押し付けられた仕事、してもいいものでしょうか

コーデリア・ベレスフォード

コーデリア・ベレスフォードは、ベレスフォード公爵家の長女として生まれた令嬢であり、10歳のときに王太子アシュトンの婚約者となった少女である。
幼い頃から通常の淑女教育に加えて王妃教育を受け、他国の言語や歴史、社交作法だけでなく、国内貴族の勢力関係、近隣諸国の情勢、王家の歴史、さらには国政に関わる実務まで学んできた。
本人はそれを次期王妃として王太子を支えるための教育だと考えていたが、実際には帝王学を含む次期君主としての教育でもあった。
穏やかで礼儀正しく、感情に流されず状況を冷静に分析する一方、自分が担うべき責任には誠実に向き合う芯の強さを持つ。
アシュトンの未熟さに苦労しながらも、彼の仕事を代行することが自分の権限を越えると理解し、周囲の助言を求めて適切に対処した。
アシュトンの廃太子後、自らが立太子され、次期女王となる。
自身の過去の対応を振り返って責任を感じる謙虚さもあり、その経験を未来の子供たちの教育に生かそうと考える、聡明で責任感の強い女性である。


アシュトン

アシュトンは現国王夫妻の間に生まれた唯一の王子であり、長く子宝に恵まれなかった両親と祖父母から、待望の世継ぎとして溺愛されて育った。
10歳で公爵令嬢コーデリアと婚約し、将来の国王として王太子教育を受けることになったが、甘やかされた環境の影響もあってか、思い通りにならないことを極端に嫌う性格に育つ。
自分より身分の低い同年代の少女から忠告されることを嫌い、癇癪を起こして物に当たることもあった。
学院では成績が最下位クラスに属し、王太子としての実務教育にもついていけず、書類の内容を確認せず決裁印を押そうとするなど、自らの責務を十分に理解できていなかった。
さらに、自分が処理すべき書類をコーデリアへ押し付け、王太子の証である印璽まで渡すという重大な行動に出る。
男爵令嬢との親密な関係や、制度を無視して彼女を王妃にしようとする計画も明らかとなり、最終的に王太子位と王位継承権を失う。
外見は王子らしい端正さを備えながら、その内面には王族としての責任感よりも幼い甘えが残された青年である。


ギデオン・ドリスコル

ギデオン・ドリスコルは、ドリスコル公爵家の令息であり、学院では王太子アシュトンを支える側近候補の一人としてコーデリアと同じ上位クラスに所属していた青年である。
アシュトンの視察報告書を作成する際には、コーデリアとともに殿下本人から視察で感じたことを聞き取り、それを報告書として整える作業を手伝った。
アシュトンが王太子としての責務を果たせないことを目の当たりにしながらも、感情的に騒ぎ立てるのではなく、必要な仕事を現実的に処理していく冷静さを持つ。
物語終盤では、アシュトンに代わって立太子されたコーデリアを支える側近候補、そして将来の王配候補として選考される立場となる。
コーデリアが重視するのは、王配として政に野心を持つ人物ではなく、女王となる彼女を支え、包み込める人物であり、ギデオンはその条件に適う存在として描かれている。
彼女が過去のアシュトンへの対応について自責の念を抱いた際にも、それは本来彼女が背負う責任ではないと静かに諭している。
知性、冷静さ、誠実さ、そして相手を支える包容力を備えた、コーデリアにとって頼れる伴侶候補である。


王妃殿下

王妃殿下は、現国王の妃であり、待望の一人息子アシュトンを産んだ母親である。
結婚から10年を経てようやく授かった我が子を大切に育ててきた一方、王妃として国を支える責任も強く自覚している女性である。
コーデリアには王妃教育を受けさせ、王家の歴史や外交、社交だけでなく、王太子や国王が不在の際に必要となる実務についても学ばせていた。
アシュトンがコーデリアに仕事を押し付け始めた際には、問題を見過ごすことなく、教育係や国王、元老院などに対応を促した。
そして最後の決定的な場面では、自ら執務室に赴き、王太子の責務を放棄し、王太子の証である印璽を他者へ渡した息子に対して、これまでにない厳しい態度を示す。
「王太子たる資格がない」と宣告し、アシュトンを廃太子へ導いたのも彼女である。
それは息子への愛情を捨てたからではなく、母親として、そして王妃として、国を守るために下した苦渋の決断だった。
コーデリアを深く信頼し、次期女王として支える一方、息子を育てた責任も自ら引き受ける、慈愛と厳格さを併せ持つ王妃である。


ハウエルズ補佐官

ハウエルズ補佐官は、アシュトンの教育係を兼任する側近であり、王太子時代の彼を最も身近で支え続けてきた実務官である。
アシュトンが王太子として処理すべき書類をコーデリアに押し付けた際には、そのたびに書類を回収し、殿下自身が責務を果たすよう諫言していた。
コーデリアに対しても礼を失することなく接し、彼女が権限を持たない婚約者の立場で王太子の公務を代行することを防いでいる。
しかし、アシュトンの性格や教育上の問題を根本から改めることはできず、何度注意しても同じ行動を繰り返す彼を前に苦労を重ねることとなった。
最終的にアシュトンが廃太子となり、臣籍降下して地方の小さな領地を治めることになると、ハウエルズはその補佐役として彼についていく道を選ぶ。
それは単なる忠誠心ではなく、自分が教育係としてアシュトンを正しく導けなかった責任を取るためでもある。
王都へ戻る道が示されても、その決意は固い。
アシュトンの失敗をただ責めるのではなく、自分自身の責任も引き受ける、実直で責任感の強い人物である。