エレオノール・ド・モンフォール
エレオノール・ド・モンフォールは、アルヴェール王国でも屈指の名門、モンフォール公爵家の一人娘。
幼い頃から第一王子アドリアンの婚約者として王太子妃教育を受け、外交、歴史、法律、会計、語学、宮廷礼法など、王妃となるために必要な知識を身につけてきた才女である。
銀色に近い淡い金髪と、青磁を思わせる透明感のある蒼い瞳を持つ、気品に満ちた美しい令嬢。その首には、公爵家に代々伝わる白い真珠の首飾りが輝いている。
責任感が強く、自分よりも周囲を優先する性格で、身分の上下を問わず誰に対しても誠実。
アドリアンとは恋愛感情こそなかったものの、幼少期から家族のような信頼関係を築いていた。しかし彼がリュシエンヌに傾倒し、自分を陥れようとしていることを知ることになる。それでも憎しみに囚われず、最後まで気高く振る舞う。
婚約破棄の後、初めて自分が多くの人々に支えられていたことを知り、幼馴染ルシアンの告白を受け、新しい人生へ踏み出す。
アドリアン
アドリアンはアルヴェール王国の第一王子であり、長年エレオノールの婚約者を務めてきた青年。幼少期には少々甘えん坊ながらも根は優しく、王になる責任から逃げようとはしない少年だった。
エレオノールとは16年近くを共に過ごし、勉強を嫌がる自分を彼女に叱られながらも、王太子として成長してきた。しかし成長するにつれ、彼女からの忠告を「自分を否定する言葉」と受け取るようになってしまう。
一方、何をしても褒めてくれる男爵令嬢リュシエンヌに心地よさを感じ、次第に彼女へ傾倒していく。やがて婚約者を排除するため、不貞の罪を捏造するという危険な計画にまで手を染める。
王族らしい端正な容姿を持つ一方、その内面には未熟さが残る。偽造された証拠が暴かれた後、王太子資格と王位継承権を失い、王族としての立場を大きく崩すことになる。
リュシエンヌ・ベルナール
リュシエンヌ・ベルナールは、ベルナール男爵家の令嬢であり、宮廷でアドリアン王子のお気に入りとして注目を集める少女。
栗色の髪と愛らしい顔立ちを持ち、華やかで少女らしい雰囲気をまとっている。王宮舞踏会では、リボンやフリルをふんだんにあしらった豪奢なドレスを身につけ、王宮の格式よりも自分の「可愛らしさ」を前面に押し出す姿が印象的に描かれる。
アドリアンから贈られた大粒のダイヤモンドを前に目を輝かせ、「王妃になれば毎日こんな暮らしができる」と考えるなど、王族としての責務よりも華やかな生活への憧れが強い。
アドリアンの言動を何でも肯定し、耳に心地よい言葉を与えることで彼の信頼を得ていく。その一方で、エレオノールを追い落とすための偽の恋文作りにも加担。
結果としてアドリアンと共に陰謀の責任を問われ、宮廷から追放されることになる。
ルシアン・ド・ベルフォール
ルシアン・ド・ベルフォールは、ベルフォール公爵家の嫡男であり、エレオノールの幼少期からの親しい友人。幼い頃にはエレオノールやアドリアンと三人で庭を駆け回り、勉強から逃げるアドリアンを二人で追いかけることもあった。だからこそ、誰よりもエレオノールの努力と孤独を知っている。
婚約者のいる彼女への想いを胸に秘め、これまで一度もそれを口にすることはなかった。しかし春季舞踏会で、婚約者に侮辱されながらも微笑み続けるエレオノールを目にしたことで、彼女を守ることを決意する。
冷静な判断力と公爵家嫡男としての情報網を駆使し、アドリアンたちの陰謀を密かに監視。従妹セリーヌをエレオノールの護衛につけ、最終的には偽造工作の証拠を明らかにする。
端正で落ち着いた美青年だが、エレオノールの前では昔と変わらない柔らかな表情を見せる。最後には幼馴染としてではなく、一人の女性として彼女を愛していることを告げる。
国王アンリ四世
アンリ四世はアルヴェール王国を統べる国王であり、アドリアンとジュリアンの父。
老いてなお威厳を失わず、感情に流されることなく王としての責務を果たす人物である。若き日のアドリアンを決して悪い少年ではないと信じ、厳しい王太子教育を受けさせながら、いつか立派な王になることを期待していた。そのため、長年息子を支えてきたエレオノールを陥れようとする計画を知った際には、怒りよりも深い失望を覚える。
アンリにとって王位とは、自分を肯定してくれる人々に囲まれるための地位ではなく、民のために責務を果たすためのもの。
エレオノールへの忠言を受け入れられなくなったアドリアンを王として不適格と判断し、第二王子ジュリアンの教育を前倒しするという厳しい決断を下す。最終的にはアドリアンの王太子資格と王位継承権を剥奪し、王家の秩序を守る。
厳格でありながら、国と家族双方を背負う責任感を持つ老王である。
王妃ヴィクトワール
ヴィクトワールはアルヴェール王国の王妃であり、アドリアンの母。普段は穏やかで慈愛に満ちた女性だが、王妃として国を見つめる冷静さと、母として子を導く強さを併せ持つ。
エレオノールが幼い頃から王太子妃教育に励み、アドリアンを支えてきた姿を間近で見守ってきたため、彼女を実の娘のように大切にしている。
アドリアンがエレオノールに罪を着せようとしていると知ったとき、ヴィクトワールの顔から笑みは消えた。怒りだけではなく、支えてくれた者を切り捨てようとする息子への深い失望がそこにはあった。
王妃としてアンリ四世とともにアドリアンの王太子としての資質を見極め、必要ならば王位継承から外す決断も受け入れる。
物語の終盤、婚約破棄によって王家から解放されたエレオノールを抱き締め、「王家のせいで青春を縛ってしまった」と謝罪する。その姿には、王妃としてではなく、一人の母として少女を愛する深い慈しみが表れている。
マダム・セシル
マダム・セシルは、王妃ヴィクトワールに長年仕える侍女長であり、エレオノールの成長も幼い頃から見守ってきた人物。
華美な装飾や派手な存在感とは無縁だが、長年宮廷に仕えてきた経験から、礼儀作法と宮廷の事情に精通している。物静かで控えめに見える一方、忠誠心と責任感は非常に強い。
アドリアンとその取り巻きが、エレオノールに罪を着せるための計画を話しているところを偶然耳にすると、その危険性を瞬時に理解する。
そして自らの立場を危険にさらすことも恐れず、王妃へ直接報告する。
物語終盤では、アドリアンが提示した偽の恋文について、封蝋の紋章が逆であることを即座に指摘し、偽造の発覚に大きく貢献する。
長年仕えてきた侍女としての知識と観察眼、そしてエレオノールへの深い慈愛を持つ、物語の陰の功労者。派手な戦闘力ではなく、確かな知識と勇気によって主人公を守る人物である。