アデライーダ・ゲオルギエヴナ・マシェフスカヤ
幼くしてマシェフスキー公爵家の爵位を継いだ、若き公爵。
八歳のときに母エリザヴェータを亡くし、叔母である王妃ヴィクトーリヤの後見を受けながら、当主として必要な知識と責任を身につけてきた。
公爵令嬢ではなく、正式な手続きを経て爵位を継承した現職の公爵であり、領地の運営や家の仕事にも真摯に取り組んでいる。
第一王子エウゲーニーとは幼いころからの知り合いで、婚約者として長年の信頼を築いてきた。
恋愛感情こそなかったものの、互いを尊重し、支え合える家族になれると考えていた。
しかし、エウゲーニーがカミラの訴えを鵜呑みにし、自分の説明に耳を傾けないまま一方的に責めたことで、彼への信頼を失ってしまう。
感情に任せて相手を攻撃するのではなく、起きた出来事を冷静に整理し、婚約を続けることが困難である理由を明確に示す姿勢は、彼女の理性的な一面を物語っている。
相手の過ちを理解し、謝罪を受け止めることはできても、自分の人生を犠牲にしてまで関係を修復しようとはしない。
公爵としての責任を果たしながら、自らの意思で未来を選び取ろうとする、誠実で自立した女性。
エウゲーニー・グリゴリエヴィチ・リトヴィンツェフ
国王グレゴリーの第一王子で、アデライーダの婚約者。
幼いころから王妃ヴィクトーリヤのもとで教育を受け、周囲を気遣う優しさや、任されたことに真面目に取り組む一面を持つ。
しかし、実母ゾーヤから「第一王子なのだから、いずれ王太子となり王位を継ぐ」と教えられ、その言葉を疑わずに信じてきた。
実際には王位継承権を持たない立場であるにもかかわらず、自分を王太子と同じような存在だと思い込んでいる。
学術院で親しくなったエメリヤンから、彼がマシェフスキー公爵家の後嗣であると聞かされ、それも確認せずに信じてしまう。
さらに、カミラからアデライーダに虐げられていると訴えられると、彼女の言葉を信じる一方で、幼いころからの知り合いであるアデライーダの説明には十分に耳を傾けなかった。
カミラとの時間を優先して婚約者との約束を破り、事実を確かめないままアデライーダを責めた結果、彼女から婚約解消を申し出られる。
真実を突きつけられた後は、自分が知らなかったことだけでなく、知ろうとせず、相手の言葉を聞かなかったことを反省し、謝罪する。
しかし、反省したからといって失われた信頼が戻るわけではない。
自分の思い込みと向き合い、他者の言葉を確かめることの大切さを学ぶ人物。
ヴィクトーリヤ・レヴォーヴナ・リトヴィンツェヴァ
国王グレゴリーの王妃であり、アデライーダの叔母にして後見人。
亡き姉エリザヴェータの願いを受け、幼くして公爵家を継いだアデライーダを支え、当主として成長できるよう見守ってきた。
王族としての立場と豊富な経験を備え、感情や先入観だけで物事を判断せず、事実を確認したうえで結論を導く冷静さを持つ。
アデライーダから婚約解消の申し出を受けると、学術院長や関係者、本人たちから寄せられた複数の報告書を読み比べ、エウゲーニーの言動を慎重に検証する。
その結果、彼がカミラの訴えを十分に確かめずに信じ、婚約者の説明を聞かないまま責めていたこと、さらに公爵家や王位の継承についても誤った認識を抱いていたことを明らかにする。
エウゲーニーを幼いころから知っており、根っからの悪人ではないことも理解しているが、その優しさだけを理由に過ちを見過ごすことはしない。
知らないこと自体よりも、確かめる機会がありながら確認を怠ったことを問題視し、王妃として必要な対応を進めていく。
一方で、アデライーダの意思を尊重し、婚約を解消する判断を無理に覆そうとはしない。
姪を大切に思う身内としての情と、王妃として公平に事実を見極める責任を併せ持つ、物語の真実を明らかにする重要人物。
カミラ・エゴロヴィチ・ルノヴァ
王立学術院に通う女性で、第一王子エウゲーニーと親しくなり、次第に恋人同然の関係を築いていく。
