思ってるだろうとは思うんだけど、見れない。なんだか意識してしまって。

……そう、私は侑士を初めて『男』として、意識してしまっていた。

 

 

 

 

 

 

その後の跡部を交えた打ち合わせでは、部のことということもあって何とかいつもの私に戻れた。

打ち合わせの後は、最後の夜ということもあって、皆リビングに集まりゲームしたり、おしゃべりしたり。

いつの間にか買出し部隊が編成されていたらしくて、大量のお菓子とジュース類が準備されていたし。

わいわいと皆で過ごしているうちに、妙な緊張感もなくなって、いつもどおりになったけど。

きっと……初めて見た侑士の素顔と、体格の違いなんかを感じたからちょっと意識してしまっただけだったんだろう。

そう思って、なんとなく安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──そう自分に言い聞かせていたのかもしれないと気づくのは、もっと先のこと。

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