所(世界)変われば品(常識)変わる

ブランシュ・ダグラス

レノックス公爵家の長女で、筆頭公爵家令嬢。銀髪に蒼い瞳、華やかで魅惑的な容姿を持つ15歳の少女であり、王太子リチャード・ウッドウィルの婚約者。
乙女ゲーム『キラキラな恋をしよう~障害なんて乗り越えてやる~』では、王太子ルートでヒロインの恋路を邪魔する「悪役令嬢」という役割を与えられている。
しかし彼女自身も前世の記憶を持つ転生者であり、ゲームでは自分が断罪され、修道院へ送られた末に命を落とすことを知っている。
そのため、ただ運命を受け入れるのではなく、幼いころから積極的に未来を変えるために行動。王太子の教育係を入れ替え、リチャードとの交流を早め、互いに信頼と愛情を育てたうえで婚約することに成功した。
貴族社会の常識や礼儀、政治的な力関係をよく理解しており、感情だけで動くのではなく、状況を冷静に分析して対策を講じる現実主義者。その一方で、家族や婚約者への情は非常に深く、リチャードや兄マシューとの関係からは家族愛の強さも窺える。
自分を「悪役令嬢」と認識しながらも、その立場に甘んじることなく、自らの知識と行動力で未来を切り開いていく人物である。
メアリーに対しても単純に排除するのではなく、彼女の中にある可能性を見抜き、最後には淑女として立ち直るための手を差し伸べる。
物語の中心で「ゲームの登場人物」ではなく、一人の人間として生きることを貫く主人公。


メアリー・ダドリー

モーティマー男爵家の庶子で、15歳の少女。
ピンクブロンドの髪とピンクの瞳を持ち、乙女ゲーム『キラキラな恋をしよう~障害なんて乗り越えてやる~』では、複数の貴公子を攻略する「ヒロイン」にあたる存在。
入学の数か月前に男爵家へ引き取られたため、貴族としての教育や礼儀作法がほとんど身についていない。さらに前世の記憶を持つ転生者で、自分こそがゲームのヒロインなのだから、シナリオ通りに攻略を進めれば幸せになれると強く信じ込んでいる。そのため、身分差や貴族社会の礼儀を軽視し、王太子リチャードを「リック様」、マシューを「マット様」、エドワードを「エド様」と勝手に愛称で呼ぶなど、周囲からたびたび注意されても行動を改めなかった。
ゲームイベントを発生させるために奔走し、リチャードやマシュー、エドワード、トマス、ヘンリーへ積極的に近づいていくものの、現実の彼らはゲームの攻略対象とは異なる人格を持っているため、思うようにはいかない。
ブランシュから現実とゲームの違いを突きつけられたことで、ようやく自分の認識が誤っていたことを理解し始める。その後は態度を改め、王宮女官経験者から淑女教育を受け、学業にも励んで見違えるほど成長。正式に男爵家の令嬢となり、卒業後はブランシュ付きの女官として王宮へ仕える。
わずか数年で頭角を現し、やがてブランシュの片腕と呼ばれるまでになる、劇的な変化を遂げた人物。


マシュー・ダグラス

レノックス公爵家の嫡男で、ブランシュの兄。
銀髪に蒼い瞳を持つ17歳の青年で、乙女ゲームでは「クール系」の攻略対象として設定されている。学院では3年生で、無表情かつ冷静沈着な秀才という人物像を与えられているが、現実のマシューはゲーム上の設定だけでは語れない、妹への深い愛情を持つ人物である。
ブランシュが前世の記憶とゲームの内容を家族や王家に打ち明けた際には、自分がゲーム内で妹を貶める存在になっていることに強く反発。「ゲームのマシュー」と現実の自分を明確に区別するよう求めるほど、ブランシュを大切にしている。
王太子リチャードとは幼いころから交流があり、将来の国政を担う筆頭公爵家嫡男として、王太子を支える立場にある。
ブランシュからは策士属性を持つ人物として扱われることもあり、状況を冷静に観察する知性を備えている一方、妹に対しては非常に甘く、婚約者であるマーガレットとも仲睦まじい関係を築いている。メアリーから攻略を仕掛けられても、ゲームのように彼女へ惹かれることはなく、現実の貴族として距離を保つ。学院卒業後はマーガレットと結婚し、公爵家を継ぐまでの間はローグ伯爵の爵位を得て王宮文官として勤務。
ゲームの攻略対象という立場とはまったく異なり、家族を愛し、婚約者を尊重し、将来の公爵として責任を果たす人物として描かれている。


