聖女なのだろう?

アホナ・パジュー伯爵令嬢

異世界から眩い光とともに現れた少女。
本名村那(そんな)亜帆菜(あほな)。
王都の外れにある聖泉で発見され、古い寺院の記録に残る「異界より聖なる乙女が現れる」という伝承を根拠に、パジュー伯爵家に保護されることとなった。
本人は自分こそが伝承に語られる聖女であると固く信じており、異世界転移をきっかけに始まる恋愛物語の主人公になったつもりでいる。
聖女と王太子が出会えば恋に落ちるのが当然だと思い込み、婚約者のいるマルスラン王太子にも遠慮なく接近。
自分の行動を運命の導きと解釈し、思いどおりにならない状況も物語の試練だと考えている。
自分を特別な存在として扱うことを周囲に求める一方、侍女や従僕には身勝手で礼を欠いた態度を取るなど、他者への思いやりには乏しい。
マルスランから繰り返し「聖女なんだろう?」と問いかけられても、その言葉に込められた意味を理解できず、自分の魅力がまだ伝わっていないだけだと信じて疑わない。
果たして彼女は、自分が思い描く物語の筋書きから離れ、他者の気持ちを理解できるようになるのだろうか。


マルスラン・プルスト王太子

王国の王太子であり、エヴリーヌ・ルパープ公爵令嬢の婚約者。
穏やかで落ち着いた物腰の持ち主だが、相手の肩書や立場に惑わされることなく、物事の本質を見極める冷静さを備えている。
エヴリーヌとの婚約を心から大切にしており、彼女と過ごす時間を喜び、互いを思いやる関係を築いている。
そんな彼の前に現れたのが、自らを聖女と称し、運命の相手として一方的に彼を選んだアホナ・パジュー伯爵令嬢だった。
アホナが婚約者のいる自分に無遠慮に触れようとした際も、彼女の言動を見過ごすことなく、聖女を名乗るのであればこそ他者を思いやるべきだと諭す。
お茶会で侍女の失敗を責めるアホナには寛容さを、相手によって態度を変える彼女には礼儀の大切さを説き、婚約者との仲を裂こうとする振る舞いも毅然と拒絶する。
「聖女なんだろう?」という言葉には、特別扱いを求める者こそ、その立場にふさわしい慈愛を示すべきだという信念が込められている。
誰かに幸せを決めてもらうのではなく、自らの意思で大切な人を選び、その人を幸せにしようとする誠実な王太子である。


エヴリーヌ・ルパープ公爵令嬢

マルスラン・プルスト王太子の婚約者である公爵令嬢。
気品と落ち着きを備え、穏やかな微笑みの中に確かな意志を感じさせる女性。
マルスランとは互いを深く大切に思い合っており、二人の間には自然な信頼と愛情が育まれている。
王宮の庭園で外出の予定を相談したり、午後のお茶を楽しんだりする時間を大切にしているが、そこへ突然現れたアホナ・パジュー伯爵令嬢から一方的に敵視されることになる。
アホナはマルスランに愛されるべきなのは自分だと思い込み、エヴリーヌを恋の障害として扱うが、彼女は感情的に反発したり、相手を見下したりすることはない。
お茶会で侍女が紅茶をこぼした際には、失敗を責めるどころか、手にお茶がかかっていないかを気遣い、必要な配慮を自然に示した。
その振る舞いは、聖女という称号を振りかざすアホナとの対照を際立たせている。
マルスランが自分との婚約を大切にしていることを理解し、彼の気持ちを信じながら、二人で未来を築こうとする。
誰かを押しのけて愛を得ようとするのではなく、互いを尊重することで幸せを育む女性であり、その穏やかな強さと他者への思いやりが、彼女の大きな魅力となっている。