セラフィマ・サンティーニ
王家の血を引く名門サンティーニ公爵家の令嬢で、幼いころからイシドル第一王子の婚約者として育てられた才媛。
将来の王太子妃、ひいては王妃となることを期待され、通常の淑女教育に加えて、外交、国内貴族の派閥や領地事情、社交術など高度な教育を受けている。
公の場では完璧な微笑みを崩さないが、親しい者の前では年相応の感情を見せる素顔を持つ。
幼いころからイシドルを一途に慕い、彼にも惜しみなく愛情を伝えてきた。
しかし、彼がアデリーナを使って自分の嫉妬を試し、挙げ句の果てに婚約解消を突きつけたことで、その想いは完全に消失する。
感情的に縋ることなく婚約解消を受け入れた彼女の姿は、結果としてイシドルの王族としての資質を露呈させることとなった。
冷静で責任感が強く、自分の立場と役割を正しく理解している女性。
イシドル
現王太子の長男で、国王ガンドルフォ2世の孫にあたる王位継承第一位の王子。
幼少期から厳しい王子教育を受け、次代の王として期待されてきた。
五歳頃に初めてセラフィマと出会い、彼女の素直な笑顔に心を奪われたことから、幼いころより彼女を愛していた。
セラフィマの前では王子としての仮面を脱ぎ、自然体で過ごせることを何より心地よく感じていた。
しかし、彼女から長年にわたって「好き」「お慕いしている」と伝えられ続けたことで、その愛情を疑うことを忘れ、次第に慢心していく。
学院で出会ったアデリーナから「セラフィマに嫉妬されている」と吹き込まれ、自分への愛の深さを確かめようとするあまり、婚約解消を口にするという愚行に及ぶ。
セラフィマが淡々と受け入れたことで初めて事態の重大さを知るが、時すでに遅し。
王族としての資質を疑問視され、王位継承権を最下位に落とされ、最終的には王籍を抹消された。
アデリーナ・ファットーリ
地方領主であるファットーリ伯爵家の令嬢。
王立翰林院でイシドル第一王子と出会い、彼に積極的に近づくようになる。
地方貴族らしく感情表現が豊かで、中央の高位貴族令嬢たちとは異なる素直さや親しみやすさを持つ。
その一方で、中央貴族と地方貴族の身分的・政治的な差異について十分に理解しておらず、王族に嫁ぐことも可能だと考えていた節がある。
イシドルに対して身体的な距離も近く、抱きついたり腕を絡めたりするなど、セラフィマには許されていなかった親密な態度を取る。
セラフィマから貴族社会の作法に基づいた注意を受けると、それを「嫉妬による嫌がらせ」としてイシドルに訴えた。
彼女の言葉は、もともとセラフィマからの愛情に確信を持ちながらも、さらなる証を欲していたイシドルの心を大きく揺さぶることになる。
結果として、本人が意図したか否かにかかわらず、二人の婚約を破綻へ導く一因となった人物。
フェデーレ・サンティーニ
王家の血を引く名門サンティーニ公爵家の当主であり、セラフィマの父。
娘が将来の王太子妃となることを前提に、幼少期から厳格な教育を受けさせてきた人物である。
公爵家当主として家の立場と王家との関係を冷静に見極める現実的な判断力を持つ。
セラフィマからイシドルの婚約解消の申し出について報告を受けると、殿下の言葉を「子供っぽい愚行」と判断し、娘の意向を尊重して速やかに王家へ婚約解消を申し入れた。
王家との縁談だからと娘に我慢を強いることなく、娘の尊厳と将来を守る父親でもある。
政治的な判断と親としての情を両立させ、感情に流されず事態を処理することで、セラフィマがイシドルとの関係から速やかに離れることを可能にした。
婚約という政治的関係よりも、娘自身の幸せを重視する人物として描かれる。
ビアンカ・サンティーニ
セラフィマの母であり、公爵夫人として社交界でも確かな人脈と影響力を持つ女性。
娘の王子妃教育にも深く関わり、将来王族を支える立場にふさわしい知識や社交術を身につけさせるため、時に容赦なく指摘や助言を与えてきた。
娘を甘やかすだけではなく、厳しく鍛えながらも、その努力と成長を誰よりも理解している母親である。
セラフィマがイシドルへの想いを十分に伝えていたことも理解しており、婚約解消後には「足るを知らず、与えることをしない者とは信頼関係を築けない」と、娘の心情を的確に言い表す。
恋愛感情だけでは夫婦関係は成り立たず、長い結婚生活には互いの信頼が不可欠だと考える現実的な女性でもある。
婚約破棄を失敗や敗北とは捉えず、娘が得た教育や経験は決して無駄ではないと諭し、早くも次の人生へ目を向けさせる。
厳格さと深い愛情を併せ持つ、セラフィマの良き理解者。
ガンドルフォ2世
イシドル第一王子の祖父にして、この国を治める現国王。
賢王として名高く、王族には高い水準の能力と責任感を求める人物である。
イシドルに対しても次代の王として厳しい教育を課しており、幼いころから努力を求めてきた。
その一方で、セラフィマの能力と人格を高く評価し、彼女が将来の王妃として王家を支えることに大きな信頼を寄せていた。
イシドルがセラフィマへの「試し行動」のつもりで婚約解消を申し出た際には、本人の軽率な意図を汲んで撤回させることなく、その言葉を正式な意思として受け止め、婚約を白紙撤回する判断を下す。
さらに、愛する者すら信頼できず試そうとする姿勢は、将来臣下の忠誠まで疑い続ける危険につながると判断し、イシドルの王位継承権を最下位まで降格させた。
王族だからという理由で失敗を許すのではなく、国王としての資質を冷静に見極める厳格な君主。