価値観の相違

ロレンシオ・サジャス

王国の王太子。
王立学園に在学中、平民出身の特待生イネス・ロペスと出会い、身分を気にせず率直に話せる彼女に惹かれる。
王族の言動に政治的な思惑を読み取ろうとする者たちに囲まれる日々の中で、イネスと過ごす時間は、王太子としての重責を忘れられる貴重なひとときだった。
しかし、彼女に対する愛情は、将来の結婚や王太子妃の座を約束するものではない。
一方、婚約者であるエルミラ・ビジャレホ公爵令嬢とは、恋人同士の甘い関係とは異なる、深い信頼を築いている。
国の将来や領地経営について意見を交わし、互いの立場と責任を理解し合える彼女を、王妃となるにふさわしい人物として認めている。
やがてエルミラに対する虚偽の告発が持ち上がると、私情だけで判断することなく、正式な調査を命じ、公正な事実確認を進める。
愛する相手の過ちを見過ごすことも、感情を理由に責任を放棄することもできない、誠実で理性的な人物。
即位後もエルミラと意見を交わしながら、互いの違いを認め合い、国を治めていく。


エルミラ・ビジャレホ

王太子ロレンシオ・サジャスの婚約者である、公爵令嬢。
将来の王妃としての責任を自覚し、学業に励む傍ら、外交史、財政、領地経営、宮廷儀礼など、国を支えるために必要な知識を積極的に身につけている。
華やかな衣装や宝飾品を身につける一方で、それらを単なる贅沢とは捉えていない。
衣装の注文が仕立師や刺繍職人、織物商など多くの人々の仕事を支え、経済の循環につながることを理解しており、貴族の消費にも責任が伴うと考えている。
ロレンシオとは、国の将来について率直に意見を交わし、互いの判断を尊重する関係を築いている。
一方、騎士見習いのデメトリオ・ファリアスと話す時間も大切にしており、彼に好意を抱いている。
しかし、それは婚約を解消して彼と結ばれたいという願いではなかった。
ところが、イネスをめぐる騒動の中で、デメトリオが自分への好意を利用し、名誉を傷つける告発に加担した事実を知ることになる。
相手を好きだった気持ちと、その人物の行為を許せるかどうかは別の問題だと理解し、失望を抱えながらも自分の意思と尊厳を守ろうとする。
のちに王妃となってからも学びを続け、ロレンシオとともに国の未来を担っていく。


イネス・ロペス

平民出身の優秀な特待生。
努力によって王立学園への入学を果たし、学業に励む中で王太子ロレンシオ・サジャスと出会う。
身分を恐れて萎縮することなく、自分の考えを率直に口にする姿や、知らないことを素直に学ぼうとする姿勢がロレンシオの心を捉え、二人は互いに愛情を抱くようになる。
イネスもまた、彼の優しさや自分を認めてくれる態度に惹かれ、いつしか彼の隣に立ち、正妃となる未来を夢見るようになる。
しかし、ロレンシオにとって彼女の能力は、王太子妃になることだけでなく、教育事業などを通じて社会に役立てることのできる大切な資質だった。
彼の愛情を自分の望む未来が実現する保証のように受け取ったイネスは、婚約者のエルミラ・ビジャレホに嫉妬し、彼女から不当な扱いを受けたと訴える。
さらにデメトリオ・ファリアスと手を組み、エルミラを排除しようとするが、調査によって告発の虚偽が明らかになり、自らの行為と向き合うことになる。
事件後は特待生としての立場を失い、家庭教師として働きながら、自分の力で新たな道を模索する。
努力することと、努力を理由に他人へ何かを要求することは違う。
その事実を少しずつ学び直し、やがて子供たちに学ぶ喜びを伝える教育の道を歩み始める。


デメトリオ・ファリアス

子爵家の三男で、騎士見習いとして修業に励む青年。
継ぐべき爵位を持たず、騎士として出世するにも長い道のりが待っているという現実を抱えている。
以前から、王太子の婚約者であるエルミラ・ビジャレホ公爵令嬢に憧れを抱いており、身分の違いから決して結ばれることのない相手だと思っていた。
しかし、エルミラが自分との会話を楽しみ、柔らかな表情を見せるようになると、彼女も自分に好意を抱いているのではないかと考え始める。
彼女を好きだという気持ちは本物だったが、その隣には、彼女と結ばれることで公爵家の後援を得て、自らの地位を高めたいという野心も膨らんでいく。
やがてロレンシオの正妃の座を望むイネス・ロペスと手を組み、エルミラがイネスに嫌がらせをしたとする告発に加担する。
エルミラとの婚約が解消されれば、彼女と結婚し、公爵家の力を借りて爵位を得られるかもしれないと期待していた。
しかし、調査によって証言の矛盾や私的な野心が明らかになり、宮廷での任務を停止される。
エルミラから好意を寄せられていたことは、彼女の人生を自分の望むように動かせるという意味ではなかった。
相手の気持ちを尊重することよりも、自分が得られる利益を優先した結果、彼は憧れの女性との信頼関係も、自らの将来を切り開く機会も失うことになる。