国外追放なんて簡単にはできません

公爵令嬢

王国でも屈指の名門公爵家に生まれ、国王の定めた婚約によって王太子の婚約者となっていた令嬢である。
学院を卒業したばかりの若さながら、幼い頃から貴族社会の中で育てられたため、その立ち居振る舞いには生まれながらの気品が備わっている。
卒業パーティの席で、王太子の恋人である男爵令嬢を苛めたという身に覚えのない罪を突然着せられ、その場から国外追放を命じられるという異常な事態に巻き込まれた。
しかも頬を殴られたらしく、傷を負ったままパーティ用の美しいドレス姿で馬車へ押し込まれている。
華奢で優雅な体つきを持ち、淡い金髪と青灰色の瞳をした、誰もが振り返るような美貌の持ち主。
しかし、その美しさ以上に印象的なのは、理不尽な境遇に置かれても品位を失わない芯の強さである。
本人の知らぬところで王都では事件の真相が明らかになり、最終的には国王直属の近衛騎士と実家の騎士たちによって迎え戻される。
彼女は物語の中で、権力者たちの暴走と、それを冷静に見抜く常識人たちとの対比を象徴する存在でもある。


王国側の追放刑担当兵士

王国の追放刑を担当する兵士。
特定の個人名は登場しないが、今回の公爵令嬢の護送を担当した兵士たちの代表的な存在である。
普段から国外追放となった者を国境まで送り届ける仕事をしているため、追放刑に関する手続きや実務には詳しい。
そのため、王都を出た直後から今回の処分が異例づくめであることに気づいていた。
王太子の婚約者である公爵令嬢が突然、卒業パーティの会場から身一つで連れ出され、しかも国王の正式な命令とも思えない形で国外へ送られる。
そんな状況に疑問を抱きながらも、貴族、それも王太子に関わる命令に現場の兵士が逆らうことはできない。
そこで彼らが選んだのが、あえて旅程を遅らせることだった。
通常10日ほどの道程を半月かけ、国王からの命令変更が追いつく可能性に賭けたのである。
令嬢のために食糧や着替えも用意し、必要以上に苦しめることなく任務を遂行した。
実直で職務意識が高く、権力者への忠誠と現場の常識との間で慎重に行動する人物。
隣国の兵士とも気さくに会話するなど、堅苦しすぎない人間味も持っている。


隣国の国境兵士

隣国の国境砦に勤務する兵士。
国境門で国外追放者を受け入れる任務を日常的に担当しており、王国側の追放刑担当兵士たちとも顔見知りである。
年に数度は国外追放者を受け入れているため、その手続きや必要な連絡についても熟知している。
だからこそ、今回やって来た馬車と、その中にいる公爵令嬢を見た瞬間から、事態の異常さに気づいた。
隣国には事前の受け入れ要請が届いておらず、提示された書類にも国璽や御璽がない。
しかも罪状は「王太子の恋人である男爵令嬢を苛めたから国外追放」というもの。
そのうえ命令者として記されているのは王太子と宰相長男であり、彼らに貴族を裁く権限などない。
彼はこうした矛盾を次々と指摘し、王国側の兵士と軽妙な会話を交わす。
豪快で歯に衣着せぬ性格だが、根は現実的かつ職務に忠実。
政治的な問題には深入りせず、自分たちの国に余計な面倒を持ち込まないことを優先する一方、正式な手続きが整えば罪人をきちんと受け入れる。
数ヶ月後、正式な国外追放となった元王太子ら4人を迎えた際にも、淡々と職務を果たす現場型の人物である。