アデライーダに対して冷たい印象を抱き、自分が傷つけられていると感じると、そのことをエウゲーニーに訴える。
エウゲーニーが自分の言葉を信じて味方してくれたことで、彼がアデライーダとの婚約を解消し、いずれ自分を正式な妻として迎えてくれるのではないかと期待するようになる。
しかし、彼女の訴えは、学術院長をはじめとする複数の関係者の報告や記録とは一致していなかった。
自分が不快に感じたことと、相手が実際に不当な行為をしたことを区別できず、自分の受け止め方だけを根拠に、アデライーダが自分を虐げていると決めつけてしまう。
また、エウゲーニーが自分を守ろうとしている状況を利用し、彼が婚約者と別れることを期待していた。
だが、アデライーダの立場や公爵家の正式な継承関係を理解しようともせず、訴えの裏付けを確かめなかったことが明らかになると、望んでいた未来は崩れていく。
虚偽の訴えによって他者の名誉を損ない、周囲に誤解を広げた責任を問われ、学術院の規則に基づく処分を受けることになる。
自分の感情を事実と取り違え、望みをかなえるために他人を悪者に仕立てようとしたことの問題を示す人物。
エメリヤン・ゲオルギエヴィチ・タラノフ
アデライーダの異母弟で、ゲオルギー・レオニードヴィチ・タラノフとアセルの息子。
父ゲオルギーは、かつてマシェフスキー公爵家の当主エリザヴェータの夫として同家に身を置いていたが、公爵そのものではなく、エリザヴェータの死後に再婚したことで公爵家の籍からも外れている。
そのため、エメリヤンにはマシェフスキー公爵家を継ぐ権利はない。
しかし、彼は自分が公爵家の後嗣であり、将来その地位を継ぐのだと信じている。
学術院で親しくなった第一王子エウゲーニーに対しても、その認識を前提に振る舞い、アデライーダは昔から自分に厳しく、周囲を思いどおりにしようとする人物だと語る。
エウゲーニーは彼の話を疑わず、エメリヤンを将来の側近として扱うようになる。
エメリヤンにとって、それは自分の将来を裏付けるものでもあった。
しかし、正式な記録によって公爵家の継承関係が明らかになると、自分が後嗣ではなく、父も公爵ではないという現実を突きつけられる。
さらに、自らの身分や立場を確認しないまま周囲に誤った認識を与え続けたことについて、学術院で責任を問われる。
信じていた未来が崩れても、思い込みによって事実が変わるわけではない。
自分に都合のよい認識を疑わず、他者にもそれを信じさせてきたことが、物語の騒動を引き起こす一因となった人物
アリスタルフ・グリゴリエヴィチ・リトヴィンツェフ
国王グレゴリーと王妃ヴィクトーリヤの息子である第二王子。
第一王子エウゲーニーとは異なり、王位継承に関わる立場にあり、王族としての責任と客観的な判断力を備えている。
アデライーダとは従姉弟の関係にあり、幼いころから互いを知る間柄でもある。
エウゲーニーが自分を王太子と同じ立場にあるかのように振る舞い、エメリヤンをマシェフスキー公爵家の後嗣として扱い、カミラを将来の妃にすることを前提とした発言をしていることについて、王族の視点から問題を報告する。
彼は、身分や継承に関する重要な事柄を、本人たちの思い込みや伝聞だけで判断してはならないことを理解している。
また、アデライーダがエウゲーニーとの婚約解消を望んでいることを知ると、その意思が尊重されるべきだと考え、必要な手続きが進むよう支える。
エウゲーニーの今後についても、王妃の指示のもとで教育の準備が進められていることを伝えつつ、その責任をアデライーダが背負う必要はないと穏やかに諭す。
彼女に無理に過去を忘れさせたり、婚約をやり直すよう促したりすることはなく、本人の決断を尊重する姿勢を貫いている。
二人の間に恋愛感情はないが、互いを信頼し、必要なときに支え合える関係を築いている。
王族としての公正さと、相手の意思を大切にする誠実さを兼ね備えた人物。