賢いつもりだった男

スパーノ・デ・パネッラ

パネッラ子爵家の三男。
建国の英雄である勇者の末裔という家柄を誇り、前世の記憶を持つ自分は並外れた知識と才覚を備えた人間だと信じて疑わない。
没落した実家を再興するため、王家の仲介によって名門ザノッティ公爵家の嫡女リヴィアと婚約する。
公爵位そのものを継ぐことはできなくとも、結婚後は妻となるリヴィアに自分の能力を認めさせ、家政や財産管理の実権を握るつもりでいた。
一方、リヴィアの異母妹アンブラには、自分の話を素直に聞き、反論しないところに魅力を感じている。
アンブラが公爵夫人になりたいと望んでも、明確に否定することなく、彼女の期待を都合よく利用していた。
しかし、リヴィアはスパーノの思惑を見抜き、公爵家の権限を譲る意思がないことを明言。
彼が交渉のつもりで口にした婚約破棄をあっさり受け入れたことで、計画は崩れ始める。
それでも自分の判断や言動を省みることなく、失敗の原因を他人の無理解に求め続ける。
自らの能力を過信し、他者を見下す男は、最後まで自分が何を失ったのかを理解できない。


リヴィア・マウラ・デ・ザノッティ

名門ザノッティ公爵家の嫡女であり、亡き女公爵の後継者。
大賢者の末裔にあたる家系に生まれ、未成年ながら公爵家を継ぐ正統な権利を認められている。
母の死後は、母方の叔母の夫である宰相を後見人とし、家政や財産の管理について監督を受けている。
冷静沈着で頭脳明晰な女性であり、物事を判断する際には根拠や数字を重視し、感情や曖昧な期待に流されることがない。
王家の仲介によってパネッラ子爵家の三男スパーノと婚約するが、それは没落しつつあるパネッラ家を立て直すための政略的な縁組であり、個人的な愛情によるものではない。
スパーノが結婚後に公爵家の実権を握ろうとしていることを知ると、当主としての権限と婚約の目的を明確に説明し、彼の要求を毅然と退ける。
また、異母妹アンブラが公爵夫人になりたいと訴えた際にも、爵位の継承制度や身分の違いを淡々と説明する。
スパーノが感情に任せて婚約破棄を宣言すると、引き留めることなく受け入れ、王家の承認を得て正式に婚約を解消する。
自らの立場と責任を正しく理解し、相手の思惑に左右されずに判断を下す、理知的で自立した令嬢である。


アンブラ・ヴェント

リヴィアの異母妹。
リヴィアの父が、亡き女公爵との婚姻中に、公爵家とは関係のない女性との間にもうけた娘であり、ザノッティ公爵家の血を引いていない。
そのため、公爵家の相続権も貴族としての身分も持たず、平民として暮らしている。
貴族教育を受けておらず、読み書きや計算も十分にはできない。
スパーノに慕情を寄せており、彼が自分に優しく接してくれることから、いずれは公爵夫人になれるのではないかと期待している。
舞踏会に一緒に行きたいと何度もせがみ、スパーノが婚約者であるリヴィアをエスコートしなければならないと告げると、不満を示しながらも引き下がる。
しかし、そのたびにリヴィアとの婚約を解消してほしいと願い、スパーノと結ばれる未来を夢見ていた。
ある日、リヴィアに直接、自分を公爵夫人にしてほしいと申し出るが、公爵家を継ぐ権利も貴族の身分もないことを説明される。
さらに、スパーノがリヴィアとの婚約を解消すると、今度こそ自分が公爵夫人になれると思い込んでいた期待も打ち砕かれる。
彼に約束をした覚えはないと突き放され、涙を浮かべて問いかけるアンブラだったが、やがて彼のもとを去ることになる。
スパーノの曖昧な態度を信じ、身分の壁を越えた未来を夢見た少女である。