a piacere~意のままに~
跡部に続いて忍足からも想いを告げられ、綾弥は困惑していた。
ずっと片恋をしていた忍足から告白されたのだから『私も』と言えばハッピーエンドになりそうなものだが、そう簡単にはいかなかった。
理由の1つは跡部の存在が綾弥の中で大きくなっていたこと。
1つは忍足の告白を何処か信じられなかったこと。
ずっと忍足は特定の恋人がいる振りをして、女子生徒が自分に近づかないようにしていた。綾弥も同じ学園の生徒としてテニス部ファンと称する彼女たちの煩わしさはよく知っていたから、忍足の採った策が有効だったことは認めている。1人の恋人を大切にしているというスタンスをとっていた忍足は遠巻きにされるだけで他のメンバー程煩わされずに済み、その分テニスに打ち込めていたからだ。
テニス部のレギュラー陣(跡部、宍戸、向日、芥川、鳳、日吉、樺地とマネージャーの滝)は忍足の実際の女性関係を知っていた。男同士だからと言うのもあったかもしれない。綾弥は自分が『女』だから知らされていないのだと思っていた。
きっと『女』の自分は忍足にとって他の女子生徒と同じ、面倒で厄介なものとして区別されてしまうのだろうと勝手に思っていたのだ。
だから、自分は忍足にとって恋愛対象には成り得ない『仲間』として接するより他ないのだと思い込んでいた。
それなのに忍足は自分を好きなのだと言う。
何時からかは判らない。気付いたら好きになっていた。忍足は綾弥にそう告げた。だから遊びの相手だった女とも別れたと。
それからの忍足の言動は綾弥に彼の想いが本物であることを知らしめるには十分なものだった。
忍足と跡部。どちらを選ぶのか、綾弥には判断がつかなかった。
或いはどちらも選ばないのか。
そして、最後の全国大会が幕を開けた。
今年こそ全国制覇を を合言葉に厳しい練習を重ねてきた氷帝テニス部は危なげなく順調に勝ち進んでいった。宿敵立海を準決勝で下し。
そして、大会最終日。決勝の相手は何かと因縁の多かった青学だった。
第1試合、ダブルス2。向日・日吉ペアVS乾・海堂ペアは5-6で青学勝利。
第2試合、ダブルス1。宍戸・鳳ペアVS大石・菊丸ペアの、ゴールデンペア対決は6-1の圧勝で氷帝勝利。
スコアは1-1でシングルスに移り、第3試合のシングルス3はまさかの手塚が出場。樺地を相手に6-3で勝利した。
第4試合のシングルス2は忍足VS不二。両校の天才による対戦はあっけなく6-2で忍足が勝利。
最終、シングルス1は跡部VS越前。6-1で跡部が勝利した。
高校卒業後もテニスを続けるメンバーと将来の為に辞める跡部・忍足の覚悟の差が、スコアの差となって現れた2試合だった。
そして、スコア3-2で氷帝は念願の全国制覇を成し遂げたのである。
その夜。跡部の系列のホテルでは氷帝テニス部初の全国制覇を祝い、祝勝会が開かれた。
中学時代からテニス部を率いてきた跡部をはじめとして、レギュラー陣はその活躍を賞賛され、これでプレーヤーを引退するメンバーたちは惜しまれた。
そして陰でテニス部を支えたマネージャーとして滝と綾弥も同様に称えられ、労われた。
宴もやがて終わろうとする頃。
「綾弥、ちょっとええか」
それまで大勢の人に囲まれていた忍足が綾弥の許へとやってきた。隣には跡部もいる。
テニス部の部長・副部長としてマネージャーに労いの言葉を掛けにきたわけではない。そういう『公』の部分はとっくに済んでいる。だとすれば…。
忍足と跡部に連れられてきたのは、ホテルの庭の一角。美しくライトアップされた庭には他に人影はなかった。
「全国大会も終わったよってな。返事聞かせてもろうてええか?」
忍足は言う。
忍足は今日綾弥から返事を貰うつもりだと跡部に告げ、跡部もそれならばと同行すると言い出したのだ。
跡部は『応え』を要求したことはなかったが、綾弥が忍足に対して何らかの結論を出すのであれば、自分も無関係ではないと思ったのだ。
「お前が忍足を選んでも俺を選んでも、俺たちの関係が悪くなるようなことはねぇから安心しろ」
そう言って跡部も綾弥を促す。
「もう結論出てるんやろ?」
忍足の言葉に綾弥は頷く。
2人の告白を受けてから──正確には『答え』を求める忍足の告白を受けてから、綾弥はずっと自分に問い掛けてきた。 そして、結論は出ていた。
「私…
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