悪役令嬢は目の前の人を見ていない

レイチェル

乙女ゲームの悪役令嬢に転生した公爵令嬢。
王太子サイラスの婚約者であり、義弟デリックや幼馴染のアレン、ゴドフリーとも関わりを持つ。
前世で遊んでいた乙女ゲームの記憶から、いずれ攻略対象たちに裏切られ、卒業パーティーで断罪された末に命を落とすと信じ込んでいた。
そのため、破滅を回避しようと周囲の人々を警戒し、彼らの言動をゲームの筋書きに当てはめては、相手の気持ちを確かめることなく距離を置いてきた。
しかし、サイラスから「目の前の人間を見ていない」と指摘されたことで、自分が現実の相手ではなく、思い込みの中の人物ばかりを見ていたことに気づく。
自らの過ちを認め、家族や友人、婚約者に謝罪し、一人ひとりと向き合い直すことを決意する。
やがて学園で起きたブローチ紛失騒動でも、感情や先入観に流されず、事実を確かめる姿勢を貫くようになる。
失敗やすれ違いを恐れるあまり他人を遠ざけていた彼女は、対話を重ねることの大切さを学び、誰かが決めた物語ではなく、自分自身の意思で未来を選び始める。


サイラス

王太子であり、レイチェルの婚約者。
穏やかで優しく、努力家な一面を持つ一方、相手の思い込みや不誠実な態度に対しては、曖昧にせず率直に指摘する芯の強さも備えている。
幼い頃からレイチェルを知っており、刺繍に失敗して落ち込んでいた彼女を、自分の不器用な刺繍を見せて慰めたこともある。
彼にとってレイチェルとの婚約は、単なる政略上の取り決めではなかった。
負けず嫌いで、何事にも一生懸命に取り組み、失敗すれば人知れず努力を重ねる彼女の姿を見つめ、好意を抱いていた。
しかし、レイチェルが自分を乙女ゲームの攻略対象としてしか見ず、いずれ裏切る相手だと決めつけていることに気づき、深く傷つく。
彼女の事情を聞いた後も、すぐに許すことはせず、彼女の言葉が真実かどうかと、彼女が人をどう扱ってきたかは別の問題だと伝える。
学園でブローチ紛失騒動が起きた際にも、レイチェルを無条件に庇うのではなく、双方の話を聞いて事実を確認しようとする。
互いの気持ちを決めつけず、言葉を交わしながら理解し合う関係を望む、誠実な人物である。


マイナ

淡い金色の髪ときらきらとした大きな瞳が印象的な、小柄な少女。
乙女ゲームではヒロインに当たる存在で、学園に入学すると、その愛らしい笑顔で周囲の人々の目を引く。
王太子サイラスとも親しくなろうとするが、彼が公務を理由に誘いを断ると、レイチェルがいるから自分と話してくれないのだと思い込み、不満をぶつけてしまう。
自分の望みがかなわなかったり、相手から思いどおりの反応を得られなかったりすると、相手の事情や本心を確かめる前に、嫌われている、邪魔をされていると受け取ってしまうところがある。
卒業記念品のブローチが見当たらなくなった際にも、レイチェルによく似た人物を遠くから見かけた記憶をもとに、彼女が盗んだのだと思い込み、周囲に訴える。
しかし、調査によって自分の記憶と推測が事実とは限らないことを知り、レイチェルに謝罪する。
レイチェルとは異なる形で、目の前の相手を自分の思い込みで判断してしまう人物であり、その過ちを通して物語の主題を浮かび上がらせる存在でもある。
自分の間違いを認め、これからは相手の話をきちんと聞こうとする姿勢を見せるが、謝罪したからといって、すぐに親しい関係になれるわけではないことも描かれている。