ジュリエンヌ・ド・バダンテール
カスタニエ王国のバダンテール公爵家の長女。
王太子レアンドル第一王子の婚約者であり、将来の王太子妃、そして王妃となることを期待されている公爵令嬢。
幼い頃から「お姫様になりたい」という本人の願いを叶えるため、両親から最高の教育を受けて育った。
淑女教育は厳しく、食事や行動にも細かな制限が設けられていたが、それは家族が彼女を愛していなかったからではなく、愛する娘が将来困らないようにとの深い親心によるものだった。
本人はその真意を知らぬまま、妹シャルロットが生まれてから「自分より妹のほうが愛されているのではないか」と悩み始める。
やがて妹が魅了魔法を使っているのではないかと疑うほど思い詰めるが、実際に魅了魔法の使い手だったのは彼女自身。
しかもその力は、本人の利己的な願望ではなく、周囲の人々を思いやり、将来の国母として責任を果たしたいという彼女自身の願いに沿って作用していた。
努力家で誇り高く、責任感も強い一方、自分の愛され方に不安を抱えてしまう繊細な一面を持つ。
レアンドルとの交流を何よりの心の支えとし、互いに支え合える未来を望んでいる。
レアンドル・ド・カスタニエ
カスタニエ王国の第一王子にして王太子。
ジュリエンヌより2歳年上で、幼い頃から彼女の婚約者となることを期待され、12歳になったジュリエンヌと正式に婚約した。
王族としての責務を背負う彼自身も厳しい教育を受けており、その苦労を分かち合える存在として、王太子妃教育に励むジュリエンヌを深く気に掛けている。
穏やかで優しく、努力する者をきちんと評価できる人物。
王宮での妃教育を終えたジュリエンヌとのお茶の時間を大切にしており、互いの苦労や悩みを語り合うことで親交を深めている。
ジュリエンヌに発現した魅了魔法の影響を最も強く受けた一人だが、その作用は彼女への盲目的な執着ではなく、「彼女とともに国を導くため、互いに切磋琢磨し、理解し、信頼し合おう」という健全なものだった。
ジュリエンヌの魅了魔法が自分の恋心に影響しているのではないかと密かに心配していたが、魔法を封じた後も気持ちに変化がないことから、それが自分自身の本当の想いだったと知る。
王太子としての責任感と、ジュリエンヌを一人の女性として大切に思う気持ちを併せ持つ、彼女のよき理解者である。
ディアーヌ・ド・バダンテール
バダンテール公爵夫人であり、ジュリエンヌの母親。
夫とともに公爵家を支え、家族を深く愛する女性。
特に長女ジュリエンヌを「我が家に舞い降りた天使、妖精姫」と呼びたくなるほど溺愛しており、娘が幸せになることを何よりも願っている。
ジュリエンヌが幼い頃、「お姫様になりたい」と口にしたことを、将来王族に嫁ぎたいという意思表示だと受け止めた。
その願いを叶えるため、厳しい淑女教育を受けさせることを決意。
娘を甘やかすことが将来のためにならないと考え、家庭教師にも厳格な指導を命じ、自らも学習内容を確認してきた。
ジュリエンヌが努力の末に課題を修めたときには、誰よりも喜び、抱きしめて褒める母親でもある。
しかし、娘への深い愛情こそがジュリエンヌの魅了魔法に最初に強く影響された結果でもあった。
娘が幸せになるためには、優しさだけでなく責任感や自制心も必要だと考え、愛情と教育を両立させようとした。
その結果、ジュリエンヌは自分だけでなく家族や夫、国民の幸福まで願う女性へと成長する。
愛するがゆえに距離を置くという不器用な愛情表現が、娘とのすれ違いを生んでしまった母親でもある。
シャルロット・ド・バダンテール
バダンテール公爵家の末娘で、ジュリエンヌとは十歳も年の離れた妹。
物語開始時は五歳。
天使や妖精のように愛らしい容姿と無邪気な性格から、両親や兄たち、姉ジュリエンヌ、さらには屋敷の使用人たちからも非常に可愛がられている。
「おねえちゃまといっちょがいい」と泣いてしまうほどジュリエンヌを慕っており、姉と一緒に過ごすことを何よりも喜ぶ。
しかし、将来の王太子妃となるジュリエンヌの負担にならないよう、家族によって姉との接触を控えさせられることも多かった。
シャルロット自身はその事情を理解しておらず、ただ大好きな姉と一緒にいたいと願う幼い少女である。
その溺愛ぶりから、ジュリエンヌは一時「シャルロットが魅了魔法を使って家族や使用人を操っているのではないか」と疑ってしまう。
しかし、実際にはシャルロットに魅了魔法の力はなく、彼女が愛されているのは純粋に家族から可愛がられているためである。
シャルロットの存在は、結果としてジュリエンヌに「自分は家族から愛されていないのではないか」という誤解を抱かせるきっかけとなったが、本人には姉を妬ませる意図など微塵もない。
無邪気な愛らしさそのものが、家族にとっての大切な末娘である。