テレーシア・エーヴァ・ベーヴェルシュタム
ベーヴェルシュタム公爵家の令嬢で、王太子エーヴェルトの婚約者。
無属性魔法の血筋に生まれ、なかでも空間魔法を得意とする。
異空間収納や転移魔法を扱うことができ、その力は王国でも貴重なものとされている。
礼儀正しく、落ち着いた物腰の持ち主。
婚約者としての公務をそつなくこなし、宮廷行事の調整や貴族間の関係維持など、エーヴェルトが気づかないところでも多くの役割を担ってきた。
政略婚の意味を理解し、恋情がなくとも互いに信頼と親愛を築くことはできると考えている。
エーヴェルトが別の女性に心を寄せた際も、その気持ちを否定することなく、必要な手続きや責任について冷静に説明する。
しかし、彼が自分の意思や家の立場を軽んじていると気づき、王太子妃になることが本当に自分の望む未来なのかを見つめ直す。
やがて婚約解消を決意し、空間魔法の研究や領地の仕事など、自分自身の人生へと歩み出していく。
エーヴェルト・アウグスト・ルーデルス
ルーデルス王国の王太子で、テレーシアの婚約者。
王族として生まれたがゆえに、結婚相手を自由に選べないことに不満を抱いている。
政略婚によって王家の血筋と魔力を維持するという制度は理解しているものの、その意味や、自分以外の人々にも意思と事情があることを十分に理解できていない。
慈善事業や宮廷行事に熱心な伯爵令嬢オーサに惹かれ、彼女を王太子妃に迎えたいと考える。
テレーシアが恋情を強制しないと告げたことを、自分の望みを何でも叶えてよいという許可のように受け取り、婚約解消に必要な手続きや家同士の合意、血統上の問題を軽く考えてしまう。
また、オーサ本人の意思を確かめることなく、彼女も自分との結婚を望んでいると思い込んでいる。
しかし、テレーシアが婚約解消を決意し、オーサにも結婚を望まれていないと知ったことで、自分の考えの甘さと向き合うことになる。
自由を求めることと、その結果に責任を持つことは切り離せない。
彼女が去った後、初めてその働きの大きさと、相手を尊重することの意味に気づいていく。
オーサ・カリータ・アルフレッドソン
アルフレッドソン伯爵家の令嬢で、十七歳。
慈善事業や宮廷行事に熱心に参加しており、身分を鼻にかけない気さくさと、王族に対しても臆せず意見を述べる姿勢を持つ。
その率直さや自然な振る舞いが、王太子エーヴェルトの目には新鮮に映り、彼が心を寄せるきっかけとなった。
エーヴェルトから好意を向けられ、舞踏会でダンスに誘われるなど、周囲からも二人の関係を注目されるようになる。
しかし、彼が自分を王太子妃に迎える方法を探していることと、彼女自身がその立場を望んでいることは別の問題である。
エーヴェルトは彼女も結婚を望んでいると思い込んでいるが、実際のオーサは王太子妃になりたいと考えてはいなかった。
テレーシアとの婚約解消が決まった後、エーヴェルトから結婚の可能性を示されても、彼を嫌っているわけではないと率直に伝えたうえで、その申し出を断る。
かつて好意を抱いたことは認めながらも、相手への好意が必ずしも結婚や、その人の望む人生を選ぶことにつながるわけではないと示す人物。
自分の人生を自分で選ぶという点で、テレーシアと通じるものを持っている。
ステーン・バルタサール・セッテルルン
王太子エーヴェルトに仕える側近。
主君の行動を間近で見守りながら、必要な場面では慎重に言葉を選び、現実的な助言を与える。
エーヴェルトがテレーシア以外の女性を王太子妃に迎えようと考え始めた際も、ただ命令に従うのではなく、婚約者の説明を正しく理解しているのか、相手の令嬢本人の意思を確かめたのかと問いかける。
王家と公爵家の婚姻が単なる身分上の取り決めではなく、血筋や魔力、王位継承にも関わることを理解している。
そのため、伯爵令嬢を養女に迎えれば問題が解決するというエーヴェルトの考えに対しても、身分を変えただけでは血筋や魔力は変わらないと冷静に説明する。
主君の望みを頭ごなしに否定するのではなく、必要な手順や責任を繰り返し伝えようとする一方、エーヴェルトが自分に都合のよい部分しか受け取らないことには、もどかしさを感じている。
テレーシアの婚約解消が決まった後も、彼女の意思と主君の思い込みの違いを伝え続ける。
物事を進めるうえでは、望みを持つだけでなく、制度を理解し、関係する人々の意思を確かめることが必要だと示す存在である。
ヴァルテル・ベーヴェルシュタム
ベーヴェルシュタム公爵家の当主であり、テレーシアの父。
娘が王太子エーヴェルトの婚約者として果たしてきた役割を理解しており、彼女が軽んじられる様子を目の当たりにして、父親として厳しい目を向ける。
とりわけ、エーヴェルトが王家と公爵家の関係を当然視し、公爵家が別の令嬢を差し出せばよいと口にしたことは、見過ごせないものだった。
一方で、娘に対して自分の考えを押しつけることはしない。
テレーシアに、これからも王太子妃になるつもりなのかと問いかけ、彼女が本当に望んでいることを確かめようとする。
婚姻の義務を理解していることと、その婚姻を望んでいることは同じではない。
そのことを娘自身が考えられるよう、静かに向き合う。
テレーシアが婚約解消を望むと決めた際には、その意思を受け止め、必要な条件の確認や手続きを引き受ける。
王家との協議においても、血統維持の重要性を認めながら、娘の婚姻については本人の意思を尊重してほしいと求める。
娘の将来を王太子妃という立場だけに限定せず、自分の人生を選ぶ彼女を支える、落ち着きと責任感を備えた父親である。
ルーデルス国王
ルーデルス王国の国王で、王太子エーヴェルトの父。
王家の血筋と魔力を維持することの重要性を理解しており、ベーヴェルシュタム公爵家との婚姻が王家にとって大切な意味を持つことも認識している。
エーヴェルトとテレーシアの婚約をめぐる問題では、王太子の個人的な望みだけでなく、王家と公爵家の関係や、貴族社会に及ぼす影響にも目を向ける。
エーヴェルトが婚約者の立場や公爵家の意思を軽んじる発言をした際には、厳しい態度でそれをたしなめる。
テレーシアは公爵令嬢である以前に一人の人間であり、ベーヴェルシュタム公爵家も王家に仕えるためだけに存在しているわけではない。
その言葉には、王族の権威を理由に他者の意思を踏みにじることは許されないという考えが表れている。
やがて、舞踏会での失言やオーサへの強引な申し出、公爵家を軽んじる言動が王太子としての信頼を損なったと判断し、テレーシアの婚約解消を認める。
その一方で、ベーヴェルシュタム公爵家の血筋が王家にとって重要であることは変わらないため、今後の血統維持については改めて協議する方針を示す。
王家の責務と個人の意思、その双方を踏まえて判断を下す立場にある人物である。