恋の花が咲く

エティエンヌ

ゴーベール王国第二王子/ロクサンヌの婚約者
エティエンヌは、ゴーベール王国の王太子夫妻の第四子として生まれた第二王子。
三歳のときにジュヴェ公爵家の令嬢ロクサンヌと婚約し、初めて出会った日から彼女に惹かれている。
幼いころは、恋をすると花が舞うという絵本の描写を信じ、自分たちの気持ちが恋だと気づかないほど純粋な少年だった。
成長してからもロクサンヌへの愛情は変わらず、彼女の笑顔を守り、悲しいときには寄り添い、何でも相談してほしいと願っている。
恋文ひとつ書くにも悩み抜き、彼女からの贈り物を宝物として大切にするなど、愛情深く一途な性格の持ち主である。
ロクサンヌから、自分が乙女ゲームの攻略対象であり、将来はヒロインと結ばれる運命にあると打ち明けられた際も、彼女の話を信じ、未来を二人で変えることを決意した。
一方で、相手を思いやるだけでなく、事実を確かめ、感情に流されず判断する冷静さも備えている。
王族としての責任を自覚しながら、自分の意思で愛する人を選ぶことを貫く、誠実で頼もしい王子である。


ロクサンヌ

ジュヴェ公爵家の令嬢/エティエンヌの婚約者
ロクサンヌは、王国の重鎮であるジュヴェ公爵家の孫娘で、ジュヴェ小公爵の末娘。
三歳でエティエンヌと婚約し、幼いころから互いを大切に思い合ってきた。
七歳のとき、前世の記憶を取り戻したことで、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していると知る。
ゲームの筋書きでは、婚約者のエティエンヌはヒロインと恋に落ち、自分は婚約を破棄される運命にある。
その未来を恐れながらも、彼を失いたくない一心で、勇気を出して真実を打ち明ける。
彼女の魅力は、愛する人への深い想いと、恐怖に向き合う勇気を併せ持つところにある。
不安を抱えても相手を一方的に責めるのではなく、自分の気持ちを伝え、二人で解決しようと努力する。
また、貴族社会の派閥関係にも目を配り、問題の背景を見極める聡明さも備えている。
エティエンヌに守られるだけの存在ではなく、自らも彼を支え、隣に立つにふさわしい人間になろうと成長していく。
運命に従うのではなく、自分自身の意思で恋と未来を選び取る、気高く愛情深い令嬢である。


レオニー

ヴェリエ男爵家の令嬢/乙女ゲームのヒロイン
レオニー・ヴェリエは、栗色の髪を揺らして明るく振る舞う少女。
王立学園への入学を機にエティエンヌと出会い、彼に積極的に接近する。
彼女は自分が乙女ゲームのヒロインであると認識しており、ゲームの筋書きどおりにエティエンヌが自分に惹かれ、婚約者のロクサンヌではなく自分を選ぶと信じている。
しかし、現実のエティエンヌはロクサンヌを深く愛しており、レオニーに対しては礼儀正しく接するだけで、特別な好意を示さない。
期待どおりに進まない状況に苛立った彼女は、自分の行動を省みるのではなく、ロクサンヌが自分を不当に扱っているという噂を流し始める。
事実を誇張し、都合よく解釈することで、周囲の同情を得ようとするのだ。
やがて公の場でもロクサンヌを非難するが、具体的な根拠を求められると主張の矛盾が明らかになる。
彼女の問題は、誰かを好きになったことそのものではなく、自分が望む結末を当然の権利と考え、他人の意思や名誉を軽視してしまう点にある。
物語では、定められた筋書きへの執着が、現実の人々との関係を歪めていく姿が描かれている。


エロイーズ

デュフレノワ公爵家の令嬢/第三王子の婚約者
エロイーズ・デュフレノワは、ロクサンヌと同学年の公爵令嬢で、第三王子の婚約者。
王国の貴族派を率いるデュフレノワ家の一員として、貴族社会の事情や派閥間の関係に精通している。
聡明で礼儀正しく、穏やかな社交性を持ちながらも、問題に直面した際には曖昧な態度を取らず、必要なことをはっきりと指摘できる芯の強さがある。
ロクサンヌとは良好な関係を築いており、将来は義姉妹として親しく付き合うことを楽しみにしている。
エティエンヌに近づいたレオニーを紹介したのが自分の双子の弟だと知ると、単なる個人間の問題として片づけず、家の立場にも影響しかねない事態として受け止める。
そして弟の行動を確認し、軽率さを厳しく叱責するとともに、弟個人の判断と家全体の意思を明確に区別する。
こうした対応からは、身内を無条件にかばうのではなく、責任ある立場として公正に対処する姿勢がうかがえる。
また、ロクサンヌと協力してレオニーの噂の真偽を確かめ、問題の解決を支える。
知性と実務的な判断力を兼ね備えた、頼りがいのある令嬢である。