リチャード・ウッドウィル

王太子リチャード・ウッドウィル。
金髪碧眼の15歳の王子で、乙女ゲームでは「王道の王子様」にして王太子ルートの攻略対象。
ゲーム内では典型的な俺様気質で、運命の恋や真実の愛に憧れる恋愛脳の人物として設定されており、婚約者であるブランシュを政略結婚の相手として扱い、ヒロインとの恋を選ぶ運命にあった。
しかし現実のリチャードは、幼少期から受けた教育によって王族としての責任、政略結婚の意味、寛容や慈愛、公平と平等の違いなどを学び、穏やかで紳士的な貴公子へと成長している。
5歳のころ、ブランシュが働きかけた交流会で彼女と出会い、その後は頻繁に手紙を送り合うなど親密な関係を築く。
婚約者を決める際には、王命だからではなく自分自身がブランシュを好きだからという意思を明確に示し、自ら彼女に求婚。
以来、厳しい王太子教育を受ける中でも互いに弱音を吐き、励まし合い、ときには喧嘩もしながら強い信頼関係を育んでいる。
学院入学後もブランシュと常に行動を共にし、メアリーの接近にも一切なびかない。
むしろ無許可の愛称呼びなど、貴族社会の礼節を無視する態度には明確な不快感を示す。
卒業後はブランシュと結婚し、二人の子供をもうけた後に国王へ即位。
妻を深く愛し、彼女の働きを認めて支える国王となる。


エドワード・ネヴィル

グレイ侯爵家の子息で、16歳の学院2年生。
茶髪と茶眼を持ち、乙女ゲームでは「お色気担当」に位置づけられた攻略対象である。
ゲーム上では女性関係が華やかな遊び人でありながら、実は女性不信という典型的なギャップを持つキャラクターとして描かれている。
しかし現実のエドワードは、ブランシュ曰く「女性不信ではなく純然たる遊び人」。
メアリーとも親しく付き合うようになるものの、ゲームのように高価な贈り物を次々と贈ることはなく、あくまで学生時代の一時的な遊び相手として扱っている。
特に特徴的なのは、婚約者とその家族に対して、自分とメアリーとの関係を隠さず「婚約者が卒業するまでの遊び」と説明し、庶子を作るような愚かなことはしないと約束したうえで、一定の理解を求めている点。
倫理的に潔白とは言い切れないものの、少なくとも自分の行動が婚約者や家族に及ぼす影響を認識し、卒業後には婿養子となる自分の立場も理解している。
だからこそ、他の攻略対象とは異なり、メアリーとの関係が婚約破棄にまで発展することはなかった。
卒業後も複数の女性と浮名を流していたが、婚約者と結婚すると一転して妻一筋となり、穏やかな家庭生活を送るようになる。
最終的には婿養子として侯爵家の次期当主となり、メアリーとも適切な貴族としての距離を保って交流している。


トマス・ブランドン

騎士団長子息で、15歳の学院1年生。
赤褐色の髪と灰色の瞳を持ち、乙女ゲームでは「脳筋枠」、つまり騎士を志す攻略対象として設定されている。
伯爵家の出身だが領地を持たない法服貴族であり、爵位名と家名は同じ。
直情型で実直という長所を持つ一方、ブランシュからは「何も考えない脳筋」と評されるほど思考より行動が先に立つ人物である。
学院入学時、メアリーが王太子リチャードへ向かって走ってきた際には、護衛騎士候補として即座に殿下の前へ立ち、身構えている。
危険に対して反射的に身体を動かす騎士としての資質は垣間見える一方、その直後にはメアリーへ一目惚れしたような陶然とした表情を見せ、ブランシュやマシューを警戒させることになる。
その後メアリーとの距離を縮め、ゲーム同様に攻略対象として機能していくが、現実の彼はゲームのように高価な贈り物を用意することもなく、自由に使える金銭もほとんどない。
貴族としての礼節を重視するより、平民の常識に慣れることを意識していたため、メアリーの非常識な振舞いにも比較的寛容だった。
婚約者との関係を疎かにした結果、婚約は解消。
卒業後は平民となり、一兵卒として国軍へ入隊するが、騎士団への入団は父から認められなかった。
学院時代の行動が「騎士にあるまじき行為」と判断されたためである。


ヘンリー・タジネット

タジネット子爵家の子息で、15歳の学院1年生。
黒髪黒目で、年齢より幼く見える可愛らしい容姿を持つ「ショタ枠」の攻略対象。
トマスと同じく領地を持たない法服貴族の家の出身で、乙女ゲームではヒロインとの恋愛を楽しむ攻略対象の一人として設定されている。
一方、現実のヘンリーはゲームほど単純なキャラクターではなく、ブランシュからは「ネガティブで人への妬心が強い性格」と評されている。王太子リチャードの側近候補としてエドワードとともに傍にいる場面もあるが、メアリーと親しくなるにつれてその役割から外れていく。
メアリーに対しては、彼女が元平民であることを理由に貴族社会の礼節を厳格に求めず、「これが平民の常識」と語る彼女の考えを受け入れてしまう。そのため、メアリーの非常識な振舞いに気づきながらも、強く制止することができなかった。
ゲームでは親密になると高価な贈り物を贈る設定だったが、現実には自由になる金銭がほとんどなく、デートの飲食代をメアリーが負担することさえあるなど、ゲームとの落差も大きい。
婚約者への対応が問題となり、学院在学中に婚約を解消。その後、卒業して身分を失い、王宮文官試験を受けるものの合格できず、領地の下級役人となっている。
ゲームの可愛らしい「ショタ系攻略対象」という外見的な印象とは裏腹に、貴族社会の責任や自身の立場を十分に理解できなかったことが、その後の人生に大きく影響した人物である。