兄から弟への鞍替えなんて致しません

エルミニア・バジーリア・デアンジェリス

エルミニア・バジーリア・デアンジェリスは、パレート王国有数の名門デアンジェリス公爵家の令嬢であり、本作の主人公である。
王立アディノルフィ貴族学院を卒業する日まで、第一王子マルコ・ルイージ・アニェッリの婚約者として王太子妃、そして未来の王妃となることを期待されていた。
しかし卒業パーティーの席上、マルコは男爵令嬢ルドヴィカを伴い、彼女に一方的な婚約破棄を突きつける。
エルミニアは反論することなく、その決定を受け入れた。
だが、それは泣き寝入りではない。
彼女は家族とともにマルコの浮気と冤罪の証拠を以前から集めており、この事態を予測していたのである。
さらに第二王子ルクレツィオから突然求婚されても、彼の意図を見抜いて即座に拒絶。
父ガウディーノたちとともに公爵令嬢という身分そのものを捨て、故国を脱出する。
空間魔法、とりわけ転移魔法に秀でた才女であり、兄セヴェーロと長距離転移魔法陣まで開発している。
新大陸では過去の身分に縛られず、自由な人生を歩み始める。


ガウディーノ・デアンジェリス

ガウディーノ・デアンジェリスは、エルミニアの父にしてデアンジェリス公爵家の当主。
王国の大臣には就任できない公爵という立場ながら、宰相の顧問として政治に携わり、王国の内情を深く知る人物である。
王族の振る舞いを間近で見てきた彼は、第一王子マルコがいつか問題を起こすことを予測し、エルミニアの婚約破棄騒動が起こる前から一家の脱出計画を進めていた。
辞職の手続きだけでなく、公爵位と領地を親族へ譲渡する準備も済ませ、家族全員を冒険者として自立させるなど、周到な人物である。
彼自身もほぼ容量無限の異空間収納を使いこなす空間魔法の使い手であり、貴族としてだけでなく冒険者としても活動できる実力を持つ。
王族に見切りをつけた際も怒りに任せて行動するのではなく、家族と領民双方の将来を考えて淡々と決断した。
威厳ある公爵でありながら、最優先するのは爵位でも財産でもなく家族の安全と幸福。
新大陸では「公爵」という過去を捨て、一人の冒険者として新たな人生を始める。


マルコ・ルイージ・アニェッリ

マルコ・ルイージ・アニェッリは、パレート王国の第一王子であり、エルミニア・デアンジェリス公爵令嬢の元婚約者。
王位継承者候補という極めて高い身分にありながら、自制心と判断力に乏しく、卒業パーティーという公の場で自身の浮気相手であるルドヴィカ・カルボーネ男爵令嬢を連れ、エルミニアに婚約破棄を宣言する。
さらにルドヴィカへの嫌がらせを理由としてエルミニアを一方的に非難するが、その罪には証拠も証人も存在しない。
本人はルドヴィカとの関係を「真実の愛」と信じているものの、周囲から見れば王族による公然たる不貞と冤罪である。
王子として華やかな容姿を持ち、周囲から注目されることには慣れているが、その立場を当然の権利と考えている節が強い。
自分の言動が王家や国そのものにどれほどの影響を与えるかを考えない幼さがあり、結果としてエルミニアだけでなくデアンジェリス公爵家そのものを王国から離反させるきっかけを作ってしまう。
物語では、彼の軽率な一言が一つの名門公爵家の離脱、そして後の王国の混乱へとつながっていく。


ルクレツィオ・パスクヮーレ・アニェッリ

ルクレツィオ・パスクヮーレ・アニェッリは、パレート王国第二王子であり、第一王子マルコの異腹の弟。
マルコと同年齢で、ともに王立アディノルフィ貴族学院を卒業した。
学院での成績や普段の立ち居振る舞いは兄より優れており、エルミニアも当初はマルコより賢明な王子だと考えていた。
しかし卒業パーティーで兄がエルミニアに婚約破棄を突きつけると、彼はそれを止めることなく傍観。
その直後、薔薇の花束を手にエルミニアの前へ跪き、「傷ついた彼女を癒したい」と求婚する。
エルミニアからすれば、それは彼女を救う純粋な求愛ではなく、婚約を失って王家との関係が変化した公爵家を自分の側へ取り込むための政略的な行動にしか見えなかった。
彼女は即座に求婚を拒絶する。
知的で洗練された外見の裏に、王位継承争いを意識した計算高さを持つ人物として描かれているが、最終的には兄と同じく王族としての自分の立場に囚われていた。
エルミニアからは「兄よりはマシだと思っていたが、大した違いはない」と見限られることになる。