アルセリア・バルラガン
アルセリア・バルラガンは、辺境を治めるバルラガン辺境伯家の一人娘にして、次期辺境伯となる女性である。
高位貴族令嬢として申し分のない美貌と優雅な立ち居振る舞いを備え、周囲からはしばしば「聖女」と呼ばれている。
しかし本人は、その呼び名を徹底して否定している。
彼女の本職はあくまでも辺境伯軍に所属する治癒・回復術師であり、魔物の大湧出の際に広範囲回復魔術を使って多数の兵士を救ったことから、勝手に聖女と呼ばれるようになっただけなのだ。
合理的な性格で、慈愛に満ちた聖女という世間のイメージとは裏腹に、「効率よく仕事をしただけ」と考えている。
辺境伯家の後継者として政務や領地経営を学び、社交もこなす一方、華やかな王都よりも領地や仕事を好む現実派でもある。
幼馴染であるグラシアノとは十年来の婚約関係にあり、相思相愛。
王子の身勝手な断罪にも動じず、事実を淡々と突きつける芯の強さを持つ。
グラシアノ・デラロサ
グラシアノ・デラロサは、デラロサ侯爵家の三男であり、アルセリア・バルラガンの幼馴染にして十年来の婚約者である。
幼い頃からアルセリアと親しく育ち、剣の稽古では彼女に何度も打ち負かされ、泣かされたという微笑ましい過去を持つ。
成長した現在は王宮騎士団に所属する立派な騎士となり、精悍な青年へと成長した。
アルセリアとは相思相愛で、二人の関係は周囲からも「万年蜜月期」と評されるほど。
王都での仕事を終えた後は騎士団を退職し、アルセリアと共に辺境伯領で暮らすことを決めている。
夜会では彼女を自然にエスコートし、身勝手な断罪を受けた際にも終始アルセリアの傍らに立ち続ける。
相手が王族であっても必要以上にへりくだらず、状況を冷静に見極める判断力も備えている。
華やかな家柄と騎士としての実力を持ちながら、何よりもアルセリアとの穏やかな生活を望む、誠実で愛情深い男性である。
エリヒオ第二王子
エリヒオ第二王子は、レイノ王国の国王とヘシカ側妃の間に生まれた王子である。
豪奢な衣装を纏った美青年で、王族らしい華やかな容姿を備えている。
しかし、その美貌とは裏腹に、自尊心が非常に強く、自分の思い込みを疑わない人物として描かれている。
アルセリアに対しては、彼女が一度も聖女を自称していないにもかかわらず「自称聖女」と決めつけ、さらに自分の婚約者でもない彼女との婚約破棄を一方的に宣言するという、事実関係を無視した断罪を行った。
背景には母ヘシカ側妃が、聖女と呼ばれるアルセリアを自分の息子の妻にして王位継承を有利にしようとしていた事情がある。
本人もまた、イルダを聖女と信じ込み、彼女との結婚を望んでいた。
事件後は王位継承権を放棄し王籍を離脱。
イルダと結婚して男爵家の入り婿となり、地方役人として働くことになる。
物語では、華麗な外見と身勝手な言動の落差が印象的な人物である。
※一応作中では美青年設定だが、イメージに合わなかったので画像は不細工にしてみた。
イルダ
イルダは、エリヒオ第二王子の恋人として夜会に現れた、男爵家出身の可憐な少女である。
一見すると愛らしく庇護欲を誘う美少女で、エリヒオ王子からは「本物の聖女」として周囲に紹介されていた。
しかし、神殿による正式な検査では治癒魔術の素養こそ認められたものの、聖女ではないと判定されている。
彼女がどこまでエリヒオ王子の思い込みを利用していたのかは明確には語られていないが、アルセリアに対して蔑むような笑みを浮かべており、少なくとも友好的な感情を抱いてはいなかったことがうかがえる。
エリヒオ王子は身分の低いイルダと結婚するため、彼女を聖女だと思い込んだともされている。
しかし実際にはイルダ自身も王族の妃、さらには王妃の座を望んでいたらしく、最終的にエリヒオと結婚しても望んだ未来とは大きく異なる結果となった。
可憐な外見と、王族への野心を秘めた内面との落差が特徴的な人物である。
ヘシカ側妃
ヘシカ側妃は、レイノ王国国王の側妃であり、エリヒオ第二王子の母親である。
物語の中では直接姿を見せる場面こそ少ないものの、エリヒオを王位につけるために暗躍していた人物として重要な位置を占める。
アルセリアが「聖女」と呼ばれるようになったことに目をつけ、聖女という特別な存在を息子の妻に迎えることで、第二王子であるエリヒオの王位継承を有利にしようと考えていた。
そのため、アルセリアには既に婚約者がいること、彼女自身が次期辺境伯であり嫁ぐことができないことを知りながら、何度も婚約を申し入れている。
辺境伯家から明確に拒絶された後も諦めず、今度は手紙攻勢を仕掛けるなど執着を見せた。
さらに息子には「辺境伯令嬢の聖女が妻になる」と吹き込み、自分の取り巻きや息子の側近たちにもそう吹聴していたという。
最終的には王子を王位につけるどころか、自身も側妃の地位を失い、息子とともに男爵領で暮らすことになる。