押し付けられた仕事は致しません。

ウルリーケ・フォルクヴァルツ

ウルリーケ・フォルクヴァルツは、フォルクヴァルツ大公家の長女にして、本来なら隣国トビアス帝国の皇太子妃となるはずだった令嬢である。
婚約者を疫病で亡くした後、3年間の服喪を終えた彼女は、新たな人生を歩み始めようとしていた。
しかし、その矢先に王太子ヴィーラントの婚約者に指名される。
王家の財政事情と政治的都合によって結ばれた不本意な婚約だったが、彼女は王族としての責務を冷静に受け入れる。
もっとも、婚約者であるという理由だけで王太子の政務を押し付けられることには断固として拒絶した。
「権限がございません」と一貫して仕事を断り、周囲の圧力にも決して屈しない。
知性と教養、王妃教育で培った判断力を備えた彼女は、やがて政務の不正な代行強要を証拠として積み上げ、王太子廃嫡と王家の改革へとつなげていく。
気品ある物腰の内側に、決して他人に流されない強靭な意志を秘めた女性である。


ヴィーラント・クヴァント

ヴィーラント・クヴァントは、パプスト王国の現国王と王妃の間に生まれた一人息子であり、王太子の地位にあった青年である。
王族として生まれ、両親から溺愛されて育った彼は、自らの身分を絶対的な権威と考えている節が強い。
かつての婚約者マルレーン・ツムシュテーク公爵令嬢との婚約を一方的に破棄し、士爵家令嬢クサヴァリアとの「真実の愛」を宣言するという騒動を起こしたにもかかわらず、両親によって王太子の座に留め置かれた。
その後、王家の事情からウルリーケを新たな婚約者に迎えるが、彼女を自分の政務を肩代わりする存在と勘違いし、書類仕事を繰り返し押し付けようとする。
王太子としての職務と婚約者の立場の違いを理解せず、拒絶されても自らの要求が通ることを疑わない。
やがて政務の停滞や権限の濫用が明らかとなり、元老院によって廃太子とされる。
華やかな王子としての外見とは裏腹に、物語では王族としての自覚と責任を問われる人物である。


クサヴァリア

クサヴァリアは、王国騎士団で功績を挙げた平民を祖先に持つ士爵家の令嬢である。
家そのものは決して名門とはいえず、父の代で3代目となるため、特別な功績がなければ父の死後には平民へ戻る立場にあった。
作中で彼女自身について詳しく語られる場面は少ないが、王太子ヴィーラントから「最愛」「真実の愛」の相手として扱われ、彼がツムシュテーク公爵令嬢マルレーンとの婚約を破棄する直接のきっかけとなった女性である。
しかし、ヴィーラントが望んだように彼女を王太子妃とすることはできなかった。
パプスト王国では王家が独立した私財によって王宮を維持しており、財政的に貧しい王家にとって王太子妃には相応の家格だけでなく、強力な後ろ盾や豊富な資産が求められていたためである。
ヴィーラントが廃太子となった後は、彼とともに僻地へ赴き、妻として最後まで寄り添った。
ヴィーラントの死後はその地の修道院に入り、彼の冥福を祈りながら神に仕える道を選ぶ。
物語では、王太子の「真実の愛」という言葉が現実の政治や制度の前では通用しないことを象徴する存在でもある。