バルバラ
バルバラは、裕福な商家に生まれた平民の少女。
前世では乙女ゲームをプレイしていた転生者であり、自分こそがゲームのヒロインだと確信している。
学院で出会ったクリストハルト、ドミニク、エルマー、フリッツを攻略対象だと思い込み、彼らとの親密度を順調に上げていると考えていた。
しかし実際には、彼女が知っているのはゲームの途中まで。
ライバル令嬢フロレンツィアを「ヒロインを苛める悪役令嬢」と決めつけ、自作自演まで交えて苛め被害を訴えた結果、自らゲーム内の最低ランクのバッドエンドへ突き進んでしまう。
華やかな容姿と豊満なスタイルを持ち、甘えた仕草や涙を武器に男性の庇護欲を刺激することには長けている。
一方で、自分に都合の悪い現実を認めず、「ヒロインなら幸せになるはず」という思い込みに固執する。
最終的には王太子の愛妾として離宮に囲われるが、それすら王太子妃への足掛かりだと信じ続ける。
クリストハルト
クリストハルトは、アルテンブルク王国の王太子であり、フロレンツィアの婚約者。
端正な容姿と穏やかな物腰を備えた、典型的な王子様然とした美青年である。
学院ではバルバラに優しく接し、彼女の悩みを聞き、苛めを受けたという訴えにも穏やかに対応していたため、バルバラからは「自分を愛する攻略対象」だと認識されていた。
しかし、その本質は優しいだけの青年ではない。
王族として必要な冷静な判断力と政治感覚を身につけており、フロレンツィアとの婚約が王家にとってどれほど重要なものかも十分に理解している。
フロレンツィアに対しては、公爵家への政治的配慮だけでなく、一人の女性として深い愛情を抱いている。
対してバルバラには恋愛感情を持たず、欲望を満たすための愛妾として扱う。
彼女を離宮へ囲い込み、妊娠を防ぐ秘薬を与えるなど、その対応は徹底して現実的。
爽やかな微笑みの裏に、王太子としての強い自制心と冷徹な合理性を秘めた人物である。
フロレンツィア
フロレンツィアは、王国有数の名門公爵家に生まれた令嬢であり、クリストハルト王太子の婚約者。
公の場では次期王太子妃として完璧な立ち振る舞いを見せ、貴族社会の難しい社交も難なくこなす知性と教養を備えている。
そのためバルバラからは典型的な「悪役令嬢」と誤認されていたが、実際の彼女は穏やかで思いやりのある人物である。
バルバラに対しても、平民という身分を理由に排除するのではなく、将来的に王太子の側室候補となれるよう教育しようとしていた。
しかし、その忠告や教育はバルバラによってことごとく「苛め」と解釈されてしまう。
クリストハルトとは幼い頃から婚約関係にあり、王太子としてではなく一人の少年として接することのできる相手でもある。
彼女自身もクリストハルトに率直な愛情を抱いている。
公爵家は権力欲が薄く、王家への協力も国と領民の安寧を第一に考えたもの。
その家風を受け継ぐ彼女は、次期王妃としての責任を理解しながらも、決して権力に執着する女性ではない。
ドミニク
ドミニクは騎士団長の次男で、学院時代にはバルバラが「攻略対象」と認識していた青年の一人。
学院ではバルバラに対して親しげに接し、フロレンツィアから苛められたという彼女の訴えに同調することもあったため、バルバラは自分に好意を抱いていると考えていた。
しかし実際の彼は、王太子クリストハルトの正式な側近ではなく、将来的な側近の補佐候補という立場だった。
バルバラが王太子の婚約者であるフロレンツィアを排除しようとするにつれて、その評価も変化していく。
最終的には側近候補から外され、バルバラが隔離された離宮の門番を務めることになる。
かつて親しげだった学院時代とは一転し、離宮では彼女の脱走を許さない冷徹な職務人として接する。
「クリストハルトに会わせて」と懇願するバルバラに対しても一切同情せず、「王太子殿下ご夫妻は外遊中」と淡々と告げる姿は、彼女が信じていた「攻略対象」という幻想を打ち砕く象徴的な場面となっている。