政略結婚の意味、理解してますか。

マグノリア

エスタファドル伯爵家の長女で、建国以来続く名門貴族の令嬢。
愛らしい容姿と高い教養、気品ある立ち居振る舞いから社交界でも一目置かれる才色兼備の女性だが、その本質は外見から受ける印象より遥かに現実的で、勝ち気かつ計算高い。
母クラベルが立ち上げたセンテリュオ商会では、14歳の頃から仕事に携わり、自ら発案した部門の責任者を務めるほどの経営手腕を持つ。
学院生でありながら商会の仕事と社交を両立し、情報収集や人脈作りにも積極的な、生粋の実務家である。
そんな彼女に下されたのが、オルガサン侯爵家嫡男ペルデルとの王命による婚姻だった。
相手の家が困窮していることを知った彼女は、当初から侯爵家の立て直し、実権掌握、取り潰しという複数の可能性を冷静に検討する。
そしてペルデルが婚姻の責務を理解していないと見るや、感情的に騒ぐのではなく、発言や不貞の証拠を魔道具で着実に集め、僅か一ヶ月足らずで離婚へと持ち込む。
自分の置かれた状況すら計画遂行の材料として楽しめるほどの胆力と策謀性を備えた女性であり、物語の中心で「政略結婚」の本当の意味を体現する人物である。


セレアル

隣国ベヘタル王国からオノール王国へ留学してきた青年貴族。
ラスチェーニエ公爵家の次男で、留学当時はセミリャ子爵子息だった。
嫡男ではないため将来の進路は本人に委ねられており、分家して爵位を得る道も、宮廷文官や騎士、商人となる道も選べる立場にあった。
14歳の頃、ベヘタル王国の第一王女ガリナに目をつけられたことから、王太子ラウレルの助けでオノールへ留学することになる。
編入試験では最上位クラスに入り、そこでマグノリアと出会った。
当初のマグノリアからの関心は彼自身よりも、祖国ベヘタルの産物や文化、流行に向けられていた。
しかし、商会の発展を考えて熱心に情報を求める彼女の姿に惹かれ、セレアルは実家の人脈まで使って彼女を支えるようになる。
やがてマグノリアへの想いは恋へと変わり、彼女が政略的な婚姻に巻き込まれたと知った際には強い衝撃を受ける。
明晰な頭脳と高位貴族らしい冷静さを持つ一方、マグノリアに関してだけは感情を露わにするほど一途な青年。
後に王太子の側近となり、オノール王国で爵位を得て、マグノリアの人生を支える存在となる。


ペルデル

オルガサン侯爵家の嫡男。
容姿だけは非常に整っており、自らを美貌の貴公子として誇っているが、貴族として必要な知識や責務への理解は乏しい。
歴史の浅いオルガサン侯爵家の爵位を絶対的な価値だと信じ込み、伯爵家以下の貴族を見下す強い選民意識を持つ。
父ガラパダからも「エスタファドル伯爵家から金を搾り取ればいい」と教えられて育ったため、政略結婚を家同士の共同経営ではなく、自分が金を受け取るだけの都合のよい取引だと考えていた。
恋人アバリシアを「真実の恋人」と信じ、マグノリアとの結婚を家のために自分が犠牲になる悲劇だと思い込んでいる。
しかし実際には、アバリシアを正式な侯爵夫人にするつもりは当初からなく、身分相応の女性と結婚するまでの愛人として考えていたに過ぎない。
自尊心と虚栄心が強く、自分に都合のよい現実しか受け入れないため、マグノリアが仕掛けた婚姻前契約や証拠収集にも気づかないまま自ら不貞と白い結婚を宣言。
結果として婚姻契約違反を成立させ、侯爵家そのものを破滅へ導く、物語の発端となる人物である。


アバリシア

ブルガル男爵家の令嬢で、ペルデルの恋人。
下位貴族でありながら侯爵家嫡男であるペルデルを射止めたことで、彼の愛人として将来は侯爵夫人になれると信じている。
可憐な少女としてペルデルの庇護欲を刺激し、常に彼を立てて甘えることで、彼の自尊心や虚栄心を満たす存在となっていた。
ペルデルから婚約と結婚を告げられた際には、自分が侯爵夫人になれないことを嘆きながらも、二人を引き裂く「悪役」の存在を信じ、ペルデルと共に悲劇の恋人という物語に酔い込んでいく。
彼女はマグノリアの人物像をほとんど知らず、ペルデルから聞かされた都合のよい話だけを信じていた。
そのため、相手が名門エスタファドル家の令嬢であり、貴族社会で高い評価を受ける女性だという事実にも気づかない。
ペルデルの言葉を疑うことなく、持参金や援助金によって自分たちの生活が豊かになる未来を夢見るが、その金銭が自由に使えるものではないことも理解していなかった。
現実よりも恋愛劇としての自分たちを優先した結果、ペルデルと共に破滅へ向かうことになる人物である。


アマネセル

エスタファドル伯爵家当主であり、マグノリア、エクリプセ、ルシアノの父。
穏やかで若々しく、人畜無害そうな雰囲気を持つ壮年男性だが、その実、国王アルコンから「懐刀」と呼ばれる王家の腹心であり、表には出ない重要な役割を担っている。
アルコンとは従兄弟同士で、若い頃から互いに苦労と苦悩を分かち合いながら信頼関係を築いてきた。
王命を秘かに遂行するエスタファドル家の当主として、表面上の穏やかさとは裏腹に、状況を冷静に分析し、必要とあれば容赦なく策を巡らせる人物である。
幼少期から優秀だった彼は、贅沢三昧で伯爵家を傾けた両親から領地裁量権を奪い、家を立て直した経験を持つ。
妻クラベルとは非常に仲睦まじく、彼女の商才によって家が王国有数の富豪へ成長する過程も支えた。
娘マグノリアを深く愛しており、本来なら自由婚姻の家訓に従って彼女自身に結婚相手を選ばせたかった。
しかし王命には逆らわず、娘を守るために婚姻前契約へ幾重もの仕掛けを施し、オルガサン侯爵家の失策を利用して王命を完遂する。
柔和な笑顔の裏に、卓越した政治的判断力と策謀を秘めた父親である。


ジャバリー

オノール王国の第三王子で、近衛騎士団長という肩書きを持つ王族。
外見は細身ながら鍛えられた美丈夫で、騎士らしい容貌を備えている。
一方で、王族としての責務や自分の立場への理解には乏しく、兄や姉、側近たちが彼の失敗をたびたび後始末している。
与えられた仕事自体はこなせるため、王家に残る第三王子として最低限の役割は果たしているものの、出世欲もなく、名誉職に近い近衛騎士団長の立場で書類に署名したり鍛錬したりする程度で、公務に対する主体性は薄い。
マグノリアに対しては、彼女が王族と親しく交わる再従妹であることから、いつしか一方的に「自分の妻になる女性」だと思い込むようになる。
夜会では彼女につきまとい、直接声をかけることもなく贈り物を送り続けるが、正式に結婚を申し込むための行動は取らない。
しかもオノール王国の婚姻規定上、王家に残る予定のジャバリーと当時伯爵家の令嬢だったマグノリアの結婚は認められない。
それにも気づかず、マグノリアが自分との結婚を当然視していると思い込む姿は、物語における「身分や立場を理解していない人物」の象徴となっている。
後には外交使節団の護衛隊長という名目で隣国へ送られ、王家による厄介払いの対象となる。