テニスの王子様

a Tre~三重奏~

a piacere~意のままに~ 忍足を選ぶ

「私、侑士が好き」

綾弥の口から出てきたんは、俺を選ぶ言葉やった。

「景吾の気持ちは嬉しかった。正直よろめきかけたわ。でもやっぱり侑士が好きなの。景吾、ごめ」

「謝る必要はねぇ」

綾弥の言葉を跡部は遮る。その表情は穏やかなもんやった。こいつのことやから綾弥の答えは聞くまでものう、判っとったんかもしれへんな。

「てめぇの気持ちなんて俺様にはお見通しなんだよ。──今は俺の負けだ。潔く退くさ」

跡部は笑みさえ浮かべて言う。恋敵ながら好え男やんか、跡部。

「邪魔者は退散する。綾弥、幸せになれよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

跡部が去り、綾弥と庭園に2人残される。

「ホンマに俺でええんやな?今更あかんって言うても聞かへんで」

「侑士がいいの。侑士のことずっと好きだったんだから」

綾弥は微笑む。──俺だけの笑顔や。

「大切にする。俺には綾弥だけや」

そっと綾弥を抱き寄せる。なんや、俺らしゅうもなく震えとるわ。ホンマに好きな女相手やと、こないになるもんなんやな。

「侑士…これからよろしくね」

俺の胸に頭を預け、綾弥が言う。

愛しさが募る。

……。

ライトアップされた綺麗な夜の庭園。

舞台設定も情況も恋愛映画並にロマンティックな雰囲気やのに。

我慢や、我慢するんや、侑士。

「侑士…?」

何も言わへん俺を不審そうに綾弥が見上げる。緊張しとった所為か綾弥の瞳は潤んどって。化粧してへんはずやのにその唇は艶めいとって。

「こちらこそ、末永うよろしゅうな」

そう告げる声は我ながらみっともないくらい掠れとると判るもんやった。

嬉しそうに微笑む綾弥の唇にそっと口付けを落とす。

触れるだけのキスでは終われへん。この甘い唇をもっと味わいたい。

もっと綾弥を感じたい。

口付けは段々深うなっていき、俺の手は綾弥の躰を彷徨う。

制服のスカートからシャツを抜き出し、その裾から手を差し入れる。滑らかな肌を撫でれば綾弥の躰が驚いたようにピクリと反応する。

「や…待って…侑士」

口付けを解けば、聞こえるんは綾弥の戸惑ったような声。

「嫌や。待たれへん。欲しいんや、綾弥」

どうしようもない程、綾弥が欲しゅうて堪らんのや。

ホンマに愛しとる女が、綾弥が相手やと思うと抑えが利かへんのや。

「外…だよ」

綾弥は懸命に抵抗しとるけど、時々甘い吐息が零れる。

跡部が色々教え込んだ躰やと思うと跡部に対して腹も立つけど、綾弥を疎む気持ちは微塵も沸いてきぃひん。跡部との関係は承知の上のことやしな。

「──こんなとこで盛ってんじゃねぇよ」

後頭部に衝撃を受けて振り向けば、憮然とした表情の跡部がおった。なんや戻ったんちゃうかいな。

「ったく、こんなこったろうと思ったぜ。ほら」

跡部が放ったものを受け取れば──…カードキー。

「俺様からのプレゼントだ。有難く受け取りやがれ」

そう言うと跡部は背を向け、戻っていく。

何や、景ちゃん。最後まで格好ええやん。

「ほな、有難く使わせてもらうか」

綾弥を促し、渡されたカードキーの部屋へ行く。

そこはジュニアスウィートで、室内には大輪の白い薔薇の花が飾られ、シャンパンが用意されとった。添えられたカードには『Congratulation』とだけ。─気障やな、跡部。

カードを見て綾弥は泣き笑いのような、微妙な表情。

「あのね…侑士。私、景吾と…」

俺を見上げて綾弥は言おうとする。真剣な、せやけど何処か怖がっとるような瞳やった。

「知ってんで。綾弥と跡部のこと。けどそんなん問題やあらへん。それを問題にするようなら綾弥に告白なんてしてへんよ。気にせんでええ。俺は綾弥の最後の男になれたらそれでええねん」

そう。

これから先、綾弥と一緒に歩くんは俺や。

一生、手ぇ離さへんからな。覚悟しといてや、綾弥。

コメント