白い結婚? ええ、喜んで。そもそも、あなたに興味はございませんもの

エルヴィーラ・ヘルミーナ・フォン・デットマー

デットマー侯爵家の令嬢。
かつて王太子妃候補として王宮で教育を受けた経験があり、外国語や儀礼、外交の基礎など幅広い知識を身につけている。
冷静沈着で合理的な思考の持ち主であり、感情や世間体に流されることなく、物事の本質を見極めて判断する才覚がある。
貴族の娘として家の利益を考え、政略結婚にも理解を示しているが、決して自分の人生を他人任せにする女性ではない。
フンベルトとの結婚も、両家の利益を考えたうえで受け入れたものだった。
しかし、夫から愛情も夫婦としての生活も拒絶されると、嘆き悲しむどころか、その状況を冷静に受け止め、自分にできることを探し始める。
白い結婚に関する法制度を調べ、証拠を積み重ねて婚姻無効を申し立てるなど、知識と行動力を武器に自らの道を切り開いていく。
侯爵夫人という肩書に執着せず、領地経営や新たな学びにも意欲的。
誰かに愛されることだけを人生の目的とせず、自分自身が納得できる生き方を選ぼうとする、知性と自立心にあふれた令嬢である。


フンベルト・ミヒェル・フォン・フリッチェ

フリッチェ侯爵家の嫡男。
長年愛し続けている男爵令嬢ゲルタとの結婚を望んでいるが、家格や国法の制約から、その願いをすぐには叶えられない事情を抱えている。
父の意向もあり、デットマー侯爵令嬢エルヴィーラとの政略結婚を受け入れるものの、結婚式を終えた直後、彼女に対して愛するつもりはないと宣言。
夫婦としての生活を拒み、寝室を別にすることまで一方的に告げる。
自分の愛を貫くことに意識が向きすぎており、エルヴィーラにも彼女自身の考えや人生があるという事実を十分に理解していない。
また、彼女が自分に恋慕しているはずだと思い込むなど、相手の気持ちを確かめることなく、自分に都合のよい解釈をする一面もある。
いずれエルヴィーラと離婚すればゲルタと結婚できると考えていたが、白い結婚と婚姻無効の法的な違いを正しく理解していなかったことが、計画を大きく狂わせる。
自らの言動が招く結果を十分に考えないまま突き進んだ彼は、やがて愛と将来への思い込みを現実によって問い直されることになる。


ゲルタ・バーレ

バーレ男爵家の令嬢で、フンベルトが長年愛している女性。
エルヴィーラより四歳年上の二十四歳で、フンベルトとの恋を成就させ、侯爵家の正式な妻となる未来を望んでいる。
フンベルトが自分を愛していることに自信を持ち、今回の政略結婚も国法上の都合にすぎず、いずれ自分が正妻になれると考えている。
そのため、エルヴィーラに対しても、侯爵夫人という立場にありながら愛されていないのは寂しいことではないかと問いかけ、二人の関係に自分の優位を示そうとする。
しかし、エルヴィーラがフンベルトに恋愛感情を抱いておらず、侯爵夫人という肩書にも執着していないと知ると、思い描いていた構図は崩れてしまう。
フンベルトとの結婚を望む気持ちには愛情だけでなく、侯爵夫人という地位や将来の暮らしへの期待も絡んでいる。
ところが、婚姻無効によってフンベルトとの結婚が思うように進まなくなると、彼に対して強い不満をぶつけることになる。
愛する相手と結ばれる未来を信じていた彼女もまた、自分の望みと現実との隔たりに直面する人物である。


アライダ・フォン・クレール

エルヴィーラに仕える侍女。
主人であるエルヴィーラのそばで、彼女の身の回りの世話をするだけでなく、困難な状況をともに乗り越える頼もしい協力者でもある。
結婚初日にフンベルトから夫婦生活を拒絶された際には、エルヴィーラの身を案じながらも、彼女が冷静に受け止めていることを確かめ、必要以上に騒ぎ立てることはしない。
エルヴィーラとは気心が知れており、時には一緒に笑い、時には率直な意見を交わす間柄である。
白い結婚をめぐる問題では、婚姻に関する法令や過去の裁定記録を調べ、証拠の保全にも協力する。
主人の指示をただ待つのではなく、状況を理解して必要な行動を取る実務能力と判断力を備えている。
エルヴィーラが婚姻無効の手続きを進める間も、その傍らで支え続け、実家に戻った後も予定の管理や情報の整理を担う。
主人の知性と決断力を信頼し、彼女が自分らしい人生を歩めるよう、実際的な面から支える忠実な侍女である。


ラルフ・ペートルス・フォン・デットマー

エルヴィーラの父であり、デットマー侯爵家の当主。
領地経営に熱心で、農業・商業・観光業を柱に、街道や流通網の整備を進め、領民が豊かに暮らせる領地づくりに取り組んでいる。
娘を深く大切に思っている一方、侯爵としての責任と家の利益を冷静に考える現実的な人物でもある。
フリッチェ侯爵から持ちかけられた縁談についても、領地同士の関係や貴族社会における勢力の均衡など、さまざまな事情を考慮したうえで、苦渋の決断としてエルヴィーラの結婚を認めた。
結婚初日に娘が夫婦生活を拒絶されたと知ると、事情を理解し、彼女自身の判断を尊重する姿勢を示す。
必要な証拠を保全し、法務官に相談するよう助言する一方、娘に無理をしないよう気遣うことも忘れない。
エルヴィーラが婚姻無効を認められて実家に戻ると、帰還を喜び、これからの人生についてともに考えようとする。
そして、以前から娘が関心を寄せていた領地の街道整備計画に携わる機会を与える。
娘を守るだけでなく、その能力と意志を認め、成長を後押しする父親である。


アンゲラ・アリーセ・フォン・ヴォールファールト

王太子妃で、エルヴィーラが王宮での教育を受けていた頃から親しく付き合う友人。
エルヴィーラにとって、身分や立場を超えて率直に話ができる大切な存在である。
エルヴィーラがフンベルトとの結婚を解消し、婚姻無効によって自由を取り戻した後も、彼女を気遣い、王宮でのお茶会に招いて温かく迎える。
フンベルトの身勝手な振る舞いには呆れつつも、エルヴィーラが本当に傷ついていないかを慎重に確かめるなど、友人への思いやりを持っている。
エルヴィーラが夫を愛していたわけではないと語ると、自分と似ているところがあると感じ、親しみを込めて笑い合う。
彼女は、エルヴィーラの今後についても関心を寄せ、実家で領地経営を手伝いながら学びたいという希望を聞き、再婚についても急かすことなく、必要なら相手を探す手助けをすると申し出る。
そして何より、エルヴィーラ自身の人生なのだから、自分の望む道をゆっくり考えればよいと伝える。
王太子妃という立場にありながら、友人の気持ちと選択を尊重し、自分らしく生きることを後押しする、頼もしく温かな女性である。