ドアマット&お飾りにされそうな伯爵夫人、侯爵家の正統後継者につき

マリアネラ・ラボイ

ガルドス侯爵家の令嬢であり、同家に代々受け継がれる固有魔法を持つ正統な後継者。
三歳という幼さで固有魔法を発現させ、早くからその力を制御した類まれな才能の持ち主である。
先代侯爵から正式な後継者に指名されていたが、娘が自分を超えることを恐れる父イポリトによって、その立場を十分に認められず、不本意な縁談を押しつけられる。
嫁いだ先のラボイ伯爵家では、夫フリオが愛人ラモナを公然と囲い、マリアネラを社交の場に立つだけのお飾りの妻として扱う。
さらに、父に助けを求めても夫婦間の問題として退けられ、彼女は自分の人生を自ら切り開く決意を固める。
感情に流されず、事実や記録、規則に基づいて物事を進める冷静さと、権利を踏みにじられても決して屈しない芯の強さを備えている。
叔父エリベルトの助力を得て離婚を成立させ、先代の指名書と固有魔法の記録によって正統な後継者として認められた後は、マリアネラ・ガルドスとして侯爵家を率いる道を歩み始める。
誰かの都合に従うのではなく、自らの意思と責任で未来を築こうとする女性。


フリオ・ラボイ

ラボイ伯爵家の当主で、三十三歳。
爵位こそ伯爵だが、家計は逼迫しており、個人的な遊興費と家の支出を混同するなど、金銭管理は杜撰。
取引先への支払いを滞らせる一方、愛人ラモナには惜しみなく金を使っている。
マリアネラとの結婚に求めていたのは、妻との信頼関係や夫婦としての絆ではなく、ガルドス侯爵家との縁によって得られる信用と資金繰りの余裕だった。
結婚初日からラモナを愛していると公言し、マリアネラには伯爵夫人として社交の場で妻を演じることだけを求め、屋敷の運営や金銭の使い方に口を出すことを許さない。
ラモナが正妻の私室に立ち入り、私物に触れても彼女をかばうなど、妻の立場や権利を軽んじる振る舞いが目立つ。
マリアネラが改善の機会を与えても態度を改めず、離婚を突きつけられて初めて、侯爵家の後ろ盾を失うことの重大さを思い知る。
離婚成立後は、取引先からの信用や経済的な余裕を失い、自らの放漫な経営と向き合わざるを得なくなる。
妻本人ではなく、その家柄と信用を利用しようとした男である。


ラモナ

フリオ・ラボイ伯爵の愛人。
二十代後半ほどの女性で、華やかな化粧と肌を大胆に見せる衣装を好み、貴族の令嬢とは異なる奔放な雰囲気を漂わせている。
フリオとの長い付き合いを背景に、彼の妻となったマリアネラに対しても遠慮がなく、結婚初日から正妻の立場を軽んじる言動を見せる。
フリオが自分を愛していることを誇示し、マリアネラを「お飾り」の妻と見なして、伯爵夫人として着飾り社交の場に立つだけの存在だと嘲笑する。
マリアネラの私室にも当然のように立ち入り、祖母から贈られた宝石箱に手を伸ばすなど、他人の所有物や境界を尊重する意識に乏しい。
フリオが自分を伯爵夫人にすると約束していることもあり、正妻の座を手に入れられると期待している。
しかし、その期待はガルドス侯爵家の後ろ盾を失うことで揺らぎ始める。
マリアネラとの離婚問題が表面化し、ラボイ伯爵家の資金繰りが悪化すると、これまでのようにドレスや宝石を買ってもらえなくなり、フリオへの不満を露わにする。
愛情を口にしながらも、贅沢な暮らしや伯爵夫人という地位への執着を隠せない人物である。


イポリト・ガルドス侯爵

ガルドス侯爵家の現当主であり、マリアネラの父。
侯爵家に代々伝わる固有魔法を有しているため、先代侯爵の死後に当主となったが、その力は娘マリアネラに比べて弱い。
先代侯爵が正式な後継者として指名していたのは、実の息子である自分ではなく、幼くして固有魔法を発現させた孫娘のマリアネラだった。
娘の才能を認めて後継者として支えるどころか、彼女が有力な家の後ろ盾を得て自分の地位を脅かすことを恐れ、縁談を意図的に遠ざけてきた。
やがて第二夫人が持ち込んだフリオ・ラボイ伯爵との縁談を押し通し、マリアネラ本人や叔父エリベルトの反対にも耳を貸さず、短期間で結婚を成立させる。
娘が結婚後の不当な扱いについて相談しても、夫婦の問題として片づけ、侯爵家として対応することを拒む。
マリアネラが離婚と後継者としての立場の確認を進めると、父としての権威を持ち出して抑え込もうとするが、先代の指名書や固有魔法の記録という動かしがたい事実を覆すことはできない。
家の名誉や後継者の権利よりも、自らの地位と都合を優先してきた人物であり、娘との対立を通じて、自分の判断がもたらした結果と向き合うことになる。


エリベルト・ドゥアルテ子爵

マリアネラの叔父で、ドゥアルテ子爵。
ガルドス侯爵家の実務を長年支えてきた人物であり、冷静な判断力と確かな実務能力を備えている。
兄イポリトがフリオ・ラボイ伯爵との縁談を持ち出した際には、フリオの不安定な家計や結婚を急ぐ理由の不明瞭さに加え、何よりマリアネラ本人が望んでいないことを理由に、縁談に強く反対した。
しかし、イポリトは忠告を聞き入れず、結婚を強行する。
マリアネラが夫の不誠実な振る舞いと父の無理解に直面して助けを求めると、エリベルトは彼女の意思を尊重しながら、離婚と侯爵家の後継者確認に必要な手続きを支える。
先代侯爵の後継者指名書、固有魔法の発現・制御記録、婚姻契約書など、必要な資料を整理し、感情論ではなく記録と規則に基づいて問題を解決しようとする。
自身にはガルドス家の固有魔法がないため、どれほど有能であっても侯爵位を継ぐ資格はないと理解しており、姪の権利を奪おうとはしない。
彼が大切にしているのは、自分が代わりに決断することではなく、マリアネラが自らの意思で人生を選び、その決断を実現できるよう支えること。
厳格な実務家でありながら、姪には親しみ深く接し、時には冗談を交えて緊張を和らげる、彼女にとって心強い理解者である。