恋愛結婚をご所望でしたら、まず爵位を捨ててくださいませ

マリアンネ・ハンネ・ラウティオラ

ラウティオラ公爵家の跡取り娘。
王立学院に通いながら、将来の当主として貴族社会の慣習や領地経営、家同士の結びつきについて学んでいる。
公爵家の後継者として生まれ育った彼女は、政略結婚を必ずしも不幸なものとは考えていない。
婚姻が家の利益のために決められたとしても、相手の人柄を知り、互いの考えを理解し、信頼を築くことはできると信じているからだ。
父ヴィエノが、かつて愛した女性との結婚を諦めた悲劇を繰り返し語り、その責任を母イルメリに押しつけていることに疑問を抱く。
母とともに過去の記録を調べるうち、父が自ら選んだ道と、その選択によって得たもの、失ったものを知っていく。
感情だけで物事を決めつけず、事実を確かめたうえで筋道を立てて考える冷静さと、公爵家を継ぐ者としての責任感を備えた令嬢。
婚約者トルスティとの未来を見つめながら、恋愛と結婚、そして自らの選択に責任を持つことの意味を考えていく。


イルメリ・カティヤ・ラウティオラ

ラウティオラ公爵家の当主であり、マリアンネの母。
先代公爵の一人娘として家を継ぎ、広大な領地と複数の交易都市を治めている。
領地経営や家の運営を自ら担う有能な女性で、婚姻についても感情だけに流されず、家格や財産、後継者、両家にもたらされる利益などを慎重に見極める。
夫ヴィエノとの結婚も、家を支え、後継者を育てるための契約として成立したものだった。
ヴィエノは長年、愛する女性との結婚を諦めたのはイルメリとの婚姻のせいだと主張してきたが、彼女はその嘆きに感情的に反論するのではなく、婚姻契約や当時の記録を示し、事実を明らかにしていく。
夫婦関係の清算に際しても、契約に基づいて淡々と対応し、公爵家の財産と責任の所在を明確にする。
冷静沈着で実務に長け、相手の言葉よりも記録と事実を重視する人物。
娘に対しても一方的に答えを押しつけるのではなく、自ら考え、判断できるよう導いている。


ヴィエノ・アーポ・ラウティオラ

マリアンネの父であり、イルメリの夫。
アンケロ伯爵家の三男として生まれたが、家を継ぐ立場にはなく、自身の爵位や領地も持っていなかった。
貴族としての地位を得るため、ラウティオラ公爵家の当主イルメリに婿入りし、婚姻期間中に限ってキヴィコスキ伯爵を名乗る立場と、裕福で安定した暮らしを手に入れた。
一方、かつてはヘイディという女性と愛し合い、夫婦になることを約束していたと語る。
彼はその恋を諦めたことを長年の悲劇として捉え、イルメリとの結婚を余儀なくされた被害者のように振る舞ってきた。
しかし実際には、婿入り先を選ぶ際に家格や生活環境、将来の安定を考慮しており、自らの功績で爵位を得る道や、貴族の身分を捨ててヘイディと暮らす道も選ばなかった。
自分の選択によって得た利益を享受しながら、その代償を妻の責任としてきた人物である。
婚姻の解消によって爵位や生活の基盤を失い、愛する女性との暮らしを自らの力で支える現実に直面する。


トルスティ・サムエル・リュリュコルピ

リュリュコルピ伯爵家の三男で、マリアンネの婚約者。
17歳で、王立学院の騎士科に在籍している。
伯爵家の三男という立場から家を継ぐ予定はなく、将来の身分や生活を自ら築いていく必要がある。
そのため、誰かの婿となって地位を得るのではなく、自身の功績によって騎士爵を得る道を目指している。
学業成績は良好で、剣術の実習では堅実な戦い方を評価され、騎士団での短期実習でも指導官から好意的な所見を受けている。
婚約に際しても、マリアンネとの結びつきを利用して騎士爵を得ようとは考えていないとされ、自らの努力で立場を築こうとする姿勢がうかがえる。
マリアンネとの婚約は、両家の利益や外交、交易などを考慮して成立したものであり、二人は物語の始まりではまだ顔合わせを控えている段階にある。
マリアンネにとって彼は、恋愛感情の有無だけで結婚の価値を決めるのではなく、互いを知り、信頼を育てていく可能性を持つ相手。
堅実な努力と自立を志す姿勢が、彼女の結婚観と重なる人物である。