アレクシア・ベアトリクス・ノイチュ
ザスキア公爵家の長女で、フローリィ王国の第一王子ジークヴァルトの婚約者。王家に次ぐ筆頭公爵家の令嬢として、将来の王妃となる可能性が最も高い人物である。
前世では令和日本を生きたアラフィフ女性だった記憶を持ち、この世界がラノベや乙女ゲームのような世界ではないかと警戒しながらも、現在の貴族令嬢としての責務を果たしている。
高位貴族として幼い頃から徹底した教育を受けており、貴族社会の制度や慣習、その背景にある政治や家同士の利害を深く理解している。
菫苑出版の貴族向け恋愛小説の監修を引き受け、平民の想像による「貴族像」の不自然さを一つずつ指摘し、物語として成立する代案まで提示する理路整然とした人物である。
一方で冷淡なだけではなく、相手の立場を察して自然に配慮できる優しさも持つ。ゲオルグが緊張していることを察して使用人用の木製カップを用意させるなど、身分差を越えて相手を尊重する姿勢が印象的。
婚約者とは幼少期から信頼を育み、現在は将来の共同統治者であると同時に恋人でもある。嫉妬したり泣いたり喧嘩したりする年相応の少女らしさもあり、その素顔を見せられる相手を大切にしている。
ゲオルグ・ダウム
菫苑出版の社長兼編集者を務める平民男性。出版社は事務員を含めても二人だけという小さな会社だが、平民向け恋愛小説を手掛け、『略奪純愛物』などのヒット作を生み出してきた。
貴族向け恋愛小説への参入を考えたことから、遠縁の侍女を通じてアレクシアと知り合い、作品の「貴族校閲」を依頼することになる。
最初は公爵令嬢、それも未来の王妃候補を前に、服装や言葉遣い、ソファに座ることさえ気にするほど極度に緊張していた。しかしアレクシアが平民だからと侮らず、理不尽な要求もせず、疑問には丁寧に答えてくれることを知るにつれ、少しずつ本来の編集者としての好奇心と行動力を取り戻していく。
彼の大きな特徴は、知らなかったことを恥じるだけで終わらず、素直に学び、すぐ仕事へ反映する姿勢である。アレクシアから貴族制度や礼法、婚姻、家格、宮廷社会について教わるうちに、王国史や貴族制度まで自主的に学ぶようになり、作家たちにも知識を伝えるようになる。
やがて作品には政治や家、責任まで織り込まれるようになり、貴族層の固定客も獲得。単なる「売れる本」を作る編集者から、夢を描くことにも責任があると理解する編集者へ成長していく人物である。
スザナ
ザスキア公爵家に仕える侍女で、伯爵家出身の令嬢。ゲオルグとアレクシアを結びつけた人物の一人であり、ゲオルグにとっては、公爵家という未知の世界へ入る際の案内役でもある。
菫苑出版の平民向け恋愛小説について興味を持ったアレクシアの意向を受け、ゲオルグとの連絡を取り持った。
初めて公爵邸を訪れたゲオルグを玄関で出迎え、応接室まで案内するなど、アレクシアが安心して打ち合わせを行えるよう細やかに支えている。物腰は柔らかく、ゲオルグにソファへ座るよう促す際にも穏やかな口調を崩さない一方、必要なときには有無を言わせぬ芯の強さも見せる。ゲオルグの緊張が解けていないことを察し、アレクシアの視線を受けて使用人用の木製カップを用意させるなど、主の意図を即座に汲み取る有能な侍女でもある。
アレクシアとは長く近しい関係にあり、彼女が嫉妬して泣いたり怒ったりしたときには叱ることもあるらしく、主従という言葉だけでは表せない親密さがうかがえる。
アレクシアが語る貴族社会の説明では、高位貴族家の上級使用人として紹介され、ゲオルグとの打ち合わせを一年にわたって支え続ける。
ゲオルグに対しては最後まで「お嬢様のお客様」として敬意を崩さず、それでいて折に触れて微笑みかける、温かな人柄の持ち主である。
ジークヴァルト
フローリィ王国の第一王子で、アレクシアの婚約者。王太子となる最有力候補であり、将来はアレクシアとともに国を担う立場にある。
アレクシアとは彼女が1歳、ジークヴァルトが3歳の頃に正式な婚約が結ばれており、幼い頃から王宮や公爵邸でともに過ごしてきた。アレクシアの次兄がジークヴァルトと同年代だったため、二人は兄弟や王家の子供たちと一緒に遊ぶ機会も多く、幼少期から「将来は一緒になる」という認識を自然に育んでいった。成長するにつれ、二人の間には一生を共に歩むという信頼が生まれ、さらに互いへの恋情も芽生える。
現在は単なる政略上の婚約者ではなく、将来の国王と王妃として国を運営する「共同統治者」であり、同時に仲睦まじい恋人同士でもある。
アレクシアによれば、ジークヴァルトはかなり悋気が強い一面があり、彼女とゲオルグの会合についても当初は反対していた。実際、護衛騎士に扮して密かに会合へ姿を現し、ゲオルグへ嫉妬の籠った視線を向けている。
その一方、アレクシアとは泣いたり怒ったり、時には喧嘩もする関係であり、完璧な王族というより、幼い頃から彼女と人生を共にしてきた一人の青年として描かれている。二人の関係は、政略から始まった婚約が信頼と愛情へ育っていく物語そのものでもある。