王家の賠償金請求

イザイア

バレストラ王国の第一王子として生まれ、王太子の地位を与えられていた青年。
幼い頃から将来の国王となるべく育てられ、アディノルフィ公爵令嬢エルシーリアとは5歳の時に婚約して以来、13年にわたって婚約者として過ごしてきた。
容姿、学問、武芸はいずれも優秀で、王子として申し分ない資質を備えているように見えたが、責任感と自覚には大きな欠落があった。
長年の婚約者がいながら、男爵家の庶子ジルダと恋仲になり、彼女との「真実の愛」を理由に婚約解消を決意。
ジルダを王太子妃にすることが難しいと知ると、王太子位を返上して平民となり、二人で自由に暮らす道を選ぼうとする。
しかし、それは王族として受けた教育や生活にかかった費用が、国民の税によって支えられていたことへの自覚を欠いた、あまりにも楽観的な決断だった。
結果として王太子位だけでなく王籍まで剥奪され、これまで王族として受けた費用を王家から損害賠償として請求される。
北の魔獣の森の砦で一兵士として働き、長い年月をかけて賠償金を返済することとなった。
厳しい現実を前に一度はエルシーリアとの復縁を願うものの、すでに彼の王族としての人生は終わっていた。
最後まで、自らの選択がもたらす責任の重さを理解できなかった人物である。


エルシーリア

アディノルフィ公爵家の長女であり、5歳の時からイザイア王太子の婚約者として育てられた才色兼備の公爵令嬢。
将来の王太子妃、そして王妃となることを期待され、13年もの歳月を王妃教育に捧げてきた。
語学や貴族教育はもちろん、王族としての立ち居振る舞い、政務に関する知識など幅広い教育を修め、すでに実務を学ぶ段階にまで達していた。
婚約者であるイザイアが男爵家の庶子ジルダを愛し、彼女と生きるために王太子位を捨てて平民になると告げた際も、感情的に責めることなく、その決意を受け入れた。
ただし、自分の貴重な少女時代を13年間にわたって王太子妃教育に費やしたことや、その教育に国費が使われていたことには、複雑な思いを抱く。
その違和感をきっかけに、イザイアが王族として享受してきた莫大な費用と、それを放棄することの責任に気づく。
婚約解消後は王太子妃という立場から解放され、隣国へ留学。
これまで得られなかった自由な学生生活を送り、学問や友情を楽しむ中で他国の公爵家嫡男と出会い恋に落ちる。
やがて彼の国で公爵夫人となり、外交、貿易、技術交流にも力を発揮。
長年受けてきた王妃教育を別の形で活かし、両国と二つの公爵領の発展に貢献した。


ジルダ

ベルニ男爵家の庶子として生まれ、貧民街で育った少女。
母親から「より身分が高く、裕福な男性を捕まえることが女の幸せ」という価値観を教え込まれ、美貌を最大の武器として生きてきた。
二年前に男爵家へ引き取られたものの、貴族として必要な教育や作法を十分に身につけることはできず、自身も貴族社会の厳しいしきたりを好まなかった。
そんな彼女が目をつけたのが、国内最高位の独身男性であるイザイア王太子だった。
彼の寵愛を受けるようになり、やがてイザイアから王太子妃になることを提案される。
しかし、厳しい王太子妃教育や貴族社会での生活を嫌がり、王太子妃の座そのものを拒絶。
イザイアが王太子位を捨て、自分と二人で自由に暮らすことを望むよう仕向ける。
イザイアが平民となれば、貴族としての堅苦しい義務から解放され、莫大な下賜金によって贅沢な暮らしができると信じ、婚約解消を喜んで受け入れた。
しかし、彼女には王族の制度や責任、そして平民として生きる現実への理解がなかった。
王城へ無断で侵入したことで地下牢に収監され、最終的には男爵家からも除籍されて完全な平民となる。
南の開拓地で10年間働いた後、修道院へ入り、若き日の過ちを悔いながら祈りの生涯を送った。