フィリベール第一王子

王太子夫妻の長男/エティエンヌの兄
ゴーベール王国の王太子夫妻の長男であり、エティエンヌにとって年上の兄にあたる人物。
物語冒頭では十三歳で、弟エティエンヌよりも年長の立場から、幼い弟とその婚約者ロクサンヌを温かく見守っている。
二人が初めて顔を合わせた際には、ロクサンヌに頼もしい言葉をかけるエティエンヌの姿を楽しげに眺め、幼い二人の仲睦まじさを微笑ましく受け止めていた。
成長したエティエンヌがロクサンヌへの恋文の書き方に悩んでいるときにも、弟の様子を見てからかうなど、親しみやすく茶目っ気のある一面を見せる。
特に、ロクサンヌの父親に気に入られようと身だしなみを整える弟に対し、「義父上に気に入られることだ」と冗談めかして励ます場面からは、弟の恋愛事情をよく理解し、面白がりながらも応援している様子が伝わってくる。
エティエンヌを過度に干渉して導くのではなく、本人の気持ちを尊重しつつ、兄として適度な距離から支える存在である。
登場場面は多くないものの、弟の一途な恋を肯定的に見守る、余裕と温かさを備えた兄として描かれている。
なお、王位継承に関する具体的な考えや政治的な手腕については、作中で詳しく描写されていない。


エクトル

ジュヴェ公爵/ロクサンヌの祖父。
ゴーベール王国の重鎮であり、ジュヴェ公爵家の当主。
ロクサンヌの祖父で、王国の政治においても大きな存在感を持つ人物。
ジュヴェ公爵家は辺境派の筆頭として知られ、王族との婚姻を通じても王国の中枢と深く結びついている。
孫娘ロクサンヌを深く慈しみ、その成長を温かく見守る一方、公爵家を率いる者としての落ち着きと威厳も備えている。
ロクサンヌとエティエンヌが三歳で初めて顔を合わせた際には、二人が互いに好意を抱いた様子を見て満足げに頷き、幼い二人の仲を喜んだ。
孫娘を溺愛するあまり、婚約を複雑な心境で受け止める息子ベルトランに対しては、エティエンヌがロクサンヌの心を込めた贈り物を喜んだのはよいことだと諭すなど、家族の間を取り持つ一面もある。
ロクサンヌの結婚式では、孫娘が幸せになることこそ何より大切だと語り、エティエンヌに孫を託す。
厳格な公爵でありながら、孫娘への愛情は隠しきれず、結婚式の最中にはひ孫を楽しみにする発言で周囲を笑わせることも。
家の威厳と家族への深い愛情を併せ持つ、ジュヴェ公爵家の頼れる当主。


ベルトラン

ジュヴェ公爵家の次期当主/ロクサンヌの父
三男一女の子どもを持ち、末娘であるロクサンヌをことのほか溺愛している。
愛らしい娘が成長し、いつか嫁いでしまうことを思うだけで胸中は複雑。
ロクサンヌが三歳でエティエンヌと婚約した際にも、幼い娘が早くも婚約者を持つことに戸惑いを隠せず、王子が娘を抱きしめようとする様子には、まだ早いのではないかと心配するほどである。
娘を大切に思うあまり、エティエンヌに対してはつい過保護になってしまうが、ロクサンヌの幸せを願う気持ちは誰よりも強い。
父親としては、娘が愛する相手と結ばれることを喜ばしく思いながらも、手放す寂しさを簡単には割り切れない。
そんな親心は、ロクサンヌの結婚式で最高潮に達する。
とうとう娘が嫁いでしまうと、式の最中から涙を流し、周囲にたしなめられても悲しみを抑えられない。
三人の息子たちが妹の門出を見守るなか、父親だけは大いに嘆き、参列者たちの笑いを誘う。
威厳ある公爵家の次期当主でありながら、愛娘の前ではすっかり親ばかになってしまう、どこか憎めない父親。


アレクシ王弟殿下

王弟/魔術師/エティエンヌの叔父
エティエンヌの叔父にあたる王族で、魔法に長けた人物。
幼いエティエンヌとロクサンヌが、互いに惹かれ合っているにもかかわらず、絵本のように花が舞わないから恋ではないと思い込んでいたとき、二人の会話を耳にして興味を持つ。
そこで、恋する気持ちを花として目に見える形にしてみせようと、魔法を披露する。
ロクサンヌの周りには桜色の花々を、エティエンヌの周りには澄んだ青色の花を舞わせ、二人に自分たちの気持ちを理解させた。
幼い二人の純粋なやり取りを優しく見守り、恋心を確かめるきっかけを与えた人物である。
その後もエティエンヌにとって、魔法を教わる頼れる叔父として関わっている。
エティエンヌがロクサンヌの不安を和らげるため、彼女の周囲に花を咲かせる魔法を習おうとした際には、恋心を確かめるために魔法に頼ることを戒めた。
魔法の力を持ちながらも、恋愛において本当に大切なのは術による証明ではなく、相手の気持ちを理解し、信じ合うことだと示唆する存在。
二人の恋を象徴する桜色と青色の花は、彼が幼い二人に見せた魔法から始まっている。