国を思わぬ妃など必要ない

アルフォンシーナ・アウグスタ・フィチーノ

ピアツェラ伯爵家出身の、25歳の王后。
外交を得意とする家で育ち、父の仕事を補佐しながら、国と国との関係や外交のあり方を学んできた。
国王ティモテオの妻として、王后に求められる責務を理解し、日々の公務に誠実に取り組んでいる。
華美な装飾や自分の地位を誇ることよりも、相手の立場や事情を理解し、周囲と協力しながら物事を進めることを大切にしている。
外国の王族を迎える際にも、相手国の慣習や好みを踏まえた細やかな配慮を欠かさず、自然な会話と適切な応対によって信頼を築く。
その姿勢は、王宮の人々だけでなく、他国の王族からも高く評価されている。
自分の功績を誇ることなく、周囲の協力があってこそ務めを果たせるのだと考える謙虚さも持ち合わせている。
太王太后フィアンマから王室伝来の宝飾品を託され、王后としての働きを認められている。
王冠を得ることそのものではなく、王冠に伴う責任を引き受けることこそが王后の務めだと理解する女性。
夫ティモテオと支え合いながら、国の未来を守るために学び続けている。


ティモテオ・ファウスティーノ・フィチーノ

フィチーノ王国の国王。
王太后ドミティッラと先王ファビオの長男であり、ルーベンの兄。
幼い頃から、祖父マルティーノと祖母フィアンマのもとで王位を継ぐ者としての教育を受けてきた。
王家の歴史や国の成り立ちを学び、王族の判断が多くの人々の暮らしを左右すること、王冠は飾りではなく責任を伴うものであることを理解して育った。
誠実で謙虚な性格の持ち主。
穏やかな物腰を崩さず、相手の話に耳を傾ける一方、王家の規則や公務に関わる問題については、立場に左右されず冷静に判断する。
家族であっても、王族として果たすべき責務を免れることはできないと考えており、母ドミティッラや弟ルーベンに対しても、必要なときには国王として厳しい言葉を伝える。
妻アルフォンシーナを深く信頼しており、彼女の外交能力や細やかな気配りに助けられている。
妻の働きを当然のものとせず、その功績を認め、周囲の力を引き出してくれることに感謝している。
王家の権威を守るだけでなく、国の未来を見据え、王族一人ひとりが責任を持って務めを果たせるよう努める国王である。


ドミティッラ・ベッタ・フィチーノ

フィチーノ王国の王太后。
かつてはジャコモッティ伯爵家の令嬢で、王太子ファビオとの恋愛を実らせて王家に嫁いだ。
若い頃から美貌で知られ、華やかな衣装や宝飾品を身につけ、人々の注目を集めることを好む。
ファビオに深く愛され、二人の王子ティモテオとルーベン、そして第一王女を産み、王家の次代へと血をつなぐ役割を果たした。
一方で、王太子妃教育には苦労し、外交や公務に必要な知識を十分に身につけないまま王后となった。
夫ファビオが彼女を庇い、教育の負担を軽くしてきたこともあり、自ら努力して王后としての責務を果たすより、地位や美貌、周囲からの称賛に価値を見いだすようになった。
特に、息子ティモテオの妻アルフォンシーナが王后として信頼を集める姿を見ると、自分が得られなかった評価を彼女が自然に得ていることに嫉妬を覚える。
また、ルーベンには厳しい教育を必要ないと考え、自由に育てたため、王族としての責任を学ぶ機会を十分に与えなかった。
自分は王家に貢献したという思いが強く、当初は自らの振る舞いを省みようとしない。
しかし、ティモテオやフィアンマから王太后としての責務を問われ、次第に過去の栄光だけにすがっていてよいのか、自分自身を見つめ直し始める。


ボーナ・エルメリンダ・フィチーノ

フィチーノ王国の王弟妃。
国王ティモテオの弟ルーベンに嫁いだ女性で、王后アルフォンシーナの義妹にあたる。
王族の妻という立場に誇りを持ち、王宮で相応の敬意を払われることや、自分の存在を周囲に認められることを望んでいる。
特に、王后が人々から称賛され、太王太后フィアンマからも信頼されている姿を目にすると、羨望と不満を募らせてしまう。
アルフォンシーナが王室伝来の宝飾品を託されていることにも関心を寄せ、自分も王弟妃なのだから、同じように扱われてよいはずだと考えている。
王后と同じように活躍し、称賛されたいという願いはあるものの、外交や王族の公務に必要な知識と経験を積む努力は十分ではない。
相手国の慣習や事情を確かめずに贈答品の内容を変更するなど、自分の判断が周囲や国の利益にどのような影響を及ぼすかを考えられず、結果として自らの未熟さを露呈してしまう。
当初は、アルフォンシーナが自分を認めてくれないことに不満を向け、王后と同じ立場で扱われることを求める。
しかし、ティモテオやフィアンマから、王族の肩書きだけで信頼が得られるわけではないと諭され、少しずつ自分に足りないものを意識するようになる。
すぐに心を入れ替える人物ではないが、王弟妃として何ができるのかを学び、自分の望みと実力の違いを理解し始めている。


フィアンマ・マリーザ・フィチーノ

フィチーノ王国の太王太后。
85歳。
前々国王マルティーノの妻であり、先王ファビオの母、現国王ティモテオの祖母にあたる。
長年にわたり王家の歴史と、その栄枯盛衰を見守ってきた女性で、年齢を感じさせない凛とした佇まいと、物事の本質を見抜く確かな眼差しを持つ。
かつて王家では、王族や公爵家、侯爵家の間で婚姻が繰り返され、血縁が近くなりすぎた結果、子どもが生まれにくく、成人まで育つことも難しくなっていた。
夫マルティーノが王家の未来を守るため、少なくとも五世代にわたって王族や公爵家と婚姻関係のない家から妃を迎える方針を定めたことを、深く理解している。
王家が新たな家と縁を結ぶ目的は、血縁の偏りを正すだけでなく、より広い視野と知識を取り入れ、国の未来を支えることにあると考えている。
王族の妻に求めるのは、美しさや家柄、地位への執着ではなく、王家と国のために責務を果たす姿勢である。
王后として公務に励み、周囲との信頼関係を築くアルフォンシーナを高く評価し、王室伝来の宝飾品を託すなど、彼女の働きを認めている。
一方、王太后ドミティッラや王弟妃ボーナには、身分にふさわしい責任を果たすよう、毅然と諭す。
「国を思わぬ后など必要ない」という言葉に、王族の妻が担うべき責任と、王家の未来を守ろうとする揺るぎない信念が表れている。