フェリーチャ・ロレーナ・アリオスト
アリオスト公爵家の令嬢。
二十歳。
十歳のとき、神殿の水晶がまばゆい光を放ったことをきっかけに神託を受け、大聖女に任じられた。
浄化と結界の聖属性魔法に優れ、幼いころから魔獣討伐に同行し、負傷者の治療や危険な土地の浄化に力を尽くしてきた。
騎士や兵士たちからの信頼も厚く、聖女としての力だけでなく、広い視野と責任感を備えている。
王太子ジャンフランコの婚約者として、彼の公務を支え、将来の国と民を守る立場にふさわしい判断を求めてきた。
しかし、アルマを寵愛するジャンフランコは彼女の忠告を疎み、ついには正式な手続きを踏まずに婚約を破棄し、大聖女の地位まで奪ってしまう。
フェリーチャは自らの正当性を訴え続けることをやめ、王都を離れて公爵領の神殿で働く道を選んだ。
失われた称号やかつての婚約者に執着することなく、授かった力を人々のために使い続けている。
目の前の領地だけでなく、結界によって魔獣が隣接する土地へ追いやられる可能性まで考慮するなど、力の使い方にも深い責任感を持つ女性。
自分の人生を他人に委ねず、自らの意思で居場所を築いていく。
ジャンフランコ
王太子。
フェリーチャの元婚約者であり、聖女アルマを深く寵愛していた人物。
かつてはフェリーチャの忠告に耳を傾け、自らの判断を省みることもあった。
しかし、王太子としての公務の遅れや判断の甘さを指摘されることに疲れ、何をしても自分を肯定してくれるアルマの言葉に安らぎを求めるようになる。
やがて彼女の訴えを一方的に信じ、フェリーチャがアルマを虐げていると決めつけてしまう。
そして、婚約破棄だけでなく、神託によって任じられた大聖女の地位まで剥奪するよう命じた。
しかし、聖女を罷免する権限は王太子にはなく、正式な手続きも行われていなかった。
アルマが神罰によって命を落とした直後、ジャンフランコ自身も全身を襲う激痛と肉体の壊死に苦しむことになる。
さらに王太子の地位も失い、かつての栄光を取り戻すことはできなくなった。
彼は次第に、自分がアルマに騙されただけではなく、耳に痛い忠告から逃げ、自分に都合のよい言葉を選び続けたことに気づいていく。
フェリーチャに戻ってきてほしいと願うが、彼女が再び自分のために生きることはない。
自らの判断と責任から逃れられなかった王太子である。
アルマ・カタリーナ・レベッキ
レベッキ伯爵家の令嬢。
十五歳のときに聖属性の治癒魔法を発現させ、神殿の水晶を光らせたことで聖女に認定された。
優れた治癒能力を持ち、傷を癒やすだけでなく、膨大な魔力を消費しながら、失われた四肢を元どおりにするほどの治療も行える。
その力で多くの人々を救い、かつては神殿で熱心に奉仕活動に取り組んでいた。
彼女が人々から愛され、王太子ジャンフランコの目に留まったのには、確かな理由があった。
しかし、ジャンフランコと親しくなり、王太子の寵愛を受けるようになるにつれ、少しずつ変化していく。
自分を肯定してくれるジャンフランコの存在を背景に、自分に逆らう者を彼の権力で罰しようとし、フェリーチャからの厳しい忠告も嫌がらせだと受け取るようになった。
フェリーチャが公の場で自分の振る舞いを批判したことは事実だが、アルマは自身の行動や忠告された理由を語らず、被害を受けた側としてジャンフランコに訴え続けた。
やがて、自分は聖女として特別な存在であり、何をしても許されると思い込むようになる。
王宮の夜会でフェリーチャの失脚を誇ったそのとき、神の御声とともに雷に打たれ、命を落とした。
彼女が救った命と、彼女自身が犯した過ちは、どちらも消えることのない事実として残される。
アニチェート・アルチーデ・ベルティネッリ
二十五歳。
侯爵家の次男で、王族に仕える近衛騎士。
武勇よりも思考力に秀でており、王族の命令だからという理由だけで無条件に信じることはしない。
聖女アルマが王宮の夜会で神罰を受けて命を落とし、王太子ジャンフランコ自身も謎の苦痛に襲われるという事件を受け、ジャンフランコの命令で調査を開始する。
まず、かつての大聖女フェリーチャ・ロレーナ・アリオストを訪ね、事件について話を聞く。
その後、神殿の記録庫で聖女の認定や罷免に関する文書を調べ、フェリーチャの地位剥奪に大神官の正式な承認がなかったことを突き止める。
さらに大神官や、アルマの奉仕活動を知る神官たちから話を聞くことで、事件の背景にある権限の逸脱と、聖女として授かった力の使い方という問題に迫っていく。
調査を通じて、アルマが人々を救ってきた功績を認める一方で、その功績が後の行いを正当化するわけではないと理解していく。
また、ジャンフランコに対しても、アルマを愛していたことと彼の判断が正しかったことは別だと冷静に指摘する。
事件の真相を追うだけでなく、言葉を信じることと、その言葉だけで他人を裁くことの違いを学んでいく人物。
フェリーチャの選択を尊重し、彼女が自らの人生を歩む姿を見届ける。
物語の真相解明と、登場人物たちの行いを見つめ直す役割を担っている